ノルウェイの音楽

新年明けましておめでとうございます
 ニューヨークはとても寒いです。-15°C位になると、どういう現象なのか。川や池や水溜まりから湯気の様なモヤが立ちのぼって、とても幻想的です。ついでに犬のウンコからも湯気が立って、これはなかなか助かります。何故かというと私は毎朝犬をセントラルパークに散歩に連れて行っているのですが、鎖をはずして遊んでやる時、犬が遠くに走って行ってウンコをしてしまうと探して始末するのに苦労するからです。湯気が立っているとすぐ見つかるので嬉しい。
 寒さに負けず、私は宮本武蔵の様に修行に励んでいます。12月27日にはジュリアードの教授で私の尊敬しているチェリストとフランクのソナタを弾いて大満足でした。1月2日にはエチュード3曲、バッハの前奏曲とフーガ、そしてフランクのプレリュード、コラールとフーガを録音しました。新しい先生とのレッスンは、毎月約2回のペースで続けて行って、毎回「開眼」という感じで大きな刺激です。来週の水曜日と金曜日はマンハッタン島の北端で友達の行っているコンサートシリーズでノルウェイ人の作曲家のプログラムをやります。 グリーグのバイオリンソナタと後は現代曲です。(ホルン・ソナタとホルン、ヴァイオリン、ピアノのトリオ) このトリオは由来が大変面白いのでちょっと書きます。
 11世紀、ノルウェイの宗教音楽はどんどん奇抜に表現が豊かになっていく傾向にあった様で、13世紀にローマ法王(?)がこの時代のノルウェイの楽譜を破棄する様に命令を下したそうです。あまりに感情的で、宗教のメッセージの妨げになると思われた為で、この種の音楽は幻となったと思いきや、昨今古書の研究をしている人達の手によって、この種の楽譜の一部が細長く切られて他の本を綴じるために使われていた事が分かり、そこからこれらの曲がよみがえったそうです。このトリオはそれらの曲のメロディーを使って書かれています。
 ちょっとワクワクしませんか?
 例えば、短調は健康に良くないので短調で曲を終えてはいけないとか(だからバロック以前の音楽は短調の曲でも最後の和音だけ長調だったりするでしょう。)私もあんまりよく知らないけれど、共産主義が芸術は危険思想を広める可能性があるとして厳しく管理したとか、そういう芸術体系への歴史の反映というのは、非常に面白いと同時に、そういう色々な条件、美的感覚、価値観を経て一曲一曲が生まれ、現在演奏されるにいたっているんだと思うと、とても愛しくなる。
 
 今自分が前進しているのが実感出来るのでとても幸せです。毎晩次の日に起きて、新しい練習、新しい発見をするのが楽しみで本当にワクワクします。

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