コンサートツアーを終えて

 昨夜遅くツアーから帰ってきました。  3月8日にニューメキシコ州に飛んでオーケストラと合流し、そこからトコトコとバスでアリゾナ州、カリフォルニア州、またアリゾナ州、そしてコロラド州と回りました。アメリカは本当に広い!!こう広い所をこういう風に旅行していると、何だかタイムトラベルをしているようです。  カリフォルニアでは太陽がサンサンと輝いて、オレンジが木からこぼれおちる位たわわに実っていて沢山食べました。香り高くて、香りを飲み込んでいる様だった!素晴らしかった。天国みたいな初夏の陽気のカリフォルニアを発って、ニューメキシコでは桜が三分咲き位で、コロラド州はツララの固まりが真っ青でそこら中雪景色です。毎日毎日季節が変わって、こんなの初めてでした。  もう一つ実感したギャップは貧富の差です。通過点でバスの窓から見るだけですが、圧倒的に貧しい町というのもあります。きっとこういう所の写真を見せられたら、誰もそれがアメリカとは思わないでしょう。南アメリカとかアフリカとか中近東と思うと思います。それか又は「大草原の小さな家」位の時代だと思うかな。こんなにテクノロジーが浸透している時代のこの国で、掘っ立て小屋に住んで本当に「大草原の小さな家」みたいに洗濯物が干してある。そうやって色々な土地の色々な人と30分時空を共有して、共感を呼びかける私は、自分が音楽家で本当に嬉しくて幸せです。   聴衆との共有/共感とは別に、共演者との交流と言うのも本当に嬉しいものです。何時間も一緒にバスに揺られて、何回も演奏会の緊張を一緒に経験すると、喋る言葉が違っても、経験してきた歴史も、住む社会の状況も全く違っても、通じ合う所が見えてきます。ツアーの最後の方で、バスーン奏者が、その上に座るとおならの音(それも「ぷー」という様な可愛い音ではなく、音を聞いただけでお腹を押さえてトイレに駆け込みたくなるような「ベリベリブォー」という凄まじい音)がでるおもちゃを買ってきて、それで何回皆で大笑いしたか、数え切れません。コンサートのときやられなくて本当に良かった!  色々なオケのメンバーに「こういうツアーで肉体的にもきつい旅程で練習時間も非常に限られているとき、普通に考えれば演奏の質が落ちてもしょうがないのに、あなたはどんどん上手くなる。すごい。」と褒められました。そういうことは一番最後のコンサートの後に言ってくれれば良いのに、3回目くらいから言われ始めたから、私もがっかりされないように、次はどうすればもっと良く弾けるだろうと一生懸命バスの中で前の晩の録音を聞いて、楽譜を読んで、何だか随分張り切ってツアーを乗り切ってしまいました。最後の日は、一番背の高いヴィオラ奏者にお姫様だっこされて皆で写真を撮りました。   帰って来てさすがにぐったりして、これからまた色々忙しいのにどうやって調子を取り戻そう、と今朝はちょっと心配だったけど、この手紙を書いてたら嬉しくてまた元気になりました。この夏聞いて頂けるのが楽しみです。今 年も色々な人のお蔭で、色々体得しながら充実して過ごしています。

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