自分を読む。


毎日練習していると、面白い事に色々気が付く。例えば、何となく練習が乗らない時、と言うのは気がつくと、指や手や腕、そして上体が鍵盤から引いている感じになっている事が多い。こういう時は、姿勢を正して、息を吐きながら自分の身体を鍵盤に預けるつもりでゆっくり、ゆっくり練習を再開するともう一度集中を取り戻せることが多い。でも、どうしようも無い時、と言うのも在る。練習をしていると、頻繁にトイレに行きたくなる。ちょっと待っても大丈夫なメールを今すぐ打たなければ何かが台無しになるような焦燥感を覚えたりする。などなど。
そういう時は思い切って練習から離れた方が良い。幸い、と言うか、今の私には雑用が沢山ある。キャンプに行った時切られたスピード違反のティケット;免許の罰点を軽減するためにオンラインの交通法のクラスを取らなければいけない。ヒューストンに行ってからの住まい探し(これもオンラインでする)。9月に始まる新学期の準備(書類をそろえたり、学校から健康診断書の請求が来たりする)。そう言う野暮用にかこつけて、練習以外の時間がどんどん膨らんで行く。
いかん、いかん、何をしているのだ。折角タングルウッドに呼んでもらったのに。練習している時に上体が逃げていたらするのと同じように、少し姿勢を正して、反省しなければ。今の私には次の事を楽しみにして臨む、と言う立場が欠けている。これからはブログはこう言う形式にします。
#1 今日あった3つ良い事。
#2 明日の予定。
#3 明日の予定の中で特に楽しみな事。
では、今日あった3つ良い事から。
毎夏タングルウッドのハイライトの一つである研修生によるオペラ。去年はドン・ジョバンニでした。今年はストラウスの「ナクソス島のアリアドネ」と言うオペラ。先週末からすでに下稽古が始まっています。私はオケの中でハーモニアム(ペダル・オルガン)を弾きます。今夜はオペラに出演する歌手とリハーサル伴奏のピアニストたちが集まって、一緒にこのオペラのDVDを観ました。もともとジェームス・レヴァインが指揮する予定だったのですが、背中の手術の為急遽キャンセルになり、代わりにドナニ―(Christoph von Dohnanyl)と言う指揮者が指揮します。その人の指揮の生演奏のDVDが手に入ったので、今夜の観賞会です。私はこのオペラは皆程良く知らないのですが、演出が良く言えば奇抜、悪く言えば悪趣味で、皆が笑い転げているのが面白かった。それから歌手の人は自分の出番の所は食い入るように見て、出番が終わると気が抜けたように寝そべったり、急にそわそわしてトイレに立ったり、明らかに興味を無くすのも面白かった。皆とワイワイやっているとやっぱり楽しいです。
先週の土曜日、歌手、ピアニスト、そして弦楽器がタングルウッドに来て、それぞれの活動を始めましたが、今日、残りの研修生(管楽器、打楽器、ハープ、指揮、作曲)がやって来ました。打楽器とトロンボーンそして指揮にはそれぞれ日本人の子も一人ずつ居ます。私が昔入試などで伴奏をさせてもらった子たちが、私の事を覚えていてくれて、声をかけてくれて、嬉しそうに親しくしてくれるので、とても嬉しかった。それから私がこの秋から行くライス・大学からも沢山の人が来ていて、私のこれからのライスでの生活に付いて、色々頼もしい味方になってくれそうなのも嬉しかったです。
私はコルバーン卒業、ロサンジェルス引き揚げ、日本での演奏、そしてタングルウッドと割と忙しくて、ライスへの入学準備が色々押せ押せになっていたのですが、その一つに健康診断書を提出しなければいけない事がタングルウッドに来てから発覚したことが在りました。パニック状態になってタングルウッドの寮の人に相談したところ、近所のお医者さんに予約を取ってくれ、送り迎えをしてくれ、全てサポートしてくれたのです!今日は結核の検査の確認を取るために最後のチェックアップに行ってきましたが、私の為にわざわざ20分くらいドライブする羽目になった寮の人は”良い天気だからドライブが楽しい”、と私に気を使ってか、本当に嬉しそうにしてくれるのです。この人は今音楽学の博士号を取ろうとして論文を書いている人で、こんな事が無かったらそんなことを知ることも無かったし、健康診断も無事終わったし、本当に良かった。
さて、明日の予定。
8;30 バスでタングルウッドに移動。練習
9;30 マーク・モーリス舞踏団のダンスのクラス。
11:30   練習 2時のバスで寮に戻る
2:30-4  練習
4-6  クラス「言葉と歌」(by Phillis Curtain)
6-7  夕飯
7‐7;30練習
7;30  バスでタングルウッドに移動。マーク・モーリス舞踏団の最終リハーサル見学。
明日一番楽しみなのはやはりマーク・モーリスのリハーサル見学ですが、もう一つ楽しみなのはPhillis Curtainと言うアメリカを代表するソプラノのクラスです。この人はもう92歳なのです!手の関節はリュウマチでいびつに曲がっているし、自分ひとりの力で歩くことはできませんが、お腹から出す喋り声は朗々としていて、そのレッスンも慈愛に溢れている、としか形容しきれない様な、暖かいものなのです。そしてなぜか本当にオシャレなのです。立ち居振る舞い、喋り方、まなざし、全てに気品がある。去年とても可愛がってもらったので、今年も彼女の音楽観、そして人生観を垣間見るのが余計に楽しみです。