アルマニアのお話

昨日の夜、学校に寄付してくれる可能性のあるお金持ちの家のパーティーに
余興で演奏して、学校の宣伝をすることを学校から頼まれて、行った。
車で一時間弱の所にある豪邸だったが、私は車が無いので、学校がタクシーを用意してくれた。
そのタクシーの運転手さんは、とても優しい人で、
私が音楽家だということにとても興味を示して、
自分の13歳になる息子がピアノを勉強していること、
自分もクラシック・ギターを弾くことなどを、つたない英語で一生懸命喋ってくれた。
クラシック・ギターはホールの音響によって非常に印象が変わることを私が尋ねると、
自分の出身国のアルマニアに在る教会の、とても不思議な話をしてくれた。
アルマニアには山に穴を掘ってその人工の洞窟を教会にしている、と云う場所が幾つかあるそうだ。
その一つに素晴らしく音響の良い「洞窟教会」がある。
その教会で演奏すると、どんな音でも美しく聞こえ、教会の隅々まで音が響きわたる。
楽譜が読めないような素人の歌声でも、涙が出るほど美しく聞こえるそうだ。
その教会は3人の兄妹が生涯かけて、3人で力を合わせ、手で掘って作ったもので、
アルマニアでは今では「奇跡」として、観光スポットになっている程だ、と言う。
自分の英語をもどかしそうに謝りながら、ゆっくりゆっくり言葉を選びながら描写してくれた。
なんだか教会が目に浮かぶような気持ちがして、ため息が出てしまった。
お金持ちのパーティーは全くの別世界だった。
アメリカの貧富の差は日本とはけた違いだ。
特にロサンジェルスは金持ちは非常に金持ちの一方、ホームレスも非常に多い。
アメリカでは公共団体や、文化団体に寄付をすると税金が軽減されるので、
お金持ちは競って寄付をする。
その寄付金をいくら確保できるかで、団体の生存が決まってくる。
特に今日の様な不況下では、寄付金の確保合戦が激しくなる。
昨晩、コルバーンからは何人もの独奏者やアンサンブルが私と同じ目的で送り出された。
色々な金持ちパーティーに送り込まれて、中には
「じゃあ、ここで待っててね」と寝室に1時間半閉じ込められたまま、
結局演奏する機会を与えられなかったアンサンブルもあったようだ。
演奏はさせてもらえたけど、演奏中にお客さん達が話しだしてしまい、
結局BGMを提供して終わってしまった、と苦笑して帰って来たグループもあった。
お金持ちの方だって、寄付金ねだりにうんざりしているのだろう。
私の行ったパーティーでは幸い、チャンと私の演奏を好意と敬意を持って迎えてくれたが、
それでもやはり私は、余りの桁違いの生活と価値観に少し違和感を覚え、
なんだかちょっと寂しい気持ちだった。
そんな中で聞かせてもらった遠い異国の洞窟に在る、
美しい音響の聖堂は、クリスマスにふさわしい贈り物を受け取ったような癒し感があった。
嬉しかった。ありがとう。

4 thoughts on “アルマニアのお話”

  1. >abbrosさん, 凄い!!
    感激です、ありがとうございます!!
    ブログやってて、良かった!
    私はなんだか、(事実不詳でも良いから美しいおとぎ話を聞かせてもらってよかったな~)と言うちょっと眉つばの気持ちだったのですが、今はなんだか世界がこんなに広くて、まだまだ私には未知の素晴らしいものが沢山あって、本当に嬉しい気持ちです。
    貴方はきっと凄い人なのですね。
    マキコ

  2. 聴いてくれてヨカッタですね。
    きっと気持ちが通じたんでない?
    まぁ、たしかに、世の中貧富の差はあると思うし、それがハングリー精神に繋がる事もありますしね。とにかく、気持ちはいつも晴れやかでいましょうね。応援してます!

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