暗譜

美笑日記2.27:感情と記憶の脳内メカ

好き嫌いの判断や感情や生存本能を司る偏桃体 (amygdala)という部位と記憶を処理する海馬 (hippocampus) は隣り合わせ。記憶に値するインプットかどうか海馬が判断する基準の一つが偏桃体からの感情シグナルなんです。

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Rebecca Fischer とのインタビュー

Chiara Quartetは現在アメリカでもっとも注目されている弦楽四重の一つです。 (英語ですがHPはこちら:http://www.chiaraquartet.net/) 特に最近リリースした「Brahms by Heart」で注目度が急上昇し、 NYタイムズを始めとする多くのメディアに取り上げられました。 その理由の一つは四重奏には珍しく、暗譜で録音に挑んでCD作成をし、 最近の彼らの生演奏も多くは暗譜で行われるからです。 「注目を浴びるためのネタだ」と言う批判を跳ね飛ばし 「私達は9年間このブラームス四重奏・五重奏の録音を試みていたが、 その時のテークのどれにも納得がいかず、試行錯誤の結果 暗譜によって自分たちの満足の行く域に達することが出来たのだ」 と公表しています。 『何々を「by heart」でする』と英語で言った場合 これは「記憶して行う」と言う意味の諺と成りますが、 彼らは「私たちにとって本当にハートから演奏しようと思ったとき、 文字通りBy heartでやるのが一番と言う結論に達した」と言っています。 この四重奏の第一ヴァイオリン奏者、レベッカ・フィッシャーが 私の博士論文のテーマを知って、快くインタビューに応じてくださいました。 子育てしながら、演奏旅行をし、学校で教え、と言う生活は本当に忙しい物だと思いますが、 移動のための運転時間を理由して始めは「30分しか時間が取れないのですが…」 と断られていたのにも関わらず、最終的には45分くらいの熱弁となりました。 楽譜を使って演奏していた頃と今との練習法の変化、リハーサルの仕方の変化、 4人の奏者の中でも以下に暗譜の仕方が違うか、 過去や現在に置いて、暗譜での演奏・録音をやっている他のアンサンブル、 オーケストラが暗譜をする事の是非、などなど 実に広範囲にわたって話し合う本当に刺激を多く受けるインタビューでした。 特に四重奏の場合、楽譜立てはお互いの目線の間にはばかってしまう結果となり、 楽譜立てが無くなったことでお互い目線を交わすことが非常に多くなり、 さらに体ももっと自由に音楽に合わせて動くようになった、 兎に角演奏が全般的にもっと自由、楽になった、 とレベッカは繰り返し語っていました。 ただ暗譜での演奏には準備に数倍の時間がかかるため、 興業家本意、招待する側本位の、今の音楽市場に置いては 向こうが要請する曲目に応えられない場合が多くある。 今は暗譜が珍しくて、メディアに多くの注目を浴び良いが、 これからそう言う意味で売り込みが難しくなる可能性もある。 更に、他の四重奏や室内楽グループから 「我々も暗譜で、と言うプレッシャーがかかるからやめてくれ」と言われることもある。 とも言っていました。 しかし、彼らにとって暗譜をすると言う行為はあくまでよりよい演奏のため、 より真摯に音楽と向き合うための試行錯誤の結果であり、 売名行為や見せびらかしなどでは絶対無いことは強調されました。 この4人は音楽を分析的に考えてしまう傾向があり、 楽譜を取り除くことによって、知性よりも感覚、そして感性で演奏することに近づけた、 だけど楽譜を使ったほうがよりよい演奏ができる音楽家だって居るだろう。 暗譜はあくまで自分たちの試行錯誤の結果であり、 一般的な暗譜による演奏の是非を推奨するつもりは全く無い、 とも言っていました。 私の論文のリサーチがもっと進んだ数ヵ月後にまたお話しをする事を約束して、 電話を切りました。 とても、わくわくしました。

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成功!! リサイタル「ショパンToジャパン」ヒューストン

昨日、5月4日(日)の正午過ぎから始まった ライス大學のDuncan Recital Hallで行われた 私の「ショパンToジャパン」は無事終わりました。 自分で言うのもなんですが、色々な意味で成功したリサイタルだったと思います。 自分でも正直に渾身こめて弾けたし、 来て下さった方々にも喜んでいただけたと思います。 ピアノも良くなってくれたし、ホールも気持ちよく響いてくれました。 そして最大の発見は「暗譜」。 この曲目の多くを私は他の色々な場所ですでに演奏していました。 新しかったのは武満のLitany No.2,スクリャービンの「焔に向かって」、 そしてドビュッシーの「Le plus que Lente」。 この三曲を含めて、私は全てを暗譜で演奏するつもりで準備していました。 しかし本番数日前、色々重なり時間的にも感情的にも忙しい中、 練習中に暗譜が怪しくなること数回。 色々考えた末、本番中に使いたいと思った曲には楽譜を使って演奏することを自分に許したのです。 クラシックに余り縁の無い方にはピンと来ないかも知れませんが、 これは保守的な演奏家、愛好家はおったまげる位、型破りなことです。 オケや、室内楽の演奏家は楽譜を使って演奏する事が当たり前です。 しかし、協奏曲のソリスト、そしてピアニストは暗譜で演奏することが当然のように課されます。 (不思議と木管・金管奏者は協奏曲でも楽譜を使うことを許される場合があります) 楽譜を使って弾くと言う事は、練習か能力不足とみなされてしまいます。 コンクールや学校の試験のほとんどは暗譜しなければ失格になります。 そんな中、なぜ敢えてこういう決定をしたかと言うと、色々理由があります。 まず私はこのブログで前にも書きましたが、 「暗譜の歴史と是非」と言うテーマで博士論文を書いています。 (と言うか、書くことに成っています…) その為には、その反対の楽譜を使って弾くことをして見なければ 暗譜について語れない、と思ったのです。 もう一つ、演奏会の翌朝、私はChiara四重奏の第一ヴァイオリニスト、 レベッカ・フィッシャーとのインタビューを取り付けていました。 このアンサンブルは最近「Brahms by Heart」と言うタイトルで ブラームスの四重奏と五重奏を暗譜で録音してリリース。 そしてライヴ演奏も暗譜を取り入れ始めて、物議をかもしているのです。 楽譜を使うことが普通と思われている演奏家が暗譜を使ってニュースになるなら、 暗譜が当たり前と思われている演奏家が楽譜を使ってニュースになるかな? まあ、ナンにせよ、インタビューのためにも自分にこの実験を課してみたのです。 暗譜で本番を演奏する、と言うことは時として 練習量や能力に関係なく、本当に怖いことです。 起きる事故は最悪の場合、演奏の中座、と言うことも実際にありえます。 これがいやで、伴奏者になるピアニストや、キャリアをあきらめる才能溢れる音楽家も居ます。 暗譜忘れが怖くて、ベストを尽くせない演奏家は、ある意味ほとんどと言って良いかもしれません。 そんな中、私は今回のプログラムの中からショパンの3つのマズルカ集、作品59と、 武満徹の「リタニーNo.2」そして山田耕筰の「碧い焔」に楽譜を用いました。 暗譜の心配が取り除かれて、音楽的表現にむしろ大胆になれた、と言うのが正直なところです。 暗譜するために物凄い練習量を積み重ね、その結果解釈まで練習しこんでしまい、 壇上に上る段階ではすでに「再現のロボット」になっているピアニストが多いのでは無いでしょうか? そして本番の緊張と高揚の中で楽譜に向き合うと、

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