コロナ日記79:全米でデモの暴動化(門限発令)

  • アメリカの民間企業「スペースX」が開発した宇宙船「クルードランゴン」がフロリダ州ケネディーセンターから打ち上げ成功
    • 国際宇宙ステーションに5月31日に到着予定。
  • 黒人に対する警察の暴力に対する抗議デモが全米各地で暴動化。多くの都市で門限が発令される:ミネアポリス、シカゴ、ロサンジェルス、アトランタ、デンバー、フィラデルフィア、ピッツバーグ、シアトル、クリーブランド、コロンバス、ポートランド、ローチェスター、マイアミ、ミルウォーキー、ソルトレークシティーなど。

Vincent Chin(ビンセント・チン)という名前をご存知ですか?1982年、日米貿易摩擦の際、日本人と間違われて2人の白人男性に殺害された中国系アメリカ人男性です。

ビンセントは結婚式の前祝いを友達としている際に、二人の白人男性に人種差別的な嫌がらせを言われ、口論になりました。一人はクライスラーの従業員。もう一人は最近、自動車工場の仕事を失業したばかりでした。事件を目撃した警察の証言によるとビンセントの頭部は野球バットで「ホームランを打つように」何度も殴られ続けていたそうです。ビンセントは病院で4日間の脳死状態の後、予定されていた結婚式の4日前に亡くなりました。

この事件自体がすでに悲劇なのですが、問題は裁判でこの二人の白人男性は罰金のみで入獄を全くしなかったことです。このケースは何度も再審にかけられましたが、結局この二人の白人男性は牢屋に入る事はありませんでした。最初の判決を下した裁判官が「彼らは牢屋に送られるべきタイプの人達じゃない。」と発言したことは有名です。この事件はアジア系アメリカ人が結束して人権運動を始めるきっかけとなりました。

欧米の黒人社会では、上に挙げたビンセント・チンの様なケースが歴史的にずっと、途切れなくあるのです。しかも、アメリカの憲法で市民全員に約束されている人権を守るはずの警察が、黒人をずっと人種差別し、不当に暴力を奮い、そしてしばし死に至らせているのです。

「子供時代、僕のおじさんがある日帰ってこなかった。親戚中で探しに行ったら道端で殴り殺されて打ち捨てられていた。当時はそれに対して抗議をするという考えさえ起らなかった。そういうものだったんだ。」

黒人の友達(私より一回り年上)と呑んでいる時、何気なく言われたことです。人格者の彼は、彼の先祖を奴隷として所有していた大農園オーナーの子孫と手を組んで、当時の大農園経営と奴隷制度の実態をよりよく知り、双方の会話と許しのプロセスを始めるというプロジェクトに関わっています。

私はピアノ一本で今までの人生の半分を練習室に隠れて暮らしてきました。クラシックの専門家に黒人は極端に少ないので、黒人の友達は多くはありませんでした。「もっと社会に関連性の音楽造りをしたい」と思い始めて、友好関係が広がり、US-ジャパン・リーダーシップなどを通じて色々な人権問題に取り組む運動家たちとも知り合い、段々と事の深刻さが分かり始めています。そして黒人の友達の悲しみや怒りを目の当たりにして、今日は本当に涙が出てきます。

なぜ今、このタイミングでこのデモがここまで騒がれているのか...

  1. スマホの普及とSNSの拡散で警察の不正や暴力、そして人種差別がどんどん明るみに出るようになった。
  2. 1960年に始まった人権運動から今のDiversity and Inclusionまで、それぞれの人が自分の立場で人権を主張しても良いという自覚が広まった。
  3. Covid-19は、一番最初は「感染と死の可能性に於いては皆平等だ」という雰囲気があったが、しばらく立つと貧困層の方がずっと感染率が高く、犠牲者の中の黒人の数が非常に多いことが判明した。(理由:危険にさらされる仕事に就いている人が多い。人口密度が高いところに住んでいるなど、住環境が悪い。栄養が良くない。基礎疾患がある人が多い、など)
  4. Covid-19の経済的悪影響も、黒人やラテン系を始めとする有色人種の方がよりひどく被っている。

最後に略奪や暴行などの暴動化についてですが、右翼が煽っている、あるいは実際の暴行は全て右翼、という記事が沢山出ています。このデモ集会のきっかけとなったジョージ・フロイト氏が殺されたミネアポリスを始め、暴動が起こっている地域の多くで、逮捕される暴行現行犯の全員が遠方から来ていることが分かっています。またオンラインでは白人優勢主義者たちが暴動を煽る発言を多くしており、彼らは暗号で呼びかけ合って今回の事件をきっかけに人種戦争を起こそうとしていると見られています。

人間は共感する生き物です。脳神経科学を勉強して私が一番実感したことの一つがそれです。人の感情や体験を自分のものの様に感じる—それが人間性の根本だと思います。人間性をより強くするのが音楽の役割だと思います。私は、ナイーブに聞こえるかもしれませんが、音楽を正しく社会に適応する事によって、皆がもっと人間性を実感し、社会がもっとみんなにとって良い物になると、信じています。その適応法を模索中です。

2 thoughts on “コロナ日記79:全米でデモの暴動化(門限発令)”

  1. 小川 久男

    お疲れ様です。

    カラードに対する白人優位の国アメリカは、先の戦争で
    日系人を財産没収のうえ強制収容所へ送りました。
    これから失業者がますます増え不況となれば、カラードへの圧力一層強まります。

    小川久男

    1. 小川久男さん

      失礼かも知れませんが、「カラード(Colored)」というのは差別用語にあたります。
      こういうのも時代で変わるのですが、現在は「People of Color」というのが有色人種の正しい訳となります。
      あしからず。

      真希子

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