指揮者、ラリー・ラクレフについて

私はコルバーンに入学した2006年から機会に恵まれて少しずつ指揮の本番を重ねてきました。 博士課程を選ぶ時期に入った時「指揮を勉強するならライスに行きなさい」と色々な人に言われました。その時初めて、指揮の教授、また特に学生オケの指揮者として現在アメリカでもっとも尊敬されている指揮者と言う噂の高い、ラリー・ラクレフの事を聞きました。ただし、私が学校に応募した段階では彼はすでに余りにも演奏旅行の数が多く、指揮の生徒は取っていないしこれからも取るつもりは無い、と言う事も聞いていました。でも、好運に幸運が重なって、今学期から私と同じように楽器専攻だけれど指揮の勉強を強く希望する学生が、私を含めて3人集まり、特別に「総譜の読み方」と言う名目のクラスを教えてくれる事になったのです。 今日、その初めてのクラスが在りました。 オケのリハーサルも、ラリー・ラクレフはとても細かい。リハーサル中、いきなり第一バイオリンの7席目の男の子に「ボブ!」と呼びかけ「今君たちが弾いているこの弦のメロディー、木管楽器が一つ一緒に吹いているんだけれど、どの楽器かな」と抜き打ちで質問したり、突然指揮台を降りて、客席にどっかり腰をおろし「聞いて!、聞いて!今はオーボエを聞いて!ここはダブル・ベースを聞いて!!」と叫び始めたりします。「ほら、ここはお客さんをびっくりさせる所だよ。作曲している様に弾いて!今この瞬間、作曲しているんだと想像して!」とブンブン指揮をします。 最初のクラスに備えて勉強するように言われていたのは、モーツァルトの交響曲41番「ジュピター」です。修士の新入生で私と同じように「ラリー・ラクレフに教えてもらえないなら、ライスには行かない!」と、交渉したチェリストが一楽章、学部の3年生で今までラリーのアシスタントに指揮を教えてもらって来ていた打楽器の子が2楽章、そして私が3、4楽章を分析する、と担当が分かれていました。ラリーは一楽章の一番最初から事細かに曲の編成、構成、メロディーの性質などについて、チェリストに質問して行きます。 「指揮者が総譜を勉強する一番の理由は、予想のつかない、驚きの展開をどう音楽的に対応するか前もって準備する為と、リピートするセクションをいかに奇抜に音楽にするか、企画をするためだよ。」 「この主題に隠れている、ここのバスーンのパート、これは前にも出てきたメロディーだね。ここは意識しなければ絶対に聞こえない、オケ編成だ。意識するか、しないか、前もって決断しておきなさい」 「ここの第一バイオリンのパートは難しい。ここはリハーサルをする。でも、本番では木管だけを指揮して、ヴァイオリンは無視。音楽的に大事なのは、ここは木管だからね。」 「全ての音楽的選択は音楽理論や、その曲の時代のスタイル、美的感覚に基づいた理論的なものであるべきだ。勘に頼るな。責任を持って勉強しなさい。」 一時間の授業で、一楽章の提示部と展開部までしか、カヴァー出来ませんでした。でも、とても多くの事を学びました。

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