武装紛争の危険性:トランプに抗え

この記事はロサンゼルス・タイムズ社説編集担当、ソーウェル・チャンが6月1日(月)西海岸時間18時47分に発表した記事「Opinion: Trump wants armed conflict. Don’t give it to him(所信:トランプは武装紛争を望んでいる:望みを叶えるな)」を私が翻訳したものです。

United States Park Police push back protesters near the White House

今夜、アメリカは危機に直面する。1968年の紛争を反映するような形で、この数時間・数時間が我々の国を定義する。

今日、トランプ大統領は全米各地で騒乱を沈静するために陸軍投入の意向を表明し、独裁主義的な新たな一面を露わにした。トランプ大統領の今までの腐敗を考慮しても、これは更なる下降だ。悲劇的な暴力と殺害の危険性を悪化させ、ミネアポリス警察官4人の監視下で死亡した黒人男性、ジョージ・フロイドの事件を受けて一週間前に始まった、正義的で必要なデモ抗議の意図を不透明化させる。

これを書きながらショックを禁じ得ないが、トランプは我々の民主主義の憲法の常識に従わない。我々は彼が変るかも知れないという希望を捨てなければいけない。彼は大衆先導者(デマゴーグ)かつ権威主義指導者(ストロングマン)のスタイルを貫いている—彼が理解するものは紛争と見世物だけだということは、月曜日の夜ワシントンのラファイエット・パークで平和なデモ集会を行う群衆に催涙弾を撃ち込ませ、ホワイトハウスから聖ジョン教会まで強さを誇示するように歩いたトランプに明らかだ。

この行動だけなら好戦的なティーンエージャーのようだが、違いは彼の指揮下にある軍力の大きさと、彼が就任時に誓った「憲法の維持、保護、守る」という責任に対する気質、人格、そして能力の欠如だ。我々の大統領はこの憲法に対する現時点最大の脅威と成り下がり、わが国の法律が制定された1787年以降最大の危機を勃発させかねない。法執行のための軍の投与は、州の要請が在った場合のみ考慮される、最後の手段であるべきだ。

アメリカは実験である。白人至上主義者には気の毒だが、我々は人種アイデンティティーを基礎にしている国ではなく、人ではなく法によって治世する、などと言った理想的概念を基礎とする民主・立憲共和国である。勿論、その歴史は潔癖ではない。憲法は民衆を裏切る事もした。アメリカの原罪—アフリカから奴隷として連行された人々から剥奪した権利と尊厳—を改め始めるために南北戦争と62万人の死があった。現在の社会福祉制度と、高齢者貧困の保安の見直しの背景には世界恐慌の混乱と苦渋があった。奴隷制崩壊後のリコンストラクションは、1960年代の公民権運動と参加者の犠牲が無ければ進まなかった。

今夜のトランプの行動は我々の民主主義—不完全でいつも改善の途中だとしても—を失敗実験として終わらせてしまう可能性がある。彼のよこしまな欲望を叶えてはいけない。彼の行動が脅かす権威主義への意向や民主主義の価値の浸食を許してはいけない。平和に目的意識を持ってデモ集会に参加しつつも、一触即発の現状を利用して混乱や暴動を引き起こそうという人は非難し、止めなければいけない。

暴力に引き込まれてしまえば、一巻の終わりだ:州の主権性は合併され、独裁政治の検閲が圧力を増す。民主主義は死ぬ。

民主主義の浸食の根源は色々ある:何十年にもわたる不平等の両極化;昇給の滞りと経済的好機の欠如;ベトナム戦争とウォーターゲート事件以降の公共機関に対する不信;Facebookなどのメディアによって煽られる世論の極端な両極化;人種によって差別が目立つ健康、財産、収入、機会;投票選挙の正当性と高潔さに対して募る不信感;そして一番悲劇的だと言える、若い世代の失望—民主主義制度の合法的な、非暴力的なやり方では現状改善は見られないかも知れないというやるせなさ。

我々の教育システムは余りにも多くの若者—そしてその結果我々の国自体を—グローバル競争に準備不足な状態に貶めてしまった。

絶壁から退くのにまだ遅すぎることはない。100,000人以上のアメリカ人を犠牲にしたパンデミックの経済打撃から立ち直り、何十年もの制度的・道徳的浸食から我々の民主主義を蘇生するのは何年もの、もしくは何世代もの、献身を要する。でも今日から、それを目指さなければいけない。

今夜は我々はスマホやテレビに釘付けになり、1968年以降のアメリカの危機と困窮に不眠不休の一晩を送る事になるだろう。ミネアポリス、アラバマ州バーミングハム、ロサンジェルス、オハイオ州コロンバス―全米各地の都市を練り歩く若者たちにとっては生まれる前の歴史の話しだ。これを書く私にとってさえも。だが我々は1968年の教訓を今に活かし、惨事を避けなければいけない。

これを読んでくれているあなたが若者なら、あなたの正義に対する悲痛な欲求は聞こえていると知ってください。あなたが若者の親・親戚・保護者なら、若者を身近に置いて、離さないでください。あなたがもし、盗み・略奪・破損などを考えているのなら、ジョージ・フロイドの弟の言葉—単刀直入で感動的な言葉—を思い出してください。「そんなことをしても僕の兄は帰ってこない。」あなたの隣にいる人が盗みや略奪や破損をしそうだったら、力づくで止めてください。

どうぞ日中に道を練り歩いて正義の闘争(1960年代に黒人投票権のために危険を顧みずに運動したジョン・ルイス下院議員の言う所の「良い苦労」)に参加してください。でも夜は、お願いですから帰宅してください。門限を守ってください。法律に従ってください。トランプに、彼がしたくてうずうずしていることするきっかけを与えないでください。あなたの声は今ここで沈静化されるには、大切すぎるからです。そしてこの一件が収まったら、自分の人生をかけて投票してください—実際にあなたの人生がかかっていますから。