佐々木麻衣子

明鏡日記10.2: 真面目に練習しています。

私はラプソディー・イン・ブルーを最初に弾いたのは23歳の時、オーケストラとピアノ独奏のオリジナルバージョンでした。その時は私はガーシュウィンを弾くという事すら妥協を超えた「客に媚びを売る最低」な「売春」「身売り」の様な気がしていたのです。でも今はそうは全然思いません。

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私たちのアルバムのプロデューサーがグラミー賞受賞です!

“Visions Take Flight” はヒューストンでは「ROCO」の愛称で親しまれている River Oaks Chamber Orchestraのデビューアルバムです。 私は2014年以来ROCOのメンバーとして、鍵盤楽器を担当しています。このアルバムはROCOらしい。ROCOはモーツァルトやメンデルスゾーンなどのいわゆる定番クラシックも演奏しますが、何よりも沢山の委嘱作品の世界初演で有名です。このアルバムを制作するにあたって、創始者で総監督の首席オーボエ奏者、Alecia Lawyerが 団員に「今まで演奏した中で一番思い出に残る曲」とアンケートを取ったところ、5曲全てが委嘱作品!その5曲をそのままアルバムの演目にした、本当に民主的なROCOの風潮を反映したアルバムなのです。 英語ですが、アルバム制作中のヴィデオを下でご覧ください。 このアルバムのプロデューサーが「2020年のプロデューサー・オブ・ジ・イヤー、クラシック」カテゴリーのグラミー賞を勝ち取りました。私たちのプロデューサーはエネルギッシュで音楽に情熱的なBlanton Alspaugh。下のヴィデオでこのアルバムについて語っています。ヴィデオの後半で喋っているのはコンサートマスターのScott St. Johnです。 この受賞が格別嬉しいのは、録音の予定が一度無期延期になってしまったいきさつがあるかも知れません。元々このアルバムはテキサス州のラウンドトップにあるFestival Hill演奏会場で録音されるはずだったのです。予定日は2017年の9月。丁度、ハリケーンハーヴィーがヒューストン一体を洪水にしてしまったときの事です。 当初の録音予定日の前日。私の心の友にして、ROCOのクラリネット奏者である佐々木麻衣子さんはすでに洪水の心配のために、アパートの4階にある私の部屋に避難して来ていました。それでも私たちは、何とか運転して録音会場に行くつもりでいたのです。でもメールで録音の無期延期を知らされ、本当に気落ちしました。 その時の事情、そしてそれでも録音の日程を組みなおして「Harveyなんかに負けない!」と頑張ったROCOの奮闘記は下のヴィデオでご覧いただけます。 振り返ってみると、このアルバムがここまで深く音楽的に仕上がったのは、ハリケーンや無期延期を乗り越えて、録音に携わった全員が心を一つにして頑張ったからなのかも知れません。そして今回、そのプロデューサーがグラミー賞を受賞…本当に感無量です。この録音の一部となれたこと、ROCOの一員であること、そして人生のさまざまなチャレンジにも負けず、創造性豊かに生き続ける決意を曲げない人類の一員であることを、今日は特に祝いたいと思います。

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MATIMAのアルバム・リリースを「スカッとスカぴあ」でラジオ放送!

