金曜日の喜び


英語では、頭文字だけ取って略語とする言い回しがいくつかある。

例えば、「ASAP=As Soon As Possible(出来るだけ早く)」、とか「FYI=For Your Information(「ちなみに」、と言う雰囲気かな、文字通りには「あなたの情報のために言わせてもらえば」、と言う感じ)。

こういう略式言い回しの一つに「TGIF」と言うのが在る。

「TGIF=Thank God It’s Friday!(金曜日だ―神に感謝!)」と言うのである。

実は音楽家をやっていると、週日・週末と言うのはあまり関係ない。

演奏会の多くは週末にあるし、リハーサルとかも関係なくバンバン入るし。

でも、金曜日になるたびになぜかホッとして「TGIF」と行き交う友達と廊下で笑い合うのである。

(今週も色々あったけど、元気でこなせたなあ)、と言う一つの時間の区切りに対する安心感だろうか。

まだ私が初々しい学部生も一年生だった年。

マンハッタンと言う世界でも有数の大都市での初めての一人暮らしで色々な事にびくびくしていた。

ある夜、練習を終えて、暗くなってから急いで帰途についていた途中、物乞いのホームレスが立っていた。

私は彼を見て、何を感じたのだろうか。

覚えているのは、彼から声をかけられてびっくりした事である。

「Cheer up! It’s Friday! (元気出して、金曜日だよ)」と彼は私に言ったのである。

感慨深い思い出だ。

彼に声をかけられて、何だか気を取り直して元気になったことは覚えている。

彼の人生はあれから向上したのだろうか?

マンハッタンでホームレスと言う厳しい状況の中でも私を気遣ってくれた優しい人だから、

きっとあれから幸運に恵まれたに違いない、と信じてみたい。