アメリカの歴史は知れば知るほど複雑です。原住民の何万年の歴史と伝統をないがしろにした『移民の国』という名称。「人間みな平等」と独立宣言に謳った1776年に人口の5人に1人が奴隷だったという史実。そして大統領令9066により日本の血を引くアメリカ住民120,000人が強制収容された1942年。

この大統領令9066の発令から丁度84年目に当たる2月19日、私はリトル東京のアラタニシアターで勇気と希望をもらいました。激しい人種差別の中「Go for broke!(当たって砕けろ!)」をモットーに大活躍し、米陸軍史上最も多くの勲章を受けた日系人部隊の足跡を2時間にまとめた「Defining Courage」というライブショープロジェクトに出席したのです。コーラスと楽器の生演奏。イタリアやフランスや沖縄の激戦の現場、手紙や日記や写真、生存者の証言や子孫の追憶などの映像が流れる中、ABCニュースアンカーとして有名な日系人のデビット・オノが舞台から語り部を務めます。多様な人種の老若男女で満席の会場が一緒に息を呑んだり、笑ったり、静まり返ったり、拍手に湧いたりします。ライブショーならではの一体感で会場が温かくなりました。
同じくニュース番組で有名なレイチェル・マドーも第二次世界大戦中の日系人強制収容がなぜまかり通ってしまったのかというアメリカ政治の黒歴史をポッドキャストシリーズとして最近発表しました。手に汗を握るサスペンス・スリラーと目頭が熱くなるヒューマンストーリーが交差する素晴らしい歴史ドキュメンタリー…そしてこの歴史の一頁から何を学び、今誰のためにどう行動に移すのかを問いかける挑戦状です。
私がもう一つ希望を感じるのは、ニュース番組で成功を収めた二人の有名人が、この即席性や効率性を重視するAIの時代に物語に自分を託したという事実です。人間は音を奏で、物を語り、歌を詠んで共感を語り継いでいく習性なのは、今も昔も変わらないのだという安心感をもらえるからです。
このブログは日刊サンに隔週で連載中のコラム「ピアノの道」#172(3月1日付)を基にしています。


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