タングルウッド音楽祭が開催されるBirkshireにあるお城、Belvoire Terrace.
ここで開催されるArtsAhimsaに演奏と室内楽のコーチングをしに来ています。
着いた日には、口があんぐり…お城~なのです。
このホームページで写真が見れますが…来てみないと分からない。
http://www.belvoirterrace.com/history.php
まずそのメイン・ビルディングがまさにお城。
女の子が良く「お城」の絵を描く時に必ずある屋根のギザギザがある!
そして中はステイン・グラスや、壁のいたるところに木の掘り込みのデザインや、
パイプオルガンや、大理石の暖炉や、ティファニー?と思うようなランプシェードや…
そして40エーカー(東京ドーム3.5個分)ある敷地内には
アート用のアトリエ、ダンス・スタジオ、グリーンハウス、など計18の建物。
そのほぼ全ての部屋にピアノが居れてあります。
ここで行われているのはアマチュア音楽家のための音楽祭。
レヴェルはピンからキリ。
子供の頃は音楽家を目指して勉強したと言う、初見もばりばりのツワモノから
65歳になってずっとやりたかったチェロのレッスンを始めたと言う81歳の女性まで。
講師として来ている人は「生徒」として来ている人の数とほぼ同じですが、
そのレヴェルもピンキリ。
学部を終えたばかりと言う初々しいヴィオラ奏者も居れば、
かなり名前のある音楽学校の教授も、すでに引退しているオケ奏者も居ます。
ここで「プロとアマとの音楽共演」と言うのがこの音楽祭の謳い文句。
何故かアマチュアの人には医者、弁護士、大学教授と言ったいわゆるエリートが多く、
思いがけなく私の博士論文のトピックに興味を持ってもらって論議になったりもします。
音程がおぼつかないチェリストはでも、メンデルスゾーンの三重奏を感激しながら私と弾いて
「I feel like I died and went to heaven」と涙を浮かべながら言ってくれました。
日本では「天国に上った心地」と言いますが、
英語では「死んで天国に行った気持ち」となります。
これは81歳の方に美しい青い目でじっと見つめられて言われると、
何と返したら良いか分からなくなります。
音楽とは何か、富とは何か、考えさせられます。
お城を持っていても、夏の数か月しか使えない。
なぜなら、厳しい冬の光熱費が膨大な経費となるからです。
しかし、夏の数か月のために建物のメンテ、広大な庭の手入れ、
そして税金の支払い…光熱費が無くても膨大な経費になります。
これを効率よく使いこなすにはどうすれば良いのか?
そう思って考えはじめると、使いこなされていない財産と言うのは世界にいくらでもある。
片方では家を追われ、難民やホームレスとしてコンクリで眠る家族がいるのに、
もう片方では一年に数か月しか使われない豪邸がある。
そしてこの近所はこういう別荘として使われている豪邸が非常に多く、
この様に音楽祭や何等かのコミュニティー開放をしているところは非常に少ない。
こういう何十エーカーの土地に家族だけ住む人々も居る。
その寂しさ、虚しさ。
私だったら、悲しくなってしまう。
今夜は演奏会があります。
私はガーシュウィンの前奏曲を弾きます。
他にはピアノトリオ、メンデルスゾーンの8重奏、モーツァルトのクラリネット五重奏など。
私たち音楽家にとっても贅沢なひと時です。