スクリャービン

洒脱日記131:Groupmuse主催のアットホームな演奏会

GroupmuseというNPO主催で、演奏のライブ配信を行います。アメリカ西海岸時間の7月26日(日)の16時、東海岸では19時、日本時間では7月27日(月)の8時から約1時間半のイベントです。ピアノ曲の中でも最も幅広く愛されている曲の数々をお届けしながら、演奏の間に音楽の癒し効果を活用するためにはどのように音楽と関われば良いのか、少しずつご紹介します。今日は、グループミューズの興味深いビジネスモデルやその理想とするところ、そして私のプログラムなどについて書きます。

洒脱日記131:Groupmuse主催のアットホームな演奏会 Read More »

執筆と選曲の原動力。

時々、曲にとりつかれる。 過去に弾いた曲の時もあるし、まだ弾いてない曲の時もある。 急にその曲の事がいつもありありと頭や耳や心の中で思い描かれるようにある。そういう自分に気が付く。(この先、どういう風に展開するんだっけ)と気になり始めて、楽譜をチェックしなければどうにも気が済まなくなる時もある。肉体的に弾きたくて弾きたくて体が疼くような状態になる事もある。(この曲を弾かなきゃ表現できない自分の一部があるんだ!)と焦燥感に駆られるようなときもある。 ここ一週間以上私が取りつかれているのがスクリャービン作曲、エチュード作品42-5(1903)。 自分でも意外。なぜ、今、この曲? 「幸せの国」ブータンから帰って来て、直後に行った二つの出演も大変好評のうちに終わり、全てが順調で、今までの人生の中でも絶好調と言っても良いこの時期に、なぜこの不穏に激しいロシアの練習曲? 一つには執筆中の本が在る。 「You only scream when you are finally safe(やっと安全だと思った瞬間人は初めて悲鳴を上げる)」。最近読んだ小説の一文。転校して、受け入れられたい一心でパーティーで泥酔し、気が付いたら輪姦されていた14歳が、大人になってトラウマを埋蔵するべく必死に演出する完璧な人生...筆者の実体験に基づいた「Luckiest Girl Alive(一番幸せ)」。 「やめて」と頼んでも現状を変えられない情けなさ。 「痛い・悲しい・辛い」と訴えても「そんなはずはない」「恩知らず」「被害妄想」「ひがみ」と軽視されることの辛さ。 「こんな被害があった」と言っても信じてもらえない不穏。あるいは「過ぎたことは忘れろ」 「それくらいで済んで良かった」 「感謝しろ」「もっとひどい不幸がある」と、同情・共感を拒まれるやるせなさ...強行スケジュールの中休みに一日ゴロゴロしながら 341ページ 一気に読み切った。私も、この筆者と同じく、幸せになった今だから本を書こうと思えるのか。今、公私共に安定しているから初めて、過去に在った色々を感情を伴って振り返り、整理し始めているのか?だから、今、この曲なのか? この「Luckiest Girl Alive」を読んだのには、私が自分の本に関して再考しているから。始めは自分がいかに舞台恐怖症を克服したかと言う経験に基づいたハウツー本を書くつもりだったのが、書き進めるうちにどんどん自伝的回想録の体を成してきていた。が、私の知人や加害者のプライヴァシーの問題、さらに一体どこまで自分の過去の詳細をシェアする必要が自分の執筆のそもそもの目的に叶っているのか、悩んでいる時に出会ったのが水村美苗著「日本語の亡びる時ー英語の世紀の中で」。ブータンからLAに帰るまでの道中で3分の2を読み、帰ってから時差ぼけ解消しながら熟読した。この本は私がなぜ、何を、何のために、どのように書くのか、自問自答する糸口をくれているような気がする。 「日本語の亡びる時」で一番開眼だったのは、何語のどんな語彙で書いても客観的事実は同じと言う自然科学が在る一方、言語や言葉の選択で視点もストーリーも結論も変わってしまう文学がある、と言う事実。