書評:「ベートーヴェンと天才の創り方」

興奮している。素晴らしい本に出会った。 Tia DeNora著「Beethoven and the Construction of Genius」LA, University of California Press,1995 この本の内容は結論で出てくる次の文章に凝縮されている。 「ベートーヴェンの栄光とその栄光に至った音楽史の流れを、ベートーヴェンの音楽の結果だけとして、その創作活動に対する社会背景の影響を考慮しないのは、遡及的誤解である:これは、望遠鏡をさかさまに使っているような物、過去が現在に至るのは不可避だったと誤信を肯定することである。… 天才が社会的に構成されるものだと言う概念について言及する書物は少ない。特殊な天分の持ち主がある芸術分野に於ける論理を急進的に変換することが出来ると言うイメージには力強い説得力があり、解明の試みを拒絶する。例えば、私たちが偉大な物を見分ける判断力があると言う信念も根強い常識の一つだ。…結果、天才が社会的に構成されていく物であると言う歴史的検証はほぼ皆無である。」 To suggest that [Beethoven’s] success, and the particular configuration of music history to which it gave rise, was the result of his music alone and not of the interaction of that music with its context of reception is to employ […]

書評:「ベートーヴェンと天才の創り方」 Read More »