アンサンブル教訓

8時半~11時半   バスでキャンパスに行き、練習
11時半~12時半   ポルトガル作曲家、キャンポス・パーシの歌曲、コーチング
12時半~1時半   練習、移動
13時半~15時半   メンデルスゾーンの三重奏、リハーサル
16時~17時   ジェームス・レヴァインのマスタークラスの準備レッスン(歌曲)
17時~18時   7月5日の演奏に向けて、ルーカス・フォスのソロ曲、レッスン
18時~20時   キャンパスから寮に戻り夕食、そしてまたキャンパスへ
20時~21時半   エマーソン弦楽四重奏演奏会(アイヴス、ドヴォルジャーク、バーバー)
21時半~0時   ピアニスト達とビールとおつまみの会
トリオのリハーサルが、今日はなんだか重荷に感じた。
5月下旬に、全員に室内楽の課題が渡されているはずで、
私は課題を知ったその週から譜読みを始めた。
でも、私のパートナーたちはここに来てから譜読みをして、
私のやりたい、勢いあるテンポでまだ弾けない。
私が一人で頑張っても皆を引っ張ろうとしても
「もっと協調性を持って、聴きあって」
と言われるし、まだ弾けてない人と協調するのも癪に障る。
などと、ちまちま考えて、リハーサルに少し遅刻して着いたらば、
ヴァイオリニストとチェリストが二人で一生懸命練習していた。
彼らも、オーケストラのリハーサルや、マスタークラスなどで、
かなり忙しい日々を送っているのはずなのに、
今こうやって寸暇を惜しんで練習している。
「しばらく練習する? 私は散歩でもしてくるよ」
と言ったら、コックリうなずいて続けている。
小雨が降っていたが、傘を持って歩き始めた。
小道伝いにずっと歩いていたら、どんどん森のようなところに入って行き
やがて霧が出てきた。
木々の向こうにあるものが良く見えなくなって来て
すごく幻想的な感じだなあ、と思いながら歩き続けていたら
いきなりぱっと湖の淵に辿り着いていた。
向こう岸まで一キロ以上在りそうな、しっかりとした湖で雨が水面を打ち続け、
跳ね上がる水滴が不思議な模様を描いている。
しばらくそのままボーっと見とれていたら
なんだか息が楽になってきた。
ピアノ三重奏の場合、自然と「ピアノ 対 弦」と言う風になる。
音楽的にもそうなるし、リハーサルの過程においてもそうだ。
ピアノの受け持つ音は弦二人あわせたものの10倍以上になるだろう。
ピアニストが必死こいて準備していったリハーサルで
弦楽器奏者が初見をしている、と言うのは
奨励はできないにしても、現実的には良くある状況で
彼らだけのせいにするのは、かわいそうだ。
テンポ、そして勢い・方向性の意見の相違も楽器の性格の違いから来るものもある。
弦は伸ばした音を好きな用にできるから、どう音を伸ばすかで勝負したいが、
一方ピアノは一度音を出してしまったら、もうその音はどんどん消えていくだけだから
なるたけ早く次の音を弾いて、なんとか一直線にメロディーを保ちたい。
彼らの、「もっと遅く弾きたい」と言う意思表示をすべて準備不足のせいにするのは
あまりにも意地悪だし、自分本位かも知れない。
弦と一緒に弾いている以上、私も弦の美的感覚、性格に合わせる努力をするべきで
ただ単にパラパラ音を速く弾けているからと言っても、
アンサンブルとしてきれいに響かなかったら意味が無い。
そんな事を考えて、気を取り直し、来た道を戻り、
リハーサルしに戻ったらば、二人ともとても良くなっていた。
夜、エマーソン四重奏の「Ozawa Hall」での演奏を聴きに行った。
1+1+1+1が4以上だった。
それが、アンサンブルなんだなあ、と思った。
でも、そこに到達するまでに、自分の1が1以下になるような不安を押し殺し、
信念を持ってアンサンブルの追求をしていかなくてはいけないんだと思う。
大変だなあ、と思う。
       

2 thoughts on “アンサンブル教訓”

  1. ものすごく忙しそうなスケジュール。
    しかも、色んな人と協調しなきゃいけなくて、大変そう。
    うまくいくといいね(*^▽^*)

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