著者はさらに、「文学でしか明らかにできない真実がある」とした上で、世界には通用しにくいけれども日本語文化は推奨するべきだし、さらには世界的な弱小言語の庇護・援助を援護するべきだと言う論点で「日本語の亡びる時」を書いている。私は日本語は非常に美しい言語だと思っている。13歳以降の在米にも関わらず日本語の読み書き・会話が問題なくできるべく、誇りをもって努力をしているので、例えば日本に明治維新以来現在に至るまで「英語公用語論」が在ると言うことをこの本を読むまで知らなかった。そして言語の優勢・劣勢の背景に政治・国勢が大きく影響していることを何となく感知はしていながら、例えばインターネットなどのテクノロジーが近代いかに英語の支配を巨大化しているかと言うことにも、考えが至っていなかった。 私がスクリャービンの作品42-5に今取りつかれているもう一つの理由。 夏以降ずっと旅行と本番が続いた。いつも次の旅行まで、次の本番まで、と飛び石を一つずつ飛んでいくような感じでこなしていた。規則正しい生活は、時差ぼけや、飛行機の発着時間の合間には無理だ。 家に帰ると衝動に駆られるまま一日中、わき見もせずにコンピューターに向かって執筆したりする。あるいは体が急に休憩を要求して来たりする。腰に鈍痛が残り座っても立っても違和感が走り、結局寝っ転がった姿勢で一日中本を読みふけったりする。そしてそうしている間にも次の旅行、次の本番がメールや登録や広報や打ち合わせや、色々な事務的要求を送ってくる。そうこうしていると、また次の旅行・次の本番で、腰の鈍痛などと言っていられなくなる。請求書・領収書・郵便物・手洗いの洗濯物が、頭の中の思い出と共に、整理されないまま山積みになっていく。 それが急に終わったのだ。この最後のバンコク・ブータン・中国の旅から帰って来たのが10月25日(金)の夜11時。その翌日の午後3時からと、そして翌々日の正午からの本番をこなして、これから数か月は急に旅行が無い。そう思ったら突然気が抜けてしまった。今日こそ溜まっていた整理整頓を始めようと毎日思うけれど、一日が終わってみると何も手を付けていない。唯一スクリャービンだけを暗譜して、そのほかGodowskyの左手のための「哀歌」とかラフマニノフの「哀歌」とかそういう曲ばかり弾いている自分が居る。そして書くことについて考え、参考になりそうなものを読み漁り、食べたい時に食べ、パジャマのままで自堕落な毎日を送っている。こういう自分はあまり好きでない。私は一生懸命ゴールに向かっている自分が好き。じゃあ、私の究極的な人生のゴールはなんなのか。 私が成し遂げたいことは、自分が成りたい自分になる、そして世の中のより多くの人がそれぞれ皆成りたい自分に成れる社会を提唱する、と言うこと。その為にはお互いへの尊厳と正直なコミュニケーションが取れる健康な人間関係が必須だと言うこと。優勢に立つ人間の独断と偏見の押しつけと、その結果の冒瀆は、健康な人間関係を根本的・社会的に脅かし、個人の自信と生産性と社会的貢献度を下げ、最終的に社会的損失になっていると言うこと。いかにこれが悲しいことか、と言うこと。 スクリャービンの曲は「暗い」「絶望」と言う感じもするけれど、逆に「焦燥感」「あふれ出てくるエネルギー」「大きな噴火が始まる前の不穏」と言う風にも取れる。私には言わなくてはこれ以上進めない事が、お腹の中でとぐろを巻いている。私は表現する運命なのだと思う。言わなくては居られない。面倒に感じることもある。忘れてしまいたい、無かったことにしてしまいたい時もある。でも言うと言う行為に関する思いががここまで大きく自分の意識を占めていると言う事はやはり言わなくてはいけないんだと思う。 今まで、次の飛び石だけを見ながら進んできたけれど、急に遠くの山に視点を据えて山越えを始める感じ。ローマは一日にしてならず。これからの時間を大事に一日一日、一歩ずつ進歩していく。そして成りたい自分に成る。

