指揮者、ジェームス・レヴァインの声楽家の為の公開レッスンに伴奏で参加した。
私の歌手、アリソンはカナダ出身のソプラノで、歌唱力、舞台経験、演技、カリスマ性と
全て備わっていて、いろいろ教えてもらっているし、よく励ましてくれる。
歌詞の一字一句の訳しを自分の解釈も交えて、事細かに話してくれるし、
その話し方がうまくて、私もついついその気にさせられて、一緒に燃えてしまう。
一緒に弾いていて、何度も背筋が寒くなった。
3日あるレヴァインの公開レッスンで、私たちは1日目のトップバッターだ。
モーツァルトの「フィガロの結婚」からスザンナのアリア、「デ・ヴィエーニ」をまず、リクエストされた。
(アリア3曲、歌曲2曲の合計5曲を皆用意して言って、その場でレヴァインが曲をリクエストする)
この曲の伴奏譜はもともとのオケのスコアからかなり音が減らされているので、
先生からアドヴァイスされて、元のオケ・ヴァージョンに近いようにかなり音を増やして弾いた。
弦や、管の音になるたけ似せて弾く。
でも、ピッチカート(弦楽器が指で弦をはじく)からアルコ(弓で弾く)に変わるところを
勘違いしていて、まずそこを指摘された。
そして最初のところを指揮されて、ずっとテンポを速く、
そして歌手が入るちょっと前に、
普通の器楽曲だったら常識外れなほどのリタルダンドをさせられた。
その次にショーンベルぐのキャバレー・ソングズをリクエストされた。
彼はこの曲集をキャスリーン・バトルと録音している。
上手なアリソンを更に引き延ばすようなレッスンを10分で行った。
レヴァインでまずびっくりしたのは、彼は楽譜を全く見ないのに、
楽譜は勿論、歌詞まで全部空で覚えていることだ。
そして、それぞれの演奏のあと
「君はここのところで(と歌詞を交えて歌ってみせる)息をしたけれども
ここまで(と歌詞を言ってみせる)一息で歌ってご覧」
と、しつこいようだが全く楽譜を見ずに、言える!
それもオペラだけでなく、どの歌曲でもこれをやってのけたのだ。
そして褒め上手。
ピアニストに対しても、歌手に対しても、
まず褒めて、冗談を言って笑わせたりして、リラックスさせてから指示を出し始める。
やっぱり、凄い!