学会での発表ーパリ最終日

今日の午後は学会での発表がありました。
私のテーマは「プロコフィエフの3つのオレンジへの恋に置けるオリエンタリズム」です。
20分と言う時間制限、パワーポイントが上手くできるか、など色々心配で、
朝はホテルで2回、タイマーをかけて練習し、
自分のペーパーを読んで事実確認をしたりして過ごしました。
でも、自分のヴェランダからの景色が余り嬉しくて、
スカイプで何度も家族や友達に見せていたり、
お風呂に浸かって居たりブログを書いたりしていたら、
二回通し稽古をしたところで、もう会場に向かう時間が来てしまいました。
私のパネルは13時半から15時までに4人が話しをします。
始めの発表はオランダ人のとても素晴らしそうな年配の女性で、
トピックは「人間の起源―キリスト教、ユダヤ教、イスラム教におけるアダムとイブの比較検討」です。
とても面白かった。自分がもうすぐ発表することを忘れるくらい面白かったです。
そして、この人の発表からいろいろ学びました。
勿論、その発表のトピックについても感心することは沢山あったのですが、
発表の仕方についても。
まず、この人は物語を語るテンポで話しをしました。
物語を語るテンポは、会話のテンポよりも、スピーチのテンポよりもずっと遅く、
抑揚を豊かにする余裕、相手の想像力を掻き立てる『間』を持ったテンポです。
私はホテルの部屋で練習しているときに
「20分でいかに多くの情報を盛り込むか」
と競争のように喋っていましたが、これは撤回!
それから、この人は丁寧に皆が絶対知っている常識的な情報を説明し、
それを発展して言ってその人の提示する見解に到達する、と言う方法を取りました。
私は「皆がすでに知っていることを『教授』するように言ってしまうと、
皆、馬鹿にされたような感じで、気分が悪いのでは」と心配していましたが、
そうではない、と分かりました。
すでに知っていることをまず言ってもらうと安心します。
そして新しく提示される見解をすでに知っている事実に結びつけていってもらうと良く分かります。
逆に、新しい情報が次から次へと来ると、疲れてすぐ聞きたくなくなっちゃう、と良く分かりました。
次に、南アフリカから来た若めの女性が
北アフリカに口伝えで伝承されているハイエナと狼の昔話の進化について喋りました。
この人は、皆で早めに来てパワーポイントの確認を一人づつした時に、
私にとても親切にしてくれた人で、ひそかに応援していたのですが、
南アフリカのアクセントが強く、
しかもあがってしまっていたのか、声がひっくり返ってしまって、
ちょっとかわいそうでした。
それからパワーポイントにびっしり一杯書いてあって、
その人の講義を聞きながら読むのは絶対に不可能な情報量で、
これも良くなかった。
その次がいよいよ私の番です!
私は取りあえず、大きな声できちんと発音して喋ろうと思ってそれに集中しました。
私のトピックは音楽が関わっていてすでに変り種だし、
それだけでも皆ちょっと喰らい付いてくれたようです。
そしてオペラの中から例を幾つかヴィデオ・クリップにして持って行ったのも良かったようです。
ただし、会場に私のコンピューターを接続するスピーカーが無く、
パリの、冷房が無く、窓が開け放ってある部屋で道路の騒音が飛び込んでくる教室で、
私のコンピューター内蔵のスピーカーは余りにもか弱く、
皆耳の後ろに手を当てて、一生懸命聞いてくれました。
それだけで、もう嬉しかったです。
午後はお土産のお買い物。
そして、その後の夕食は最初の晩のProcope!
私のリサイタルを特別喜んでくれた、一番前に座っていた理事会の秘書の方や、
発起人のK氏や、
K氏のご紹介でこの学会で初めてお会いした日本の教授で
私の発表にも駆けつけていらしてくださったI氏、
それからパリ在住の私の両親の大学時代の友達夫妻で、
私のパリ在住中本当に色々面倒を見てくださったお二人で、
パリ最後の晩餐会をしました。
「演奏会と発表の成功おめでおう」と乾杯してくれて、照れて困ってしまいました。
でも、ワインも鴨もデザートも本当に美味しかった。満喫しました。
楽しく、ほろ酔い加減で帰ってきたらちょうど真夜中。
ヴェランダで風に当たって楽しもうと思ったら、
遠くに見えるエッフェル塔がきらきらと光のショーをしていました。
凄いタイミングの凄い絶景で、何だか感動しました。
今日も水曜日 ―Poco Pianoのエピソード12をどうぞ!
このエピソードではスケール以外の音を使う「クロマティシズム」が
以下に作曲家の自己表現に不可欠だったか、
さらに「古典派」のモーツァルトが
実は貴族や教会の庇護を嫌って、
出版と演奏で自活して表現の自由を図ったか、
そしてその努力を反映するクロマティシズムについて話をしています。

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