明日から新学期!

明日から新学期と言う事で、今日は午前中に練習を済ませ、一日中色々な雑用を済ませました。
その一つに12月中旬からロサンジェルスの日本語放送チャンネル、NTBで放送開始となった
「ピアノの時間」の撮りだめが在ります。
昨日6本のエピソードの収録を済ませましたが、今日は編集用の説明書きなどをしました。
その為に一杯日本語タイプしたので、今日のブログはそのコピー・ペーストでお許しを。

エピソード#6 「練習曲の美学」
Chopin Etude Op. 25-1 (1836) "Aeolian Harp"
ショパン(1810-1849)作曲、エチュード作品25-1「エオリアン・ハープ」
 19世紀ごろ、ピアノを弾くことが一般的に浸透して来た頃から書かれ始めた「エチュード(練習曲)」と言うピアノ曲のジャンルについて。
 「エオリアン・ハープ」と言う楽器の説明とタイトルの由縁。
エピソード#7 「歴史を反映する音楽」
Chopin Etude Op. 10-12
(1831)”Revolutionary Etude"
ショパン作曲、エチュード作品10-1「革命のエチュード」
 音楽が面白い理由の一つは時代の美的感覚や一般的な社会的な動きを常に反映しているからだが、時としてある歴史的イベントをはっきりととらえる曲と言うのもある。
 の例としては、例えばベートーヴェンの交響曲の3番「英雄」等が在る。ベートーヴェンは理想と崇めていたナポレオンにちなんでこの曲を当初「ナポレオン」と題するつもりだったが
ナポレオンが自らを皇帝としたことから失望し、このタイトルを「英雄(Eroica)と変えた。
 「革命のエチュード」の歴史的背景。ショパンもメンバーだったポーランド独立の為の学生運動。ショパンが亡命した後の革命の失敗。ショパンの友達の多くのが命を落とした。
ショパンはそのニュースを受けた直後にこの曲を書いている事、その曲想などからこの曲は「革命のエチュード」と言う名前で親しまれるようになった。
エピソード#8 「曲に組み込まれる暗号」
Ravel Menuet un sur le nom d’Haydn
ラヴェル ハイドンの名によるメニュエット(1909)
 曲に暗号を組み入れてメッセージとする、と言う事は色々な人がやっている。例えばシューマンとのちの妻、クララがクララの父の猛反対により手紙も許されなかった時期、彼らは曲に暗号を組み入れることでコミュニケーションを交わした。
 ではどうやってそう言うことができるのか?
方法その1) 歌を抜粋し、作曲に組み込み、その歌詞の部分をメッセージとする
方法その2) お互いの思い出の曲や、お互いが決めた音形を使う
方法その3) スケールをアルファベットに見立てて、この組み合わせで言葉を綴りだす。
英語; C(ド)、D(レ)、E(ミ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)、B(シ)、C(ド)
独語; C(ド)、D(レ)、E(ミ)、F(ファ)、G(ソ)、A(ラ)、B(シのフラット)、H(シのナチュラル)、C(ド)

③ 例;「西洋音楽の父」バッハの名前はBACHとつづる。これは音形で言うと

B(シのフラット)-A(ラ)―C(ド)―H(シのナチュラル)となる。

この音形はバッハ自身も好んで使った他、後世の作曲家も象徴としてよく使う。

④ ラヴェルの「ハイドンの名によるメニュエット」はハイドンの死後100年を記念して書かれた曲で、そのテーマはハイドンの名前(Haydn)を綴りだしている。スケールの中に無いアルファベットはラヴェルが勝手に音を選んでいる。

H(シのナチュラル)A(ラ)―Y(レ)―D()N(ソ)

⑤ 曲の中でラヴェルはこの音形を色々な形に変える。例えば名前を後ろから綴る。さらに後ろから綴った名前を上下線対象にひっくり返す。など。

NTBのスタッフの中で楽譜を読まれる方がお在りでしたら、この全てを書きだした楽譜をお送りしますので、私の演奏中に字幕の様にこの綴りを入れて頂けたら楽しいとおもうのですが。。。、いかがでしょうか?

 

エピソード#9「言葉の持つパワー」

Schumann Traumerei  from “Kinderzsenen”

シューマン、「子供の情景」より、「トロイメライ」

 言葉と言うのは私たちの印象を多く左右する。特にその対象が音楽の様な掴みどころの無い物の場合はなおさらである。

 その為に音楽に対して言葉を使うことを嫌った作曲家と、逆に言葉を利用することによって音楽をより効果的にしようとした作曲家と、大きく二つに分かれる。

 ベートーヴェンは言葉を使うことを嫌った作曲家の一人。例えば有名な「月光」のソナタのタイトルも彼自身の物ではない。でも、タイトル無くしてこの曲はここまでなじみ深い曲になっただろうか?

 シューマンのトロイメライはドイツ語のタイトルで親しまれているが、実はこの題の意味を知らない人も多いのでは? この曲の印象は例えばタイトルが「お葬式」「春」「秋」「冬」だったらそれぞれ変わるだろうか?

 

エピソード#10「音楽は世界の共通語」

Federico Mompou La Fuenta y la campana from “Paisages”

フェデリコ・モンポー作曲 「風景」より「泉と鐘」(1942)

 時空を超え、国境など関係無く、人間は皆脈打ち、二本足で歩き、呼吸をし、声の抑揚はボリュームによってコミュニケーションを図る。それを反映した音楽が世界共通なのは納得

 Leonard Bernstein(レナード・バーンスタイン)が1973年にハーヴァード大学で六回にわたって行った「TheUnanswered Question」と言う言葉と音楽の関係に関する講義で、彼はこの事についてもう少し突っ込んで考えている。例えば、赤ちゃんが一番最初に発する言葉は万国共通で「ママ」だと言う事。それから子供のハヤシ歌や、童謡の音形は不思議とどの国の物も似通っている事。

 「アーララコララ、先生に言ってやろ」と私たちが歌ったのとまったく同じ音形を使ってスペイン生まれのカタロン人が曲を書いている。

 

エピソード#11 「音と音の距離間とその意味合い」

Chopin Prelude Op. 28-4

ショパン 作品28「24の前奏曲」より4番、ホ短調

 二つの音は共鳴する事もあるし、濁る事もある。それを「協和音」、「不協和音」と言う。

これは二つの音波がぶつかることが少ないか、多いかと言う違いである。

 色々な協和音、不協和音がこれまでの音楽史の中で色々な性格、役割を担ってきた。

  例えば、日本語で「増4」あるいは「減5」と呼ばれる二つの音の間の距離は音響の物理上も不安定なのだが、「悪魔の響き」と中世から言われ一時は教会音楽で使用が禁止されたほど。例)バーンスタイン作曲「ウェスト・サイド・ストーリー」から「マリア」

  「マ」と「リ」の音の間が増4・減5

 「短2」と言うのはピアノの鍵盤で一番近い物どおしの間の距離の事。これを上から下に落とした音形は昔から「マリア様の涙」などと言われ、悲しみの象徴だった。実際、ため息の様な音がする。

 この「短2」を落とした音形の例としては例えば「エリーゼの為に」のオープニング、モーツァルトの交響曲第40番ト短調のオープニング等が在る。

  ショパンの前奏曲4番はこの短2が落ちる音形の連続。メロディーもそうだが、実は左手の伴奏もずっと落ち続ける。

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