豪華客船での旅


 現在世界一速い客船「オリンピア・エクスプロアー」でゲストアーティストとしての2週間半、計7回の演奏会を終えて今、ニューヨークに帰宅途中の飛行機内だ。フランスのニースで乗船し、スペインとポルトガルで停泊後、大西洋を横断して南米アマゾン川下りとカリブ海諸島巡りをした。終点のフロリダ州ではこの新しい船のお披露目会が旅行会社やマスコミを招待して行われ、そこで最後の演奏をして私の契約は終わった。面白い仕事があるものだ。
 船には賭博場もジムもカラオケもディスコもある。船招待の学者や歴史家が毎日各々講義を行い、夜はダンスや手品の大掛かりなショーがある。それでもやはり船旅というのは時間を持て余すものらしい。800人の乗客の限られた社会の中で人々は無上に愛想よく、一期一会の気楽さも有って突飛な打ち明け話を交わす。 一方その陰で、360人の船員は週休なしで毎日10-14時間、低賃金で豪華演出に走り回る。その大半は発展途上国の若者だ。家族に送金する者も、貯金して祖国で店を始める夢を持つ者も、皿を運び、客室を掃除し、階段を磨いて年をとる。世界を凝縮したような船上で17日間100を下らぬ人生を垣間見て、人間模様に食傷気味だ。
 船を後にして、もう口をききたくなかった。航空手続きを全て首振りで済まして通過した。それでも子供はやはり可愛い。離陸直後から前席の隙間から金髪巻き毛の女の子がしきりに私の眼を覗く。 やっぱり笑ってしまう。もうすぐニューヨークだ。