ジェラミー・デンクの公開レッスンでゴールドベルグを弾く

Jeremy Denkと言うのはこの頃ものすごい脚光を浴びているアメリカ人の若手ピアニストです。今週末、ポリーニがカーネギーホールのリサイタルをキャンセルしたとき、ピンチヒッターで代役を務めました。その時に弾いたのがゴールドベルグ変奏曲とアイヴスのコンコード・ソナタです。物凄いコンビネーション。私は公開レッスンへの出場が決まって、選曲をゴールドベルグにしたときは、彼がゴールドベルグで最近ずっとツァーをしていたなんて知らなかったのです。


ゴールドベルグが難しいのは解釈の余地がやたらと広いからです。選択肢があまりにも大きく、そのすべてが曲の全体像を左右してしまう。つい今週末にカーネギーホールでこの曲を弾いた人に私のまだ青いゴールドベルグを聞かせるなんて。。。。


私の演奏を聴いた後(アリアから変奏曲10まで弾きました)の彼の第一声もそのことに関してでした。「この曲は選択肢が非常に広く、しかもその選択のすべてが個人的な趣味や方針、美的センスの反映される、物凄く個人的な曲だ。だから弾いたばっかりの自分が別の人の解釈について客観的に批判するのはとても難しい」。果たして彼はこの曲を私とはまったく違った視点から捉えていました。私はこの曲は個人的感情とかそういうところから離れた、もっと巨大で宇宙的な要素が大事だと思っていますが、彼はこの曲を弾くときは笑みを浮かべて弾かなければ、と私をしきりに笑わせようとします。とってつけたような笑みを弾きながら浮かべるなんて曲にも聴衆にもなんだか失礼な気が私はしてしまうのですが、「君はまじめすぎる。君のゴールドベルグもまじめすぎる」と言われてしまいます。


できるだけ彼の視点を取り入れた弾き方に変えようと奮闘しましたが、彼にも私にもちょっと煮え切らないレッスンとなってしまいました。(あちゃ~、やっぱり。。。)と少し悔しいような気持ちでいたら、レッスン終了後、彼が私に握手を求めてきました。「謝りたくって。。。自分の解釈以外の解釈でこの曲を聴くことは今の自分には無理だった。あまりにも自分の考えを押し付けすぎた気がする」。。。


う~ん、人間が大きいというか、こういう人間が成功するというべきか。。。とにかく少し、煮え切らない気持ちが解消された気持ちでした。

2 thoughts on “ジェラミー・デンクの公開レッスンでゴールドベルグを弾く”

  1. 天体の音色・宇宙の音楽に耳を傾けるとなんとなく微笑みがうかびます、そのように感じます。ただし、めったにその旋律は聴こえてこないですけどね。聴こうとしても聞こえないものなのかな?

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