私はケチである。
学生時代は学生ヴィザで、アルバイトが自由にできなかった。
それに、アルバイトに割く時間があるなら練習を、と言う気持ちも在った。
兎に角出費を出来る限り抑える事で忍ぼうとした。
多分、普通に日本で生活している人からは考えられない節約をしていたと思う。
今ではアメリカの永住権も手に入れ、晴れて学校から生活費まで支給していただける身分になり、
それからありがたいことに演奏からの収入もあり、もうそんなにカツカツしなくても良いのだが…
生活習慣、だろうか。
あるいはこれはもう生活態度の問題、なのだろうか。
病的なまでの節約が中々抜けない。
出費の際はいつも、その投資に対する相応な見返りがあるか、しばし考えてしまう。
今、朝食の準備中、ドライ・フルーツとナッツのミックスの
買ったばかりのちょっとした贅沢と健康のための投資をひっくり返してしまった。
ナッツは値段が上昇中だ。
キッチンの床に派手に散らばったナッツを私は一つずつチリをよけながら拾い始めた。
箱に戻して食べるつもりだったのである。
でも、ナッツは多く、時間がかかり、色々な考えが頭に及んだ。
私はこれから毎日、これを食べながら何を思うだろう。
そしてこのチマチマとナッツを拾っている時間はなんだろう。
さらに、ゴキブリ退治用の薬がところどころに置かれている床から拾った物を食べる
肉体的、そして心理的副作用は…?
腹をくくって、「マキコが一番大事、マキコが一番大事」と唱えながら
ザッ、ザッ、とナッツをかき集め、バッとゴミ箱に全部捨ててしまった。
自分に対する、ちょっとした変化の宣言である。