3連休の週末の初日、一日丸マル学校関連のわせわせとは一時決別して、同じくライス大学音楽家の博士課程にクラリネット演奏で在籍している日本人のマイコさんとヒューストンの Bayou Shuttle tと言う観光サーヴィスのお世話になって、2時間のカヤック漕ぎを体験したのである!約10キロのカヤックの旅である。
12時半集合の公園に着くまでに、日焼け止めを塗りたくり、軍手を購入し、あめやガムなどのおやつと、必需品の水を準備し、子供の頃の遠足のようなわくわくを持って前の晩から二人で準備した。そして、いよいよカヤックがトラックで登場。ツアーガイドさんと協力してカヤックを水辺に下ろしてから『カヤックの漕ぎ方』の5分間の簡単な講義が在り(パドルの持ち方、効率の良い漕ぎ方―足で踏ん張って、腹筋に力を入れ上体に少しひねりを入れる、など)、ライフ・ジャケットが配られ、いよいよ出発である。参加は観光客としてヒューストンを訪れている子供連れの家族や、アベック、そして私たちのような近所からの参加、などさまざまである。
漕ぎ始めるともうヒューストンと言う人口アメリカ第三の大都会に居るのが信じられないほどの安らかさである。車の音も聞こえない。流れは穏やかで、川は浅く、水の流れるかすかな音が実に心地よい。私たちの乗ったカヤックは二人乗りのプラスチック製で大人二人で何とか持ち上げられるほどの重さの長さ4メートルくらいの物だったが、流れに乗れば本当に軽々と漕いだらずんずんと前に進む手ごたえが在る。子供二人のチームでも、大人と変わらないスピードが出る。と、言う事は漕ぐのは力ではないのだ。
川辺は木が生い茂り、何だか優雅な白い鳥が飛んでいたり、魚が飛び跳ねたり、おたまじゃくしが群となって泳いでいたり、アメンボが水の輪をいくつも描いたりしていて、まるでジャングルの奥深く、と言う風に感じられるときもあったが、時々木と木の間に垣間見られる住宅はみんな豪邸!そりゃそうですよね、川辺で川を見下ろす景色があるとすりゃあ、土地の価値も上がりますよね。
まだ小学生の頃、多摩川の近くに住んでいて、日曜日には家族で借りボートを漕ぎに良く行った。水はきれいではなかったはずなのだが、でも妹と力を合わせてボートを漕ぐのはとても楽しかった。カヤックは長いさおの両方にパドルがついていて、それを右、左、右、左、と交互に水に入れて漕ぐ。ボートとはちょっと違うけれど、さおはとても軽くて、漕ぎやすかった。ただし、パドルから垂れる水で下半身はしっかりとぐっしょりぬれてしまった。そしてはじめは信じられないほど軽く感じられたパドルも2時間漕いでいると、段々重くなってしまう。私たちと前後していた10歳くらいの姉弟のチームは、段々漕ぐのが惑うになってきてしまった。特に後ろに座った弟はふてくされた様にパドルを抱え込んで、ガンとして漕がない。聞くと、豆が出来てしまったそう。ガイドさんにバンドエイドをしてもらって、さらにガイドさんの漕ぐカヤックにロープをかけて引っ張ってもらって、やっと元気を取り戻したが、私たちも翌日の筋肉痛を懸念した。
ぐっしょりとぬれそぼれて、でも満面の笑みで帰ってきて、私たちはカレーを作りながら交代でお風呂に使った。私の寮の西洋風呂だが、でも筋肉痛予防のためである。アメリカで、しかも忙しい日常生活を送っていると、お風呂につかる、と言う習慣から本当に遠ざかる。いつも手早くシャワーになってしまうのである。私も寮に引っ越してきてから2週間まだ一度も風呂桶に水を張ったことが無かった。でも、お風呂と言うのはやはり本当にくつろぐ。西洋風呂でも、中々気持ちよいものである。
私はNYが恋しくて恋しくて、ヒューストンの保守的でクリスチャンな価値観を拒絶して去年一年を過ごした。でも、どんな場所でも色々な側面があり、探せば色々楽しい事が在る物である。その土地に不満を持つと言うのは、ある程度は本人の態度の問題も在るのではないか、と反省した。もっともっとヒューストンの好きな部分を探索して見よう、と思った。