演奏を一週間後に控えた、2006年に作曲されたピアノ独奏曲、"Traces".
5楽章から成っていて、それぞれタイトルにその楽章のスタイルがジャズ奏者やクラシック作曲家の名前などで表記されています。
一楽章。「Reverie(夢想)」
Like Robert Schumann (The Poet Speaks) crossed with George Crumb
(シューマンの子供の情景から「詩人は語る」とジョージ・クラムをかけて)
二楽章。「Caprice(気まぐれ)」
Like Scarlatti’s Baroque Ornamentation crossed with Art Tatum
(スカルラッティのバロック装飾音とアート・テータムをかけて)
三楽章。「Tango (タンゴ)」
Like Astor Piazzola crossed with John Coltrane
(ピアソラとコルトレーンをかけて)
四楽章。「Impromptu (即興曲)」
Like Stravinsky crossed with Chopin and Thelonious Monk
(ストラヴィンスキーをショパンとセロニアス・モンクでかけて)
五楽章。「Toccata(トッカータ)」
Like J.S. Bach crossed with BeBop
(バッハをビーボップでかけて)
私にとって今この曲で一番の挑戦は長く引っ張る音と、どう向き合うか、と言う事です。
この曲は二楽章から五楽章までは普通のテンポで速かったり遅かったりしますが、時々突如として「できるだけ長く引っ張るように」と言う指示の付いてあるフェルマータが在ったり、「あたかも楽章が終わったかと錯覚するように」と言う指示の付いた長い休符が在ったりします。また、幾つかの楽章の最後には「最後の和音は15秒以上響かせている様に」などと言う指示も在ります。さらに一番大きな問題は一楽章。楽章全体が22個の音のみから成っています。一音弾いて約6秒まち、次はピアノの弦をはじいて約4秒待ち、云々。この楽章は舐めてかかっていて、最初のレッスンを初見でしたらば、怒られてしまいました。そして実際練習を始めたら、禅問答の様な難しさなのです。どうしても一音弾いてから、邪念なくその音を6秒間次の音まで聞き続けている事が出来ない!自分がいかに俗人だったかを思い知らされます。曲を信じ、音響のパワーを信じ、自分の演技力を信じ、始めから終わりまで一貫した気持ちで弾く事がいかに難しいか。普通の曲なら、練習さえすれば音を弾く事に隠れていられるから、逆に簡単です。しかしこう音が少ないと、どうしても自分自身と対面せざる終えない。
そして私は実に、実に邪念の多い人間である事をやっと少しずつ自覚し始めています。
なにやらとても難しそうな曲ですが、前前回の分も合わせて読んでみると、是非とも聞いてみたいなぁと思わせてくれます。機会があれば、マキコさんのピアノで聞いてみたいですね。
>abbros.kawashimaさん
いえいえ、観念的と言うよりは感性的な曲で、きっと上手く弾けばとても楽しい曲なんです。是非、聞いていただきたい!いつか、日本でも演奏したいです。
コメント、ありがとうございます。ご実家では良い時間をすごされましたか?
マキコ
毎日両親の物見遊山の運転手でした。まだまだ自然が残っているのを実感してきました。夏の北海道の田舎は濃い緑だらけです。きっとタングルウッドに似た自然環境だと思います。ただやっぱり鹿が増えすぎてコントロールが必要なのも感じました、観光客には新鮮でしょうけど、生活している人々にはいろいろと問題をもたらしています。けど総じて田舎暮らしはいいものだと思いましたね。
>abbros.kawashimaさん
自然に囲まれていると、本当に慰められますよね。こうして今、自分の部屋でコンピューターに向かっていると、窓の外から鳥の声、虫の声が聞こえて来て、それだけでなごみます。いつか北海道にも行ってみたいです。
マキコ