FMブルー湘南で毎週土曜日の朝10時半から放送されているクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」。横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが交代で担当しています。今月は私。2週目の昨日の放送では、この夏リリースされたアンサンブルMATIMA(Matima.org)のアルバム「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」についてお話ししました。 ご購入はこちらから!CD本体をご注文いただけるほか、ダウンロードも可。サンプル音源も在ります。https://store.cdbaby.com/cd/matima 放送用の原稿です。 『横須賀ゆかりのピアニストグループ、スカぴあメンバーが送るクラシック音楽番組「スカッとスカぴあ」の時間です。今月はヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお送りします。 私はほぼ2~3年おきにソロ・アルバム・リリースすることを自分に課して来ました。そして本当にお陰様で今年の夏7枚目をリリースすることが出来ました。最新アルバムは題して「100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」。1794年に書かれたベートーヴェンのピアノ・ソナタ第一番と1895年に書かれたブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120をおさめています。 まず最初に、今年の私が日本で6月に演奏したプログラム「『天上の音楽』vs。地上の英雄」で後半に弾いた、ベートーヴェンのソナタ、作品2-1から4楽章をお聴き頂きましょう。 (アルバム『100年』より、トラック4:5分28秒) さて、今までソロアルバムをずっと6枚録音して来た私ですが、今年のアルバムではベートーヴェンを独奏している他、ブラームスのソナタで私の2011年以降の心の友でありデュオ・パートナーであるヒューストン在住の佐々木麻衣子さんと共演しています。 私は音楽の大儀の一つにはコラボレーションと言う事があると思います。例えば私が独奏したとしても、作曲家、ピアノ製作者、会場設計家、ピアノ調律師、会場のスタッフ、企画・運営スタッフ、広報係、そして聴衆の皆さんは、その音楽会とその思い出を協力して創り上げるコラボレーターです。独奏の時は特に私は、お聴きくださっている皆さんが本当に私の音楽に乗ってくださるように、「せ~の!」と号令をかけるつもりで弾く前に息を吸い込み、会場の息の根に気を配りながら演奏しているつもりです。聴衆の方には一緒に体を揺らしてもらったり、メロディーの抑揚に合わせて心の中で一緒に歌っていただきたい。独奏の醍醐味は、聴衆と直接「コラボレート」が出来る事です。 でもやはり、気心の知れ、音楽性の合う共演者と音楽を奏でる、と言うのには独創とは違った音楽の醍醐味があります。麻衣子さんとは2011年の東日本大震災の復興支援のチャリティーコンサートで協力をしてからこっちずっと色々な形でコラボをさせていただいていますが、気が合うと言うのでしょうか?一緒に弾いているとちょっとした目線や息遣いや、フレーズの持って行き方などで相手がどうしたいか、次にどう来るか、全てテレパシーの様に分かってしまうのです。考えなくても体が一緒に弾こうとして、自然と息があってしまう感じ。まずは私と麻衣子さんの息ぴったり感をアルバムからお聴きになってみてください。ブラームス作品120の1より1楽章です。どうぞ! (アルバム『100年』よりトラック5.8分36秒) どうでしょう?ご購入されたくなったでしょう?平田真希子最新アルバムwith クラリネット奏者佐々木麻衣子。題して「100 Years: Early Beethoven and Late Brahms」by ensemble MATIMA. CDBaby.com, iTunesなどで好評発売中のほか、平田真希子のライヴ、MATIMAのライブでもお買い求めいただけます。 このベートーヴェンのピアノソナタ一番とブラームスの作品120には、1794年から1895年の101年の年月があります。これは西欧変動の100年でした。フランス革命を始め政治革命も色々あります。思想革命がフランスの啓蒙主義からドイツの観念論哲学へと進み、カントが唱えた「主観的な世界と客観的な現実」のギャップを超えるためには抽象的な美の観念が必要とされ、結果歌詞の無い器楽曲が最も抽象的な芸術として崇高されるようになります。そして産業革命が人々の生活を大きく変えていきます。最初の蒸気機関車(Steam Locomotiveの頭文字を取ってSL)が走ったのは1802年だとされています。ピアノと言う楽器もこの100年でどんどん大きく、複雑に、重厚になっていき、さらに大量生産されるようになります。そして1821年『コンポ二ウム』と言う機械が発明されます。これは初期のアルゴリズムを使って2小節を組み合わせて合計80小節の曲をその度に新しく作曲する、と言う機械です。 私たちは今どんどん発展するテクノロジーの日常介入に戸惑い、色々不安を抱えています。自ら学び、人間の指示を仰がずとも決定する力を持つAIによって私たちの生活・人生はどうかわっていくのでしょうか?その現在の私たちの不安は19世紀の人々の不安に似ているのではないか、そしてその不安の中でも音楽に正直で一生懸命な自己表現を委ねたベートーヴェンとブラームスの人類愛に、私たちは思いを重ねました。 最後にブラームスのピアノとクラリネットのためのソナタ作品120の1の最終楽章をお聴き頂きながら、今日はお別れしたいと思います。ヒューストンからスカぴあメンバーの平田真希子がお届けしました。クラリネット奏者の佐々木麻衣子さんと立ち上げたアンサンブルMATIMAと、私たちのアルバム『100年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス』をよろしくお願いします。 (アルバム100年:トラック8:5分29秒‐時間になったらフェードアウトしてください)」  

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アルバムリリース!「百年:初期ベートーヴェンと晩年のブラームス」

音楽家と言うのは、色々な人の教授と支援と期待に育てられて、社会に貢献できるまでに成長する、と思います。私も今日ここに至るまで本当に沢山の方に支えられ、教えられ、刺激されて来ました。その中でもこの7年、東北復興支援演奏会を協力して企画・演奏して一万ドル以上寄付金を集めたのをきっかけに様々な音楽活動を共にしてた私の心の友、クラリネット奏者の佐々木麻衣子さんは共演者・同志・強力な助っ人・大親友・そしてライヴァルとして私の音楽魂にかけがえの無い重要なインパクトを与え続けてくれています。その佐々木さんと、今年アンサンブル・MATIMAを創立いたしました。世の中がどんどん利己的に、排他的になっていると危機感を覚える中、私たちは東洋人の西洋音楽専門家として「音楽は、時空を隔てて共感を呼び起こす世界の共通語」をモットーに、世界平和を願った音楽活動を展開して行きます。詳しくはmatima.orgでご覧ください。   MATIMAはこれから色々な活動を展開して行きますが、その皮切りにアルバムをリリース致しました。今回のプログラム『天上の音楽・地上の英雄』でもお聴き頂く、1794年に作曲された25歳のベートーヴェンのピアノソナタ一番と、1895年に作曲された晩年のブラームスのクラリネットソナタ作品120の1と2。これらの曲の間の100年と言うのは人々がそれまでの宗教観・価値観に反発し、自己中心的な世界観へと移行して行った時代でした。物欲がはびこり、私生児が急増し、犯罪者が偶像化されたそうです。MATIMAがこの時代の音楽を最初のアルバムに選曲したのは、テクノロジーやマスメディア、ソーシャルメディアと言った現代の産物が私たちを19世紀と同じような自己中心的な世界観へと突き動かしているからでは、と思ったからです。そしてそんな時代に在っても時空を隔てて私たちを感動させる傑作を書いたベートーヴェンとブラームスは、二人共苦労と孤独に苦しみながら、人間を人間たらしめる共感と共存への賛歌、人類愛を謳いあげた英雄だった、彼らの傑作が今こそ必要なのでは無いか、と思ったからです。

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