執筆と選曲の原動力。 Read More »

#おにぎりアクション=🍙で世界に愛を

🍙で世界に愛を=#おにぎりアクション! NPOTable for Twoが今年もおにぎりアクションキャンペーンを行っています。 SSNにおにぎりのイメージをアップロードしてください。それぞれのイメージに付き、5食分の給食が世界で食糧飢饉と戦っている国に寄付されます。私はキャンペーンの最終日11月20日まで毎日ピアノを弾きながら🍙を食べてFacebookとインスタグラムにアップします!こんな感じです。 私のFacebookページはこちら: https://www.facebook.com/musicalmakiko/ 私のInstagramはこちら: https://www.instagram.com/musicalmakiko/ Table for Twoやこのキャンペーンに関する詳細はこちらからどうぞ。

#おにぎりアクション=🍙で世界に愛を Read More »

原爆記念のラジオ放送…

8月5日(土)の10時半からFM湘南ブルーで放送されたクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」を担当していました。7月27日にUS-Japan Leadership Programの一巻として初めて広島に行っていた私は、その時の話と人間の強さと愛おしさについて話しました。 上で放送をお聴き頂けます。US-Japan Leadership中のカラオケの大音量をも制する大声で大議論を戦わせたりしていたので、声がつぶれています。 下に原稿をコピペしましたので、よろしければお読みになってください。 おはようございます。明日は原爆記念日ですね。実は私、10日前に生まれて初めて広島に行っていたんです。US-Japan Leadership Programは米日財団が自分たちのフラッグシップ・プログラムと掲げている企画で2001年に発足されました。ホームページUSJLP.orgから引用すると「次世代の日本とアメリカのリーダー達の間に、より緊密なコミュニケーション、友情と理解のネットワークを築き上げることを目的としています。」と書いてあります。パネル・ディスカッション、文化体験など本当に盛り沢山で、夜は朝まで飲み明かして議論やカラオケ。そんな1週間の中、木曜日は半日広島で過ごしたのです。アメリカ側から来ている20人の中にはオバマ政権で働いていた人達や、州知事の副内閣長官、国防長官の顧問、外交官、軍人、報道陣など色々な人が居たのですが、この人達と広島初体験を共にするのは、また非常に感慨深いものがありました。広島で私は感極まって「アメリカでは原爆投下は戦争終結のために必要だったと言う考えが主流だけれど、日本ではすでに降伏の条件に関する協議が行われていることを実はアメリカ政府は知っていて、それなのに広島と長崎と3日しか置かず、しかも都市のど真ん中に原爆を落とした!それなのにGHQのWar Guilt Information Programなどで戦後、日本人に物凄い罪悪感を植え付け、原爆の被害も出来るだけ報道しないようにした!」などとアメリカの参加者の一人で政府関係のお仕事をしている人にバーッと言ってしまいました。そしたら翌朝呼び止められて「自分は第二次世界大戦は全く専門外だし、昨日あなたに言われたことは自分の認識とは違った新しい見解だったのだけれど、あの後自分の知り合いの軍人に話しを聴き、さらに自分でリサーチをして、あなたが正しいと言う事が分かった。教えてくれてありがとう。」と言われたのです。涙が出るくらい嬉しかった。 人間と言うのは本当に強いと思います。広島はあんなにことごとく破壊されたのに、今は復興しています。被爆者の方々は体験を語られる時に本当に声を詰まらせて泣いていらしたけれど、それぞれが平和活動にそれぞれのやり方で携わり、アメリカ人をも含め世界中の人達に自分たちの体験を共有して、自分たちの痛みを未来の役に立てようとしてくださっています。またTBSアナウンサーの久保田とも子さんは広島出身でいらっしゃいますが、今回のUS-Japan Leadership Programにご参加なさっていて、広島の被爆者のお話しを語り継いでいくことの意義を熱く語ってくださいました。そしてアメリカ人と日本人は戦後72年を経て、1週間を共にした後、別れを惜しんで抱き合って泣くくらい、心を許し合う事が出来ます。このプログラム参加中、すごい経歴の政治家や科学者や軍人など歴史を直接創っていっている人達の中で自分に何が貢献できるのか、なぜピアニストの自分が選ばれたのか、不安に思う事もありました。でも自分のプレゼンの時、人類は通じ合いたいと思い続ける強さを持っている、音楽史は私たちにそういう人間の思い出させてくれると言いました。そして、右手を失って帰って来た軍人が左手のためのピアノ曲を委嘱した話しをして、左手のための曲を弾きました。そしたらみんな、総立ちで拍手をしてくれたのです。 その時に弾いたのは、私のアルバム「Chopin to Japan」に収録したスクリャービンの左手のための夜想曲、作品9-2です。この曲は右手を失った軍人が委嘱した作品ではなく、スクリャービンが学生時代練習し過ぎで右手を故障していたとき、自分で弾くために書いたものです。私のアルバムからお聴きください。 (Chopin to Japanトラック10、6分5秒)https://store.cdbaby.com/cd/makikohirata3 戦争から右手を失って帰って来て沢山の左手のためのピアノ曲を委嘱したピアニストで一番有名なのは、オーストリア人のPaul Wittgensteinです。ラヴェルやプロコフィエフ、ブリテンやヒンデミットにも左手のための協奏曲を委嘱、初演しました。その中でも一番有名なのは、ラヴェルの左手のための協奏曲でしょう。クリスティアン・ツイメルマン(ピアノ)、ブーレズの指揮、ロンドン交響楽団の演奏でお聴きしましょう。時間の都合上、途中のアレグロからお届けします。ジャズっぽいカッコいい曲です。 https://www.youtube.com/watch?v=WAXzynUA1hs(8分15秒から) 今日は明日の原爆記念日にちなんで、左手のためのピアノ曲の特集をヒューストンからスカぴあメンバー、平田真希子がお送りしました。私たちは強い。人間のサヴァイヴァル精神、そして何があってもコミュニケートしたいと思う人間の愛おしさ。私はそんなものを左手のためのピアノ曲に見ます。そして、原爆記念日に心を込めて世界平和を願いながら、これらの曲を捧げたいと思います。      

原爆記念のラジオ放送… Read More »