成功!! リサイタル「ショパンToジャパン」ヒューストン

昨日、5月4日(日)の正午過ぎから始まった ライス大學のDuncan Recital Hallで行われた 私の「ショパンToジャパン」は無事終わりました。 自分で言うのもなんですが、色々な意味で成功したリサイタルだったと思います。 自分でも正直に渾身こめて弾けたし、 来て下さった方々にも喜んでいただけたと思います。 ピアノも良くなってくれたし、ホールも気持ちよく響いてくれました。 そして最大の発見は「暗譜」。 この曲目の多くを私は他の色々な場所ですでに演奏していました。 新しかったのは武満のLitany No.2,スクリャービンの「焔に向かって」、 そしてドビュッシーの「Le plus que Lente」。 この三曲を含めて、私は全てを暗譜で演奏するつもりで準備していました。 しかし本番数日前、色々重なり時間的にも感情的にも忙しい中、 練習中に暗譜が怪しくなること数回。 色々考えた末、本番中に使いたいと思った曲には楽譜を使って演奏することを自分に許したのです。 クラシックに余り縁の無い方にはピンと来ないかも知れませんが、 これは保守的な演奏家、愛好家はおったまげる位、型破りなことです。 オケや、室内楽の演奏家は楽譜を使って演奏する事が当たり前です。 しかし、協奏曲のソリスト、そしてピアニストは暗譜で演奏することが当然のように課されます。 (不思議と木管・金管奏者は協奏曲でも楽譜を使うことを許される場合があります) 楽譜を使って弾くと言う事は、練習か能力不足とみなされてしまいます。 コンクールや学校の試験のほとんどは暗譜しなければ失格になります。 そんな中、なぜ敢えてこういう決定をしたかと言うと、色々理由があります。 まず私はこのブログで前にも書きましたが、 「暗譜の歴史と是非」と言うテーマで博士論文を書いています。 (と言うか、書くことに成っています…) その為には、その反対の楽譜を使って弾くことをして見なければ 暗譜について語れない、と思ったのです。 もう一つ、演奏会の翌朝、私はChiara四重奏の第一ヴァイオリニスト、 レベッカ・フィッシャーとのインタビューを取り付けていました。 このアンサンブルは最近「Brahms by Heart」と言うタイトルで ブラームスの四重奏と五重奏を暗譜で録音してリリース。 そしてライヴ演奏も暗譜を取り入れ始めて、物議をかもしているのです。 楽譜を使うことが普通と思われている演奏家が暗譜を使ってニュースになるなら、 暗譜が当たり前と思われている演奏家が楽譜を使ってニュースになるかな? まあ、ナンにせよ、インタビューのためにも自分にこの実験を課してみたのです。 暗譜で本番を演奏する、と言うことは時として 練習量や能力に関係なく、本当に怖いことです。 起きる事故は最悪の場合、演奏の中座、と言うことも実際にありえます。 これがいやで、伴奏者になるピアニストや、キャリアをあきらめる才能溢れる音楽家も居ます。 暗譜忘れが怖くて、ベストを尽くせない演奏家は、ある意味ほとんどと言って良いかもしれません。 そんな中、私は今回のプログラムの中からショパンの3つのマズルカ集、作品59と、 武満徹の「リタニーNo.2」そして山田耕筰の「碧い焔」に楽譜を用いました。 暗譜の心配が取り除かれて、音楽的表現にむしろ大胆になれた、と言うのが正直なところです。 暗譜するために物凄い練習量を積み重ね、その結果解釈まで練習しこんでしまい、 壇上に上る段階ではすでに「再現のロボット」になっているピアニストが多いのでは無いでしょうか? そして本番の緊張と高揚の中で楽譜に向き合うと、 […]

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