演奏道中記5.1:呼吸で息も音楽も整える

大きな本番まで後11日。

演奏会は成功させたい・させなければ、というプレッシャー。皮肉な事にそういうプレッシャーが大きくなると、ストレスや緊張が練習の成果を発揮する妨げになりやすい。更に今回は、野の君が7日(土)から学会で不在という不安要素が加わります。演奏会に向けたラストスパートの6日間を一人で健康・前向き・生産的に凄し、豊満な音楽時空を提供すべくベストコンディションを創り上げる作戦の過程を、これから毎日ヴィデオ付きでブログに公開していきます。

気負いや力みが逆に成功の妨げになる。これは、力みの瞬発力の代価が持続力だからだと思います。これはマクロとミクロの視点から話しが出来ます。

マクロの視点から言うと、この演奏会に人生を賭けるとか、自分の全てを表現しなければとか思ってしまうと、無駄に力んでしまいます。例えば大学入試とかデビューとか、実際にその後の人生を左右する演奏の場でも、長い人生のたった一日、音楽人生で何千と踏む舞台の一つ、と大きく考える事が大切だと思います。例え失敗したとしても、その失敗を好機に変える達観を忘れない。ピアニストとしてのゴールは、一つの演奏を成功させることではなく、演奏がある日もない日もたゆまず毎日、音楽家としての成長を続けていくことです。だから私は敢えて、今回の演目には無い新曲の演奏を同時進行で続けます。本番に向けての仕上げばかりを練習するより、譜読みとか暗譜がまだ途中の曲を同時に練習していると、音楽に対する視点が変わり新しい発見が在ったります。更に新曲は日々の進化が分かり易い。本番が近い曲を仕上げる過程では、インスピレーションを見失ったり、固定観念にとらわれてマンネリ感が出る時もありますが、新曲が日々形になっていくと励みにもなります。

ミクロの視点から言うと、微細への過度のこだわりは逆に集中をかき乱す時があります。例えば、漢字とか英単語のスペルなど、普段はすらすら書けるのに考えすぎると細かい所に急に自信が無くなる事ってありますよね。過度の集中は極度な近視につながり、最悪の場合一つのミスタッチで演奏が崩壊する可能性もあります。今この瞬間にこだわらずに、いつも次を考える。そして何故この曲を弾いているのか、この曲のどこが好きなのか、音ではなく曲を見越して演奏をする。それぞれの歌いまわしや和声進行や体の動きに連想(色、味、キャラ、物語や場面、感情など)を付けておく。

力んでいる時は息は止まっています。まず、弾き始める前に呼吸を整える。そして最初の一音の直前の呼吸は曲の雰囲気を体内に取り入れ、会場をその音世界へと誘い込むつもりで吸い込みます。息は吸うと集中し、吐くとリラックスする。これを演奏に取り入れます。気持ちや音型が高まる時は息を吸い、落ち着くときは息を吐く。また、曲を常に歌っている様にフレーズの間で息継ぎをすると、歌いまわしがより自然になります。これを練習時からやりつけて置く。細かい音が多いパッセージは口を動かしてかみ砕くようにソルフェージュする事も一つの手。(Yuja Wangは良くこれをやっています。)

今日の練習動画。

動画を見直し編集しながら反省した事。

  • 気持ちを込めようとすると右肩がくねくねする悪い癖が出てきている。余分な力。集中がそがれる。
  • 最初の音から聴衆と一体化して乗る為にはもっと最初の息を大きくしなくてはいけない。
  • やっぱり作品31は作品68に比べて完成度が低い。明日はもっと地道に基礎練習しなければ。

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