演奏道中記8.7:私の原動力

7月中ずっと続いた旅行。その最後となったシアトルでの4泊5日から帰宅して、丁度一週間が過ぎました。

7月中は色々な意味で飛び回っていたと思います。飛行機の旅が多かったという文字通りの意味もあります。それに加えて、弾むような「天に上る心地」だった一方で「地に足がつかず」「浮足立った」状態が続いた一か月でもありました。兎に角一日の行程を一つずつこなし続け、ペース配分すら考慮している余地が無かった。普段は控えているカフェイン、糖分、アルコールを、「これを食べて今夜を乗り切ろう」「これを飲んで目を覚まそう」と無理やり体に流し込みながら次の数時間に備える様な最後の数日でした。

そういう無茶をする価値は多いに在ったのです。かけがえの無い出会いや会話に次々と巡り合い、物凄い知的・感情的刺激を多く受け、これからの勢いに繋がる動機や触発を多いにもらいました。新しい知識や見解を沢山学び、美味しいご馳走を囲んで毎食歓談し、そして美しいものに沢山触れました。でも、帰って数日は茫然自失としていました。分刻みの集団スケジュールが無くなって、次の行動を自主的に決めなければいけない。一か月不在から帰って来てやる事は沢山あるのだけれど、気持ちに体が付いていかない。食材を見ても食指が動かず、食事を見ても食欲がない。朝起きるのが億劫だけれど、夜は思考が忙しく中々心穏やかに寝つけない。

自分を持て余しました。聞き分けの無い幼児に呆れる様な気持ちでした。でも、そんな私に、次にやるべき事を提示し、これからを楽しみにさせてくれる様な贈り物がありました。これです。

スタンフォード大学でオンライン講師として秋から教えさせていただくことは実は6月下旬に正式決定になったことでした。でも帰宅して数日目に、1000枚の大きな名刺の箱が郵送されてきたのです。そのスタンフォードカラーの名刺の量と、箱のずっしりとした手応えに思わず笑ってしまい、そしてSSNでシェアしたら暖かい反応を沢山いただき、何だか本当に嬉しくなってしまったのです。

そしてこのSSNのポストをきっかけに沢山の旧友から連絡を受け、久しぶりにお互いの声を聞いて友情交歓をし、近況報告をしました。何しろ昨日は、パリ在住の私の一番最初のボーイフレンドとお話ししたのです!私が学部生の時に院生だった彼は、私の協奏曲の演奏の後、いきなり泣き出して「演奏中ハラハラした。自分の演奏よりずっと緊張した。無事に終わって本当に良かった。」と私の成功を自分の事以上に喜んでくれた人です。セクハラを受けたり、ストーカーの刑事責任追及に奔走したり、6年くらい前までは「私は男運が悪い!」と鼻息荒く公言していた私ですが、もっと大きな目で見たら、私は実は男性も含む数えきれないほどの素晴らしい友情に恵まれていたのでした。そしてこのポストを見て喜んで「いいね!」して、コメントして、そして連絡までして来てくれるような、そんな友人一人一人が、まだ続く私の前進を可能にしてくれているのだなあ、としみじみと嬉しくなったです。

旅からの一週間を経て、私は自分を取り戻すきっかけやこれからの道を示してくれる人々に、感謝の気持ちでいっぱいです。

6 thoughts on “演奏道中記8.7:私の原動力”

  1. Dear Makiko-san,
    Congratulations for your new journey !
    I am so looking forward to your many success and prosperity !
    Thank you very much for your hard work and great tribute music education.
    Wish you all the best !!!
    Sachiko

    1. ありがとうございます。
      これまでの活動も並行して続けます。活動の場が広がっていっている事は光栄なことです。

  2. お疲れ様です。

    自分の分身が留守を守っていました。
    日常の生活が安寧を呼びました。
    舞台は明転し、輝かしい明日のはじまりとなりました。

    小川久男

  3. 裕子さん、ヒューストン時代の博士審査を無事パスした時に、素晴らしい幕の内弁当をご馳走になって本当に嬉しかったことを思い出しました。
    いつも応援して下さって本当にありがとうございます!裕子さんの世界各地でのご活躍にもいつも感銘を受けています!一緒に頑張りましょう!

Leave a Comment

Your email address will not be published. Required fields are marked *