演奏道中記8.29:補聴器普及で認知症人口の低下に!

今日のブログは日刊サンに連載させて頂いて3年目になる私のコラム「ピアノの道」の9月4日発表の記事と、8月21日に放送されたNPRのラジオ番組“Hearing Loss is a Direct Link to Dementia”を参考にしています。

認知症の要因には予防可能なものも沢山あります。喫煙や運動不足・高血圧・肥満などのリストのトップにあるのが、難聴なんです。

The Lancet Commission Report.

なぜ難聴が認知症の原因になるのでしょうか?

まず、難聴が原因で社会的な刺激や人間関係が希薄になってしまう事があります。ヘレンケラーは「視覚障害に比べ、聴覚障害による困難はより根深く複雑で、重大です...人間にとっての命綱とも言える、言語を伝達し、思考を刺激し、知的な繋がりを可能にする声の音から切り離される事を意味するからです。」と言っています。* 幼少時に熱病で障害を負ったヘレンケラーがここに音楽を入れる事を思いつかなかったのはしょうがないのですが、敢えて私は意思疎通の他に、音楽の重要性も挙げたいと思います。音楽が認知症の予防や緩和に有効だ、という研究結果もありますし。

次に、聞き取りにくい音を解読しようとすることが、脳に負荷をかける事になる、という事があります。更に聞こえなくなってくることで、音の認知を司っている脳の部分が劣化していく、という事があります。

認知症の要因としての難聴の研究はすでに10年くらい行われています。それなのに、全米の難聴人口で補聴器を利用しているのは15∼20%。理由は値段です。平均的なアメリカ人にとっては家と車の次に高値になる、4,700㌦。しかも今までアメリカでは処方箋無しには補聴器は購入できませんでした。処方箋の為の通院も時間と金銭の投資です。

しかしここで吉報!先月のFDA(アメリカ食品医薬品局)の発表によると、来月半ばから処方箋なしで安く、補聴器を薬局で買い求められるように規制が緩和されたのです。軽度から中度の難聴の方々の90%がこれで補聴器を付けて会話や音楽を楽しめるようになります!

*The problems of deafness are deeper and more complex, if not more important, than those of blindness. Deafness is a much worse misfortune. For it means the loss of the most vital stimulus — the sound of the voice that brings language, sets thoughts astir and keeps us in the intellectual company of man.”

この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。https://musicalmakiko.com/en/nikkan-sun-the-way-of-the-pianist/2724 

1 thought on “演奏道中記8.29:補聴器普及で認知症人口の低下に!”

  1. お疲れ様です。

    これは、朗報です。
    左耳の高音域の音は聴こえません。
    かといって、会話が聞こえないわけではありません。
    悩ましい状態ですが、いい音を聴き分けるため
    補聴器が必要と思いました。

    小川久男

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