弛緩

今日は14人のコルバーンの入試オーディションの伴奏をした。クラリネット、バスーン、そしてオーボエの木管のオーディションの日である。色々なドラマが在り、色々な曲が在り、色々な解釈、個性が在り、色々な挑戦が在った。私はニューヨークでフリーランスをしていた時ははジュリアードのパート・タイムのスタッフ伴奏者としてかなり伴奏をしていたが、コルバーンに来てからしばらくは、思う所色々在ってしばらく伴奏はほとんどしていなかった。こんなにまとめて伴奏したのは本当に久しぶりだ。オーディションが終わってしばらくは、凄い高揚と充実感で、色々雑用を片付けて走り回ったり、友達に声高らかにハイテンションで話しかけたりしていたが、夕飯の後、一つ次のオーディションのリハーサルをしたあと、突然脱力してしまった。もう何もできない。一日置いて、木曜日にもチェロのオーディションをまとめて伴奏するのだが、その為の譜読みをしようと思ってももう腕が言うことを聞かない。通りかかった友達に「大丈夫?凄い疲れて見えるけど」」と聞かれて初めて、(ああ、これは疲れなんだ)と自覚した。時間を開けて、今夜は最後にもう一つ10時半から最後のリハーサルが在る。それまで自分の部屋で仮眠を取ろう。部屋に戻って電気を消して、布団をかぶったら今日一日在ったことが、アリアリと、でも夢の様によみがえってくる。眠れないのだけれど、でも寝ている様に身体が動かない。今日弾いた曲がどんどんどんどん頭の中でプレイバックされる。今日在った色々な入学志望者の顔や声や、人生談や、音楽性が思い出される。そうやって、横たわって、約一時間。段々自分が戻って来た。
気が付いたら窓の外の夜景がきれいだ。
私は年功序列なのか、今年は個人部屋をもらえた。寮の10階の、建物の角の部屋で、寝室に付いた二つの窓からの眺めは多分寮の中でも一番良い。窓からはハリウッド・サインも、ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールも、市役所も見え、遠くには山脈も見える。絶景だ。遠くの夜景がまたたいている。こんないわゆる一等地の素晴らしい眺めの部屋に住む縁になったここまでの道のりが、不思議で、そしてありがたく思えてくる。
急にお腹がすいてきた。それから昨日はブログを書かなかったことを思い出した。段々自分が戻ってくる。気がつけば10時。最後のリハーサルまであと30分。さあ、後一頑張り。行ってきます。

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