引き続き、ストラウスのオペラ「ナクソス島のアリアドネ」のリハーサルについて。
オペラと言うのは、一般的に長い物です。このストラウスはまあそれでも2時間ですが、ワーグナーや、ストラウスの他のオペラでも5時間以上に及ぶものも在ります。その間、オペラのオーケストラと言うのはずっと、ピットと呼ばれる舞台の真下にある穴倉で演奏します。この穴倉は天井が低く、奥が深く、とても暗いスペースです。弦楽器など、比較的指揮者の近くに座る奏者はそれでも舞台の下に入り込まずに比較的息が楽な場所に居ますが、鍵盤楽器、打楽器、金管など、オケの外側に位置する楽器は舞台の真下の(少なくともタングルウッドの掘立小屋劇場の場合は)蜘蛛の巣がぶら下がるスペースで演奏します。指揮者を直接見る事はほぼ不可能なので、モニターと呼ばれる小型テレビを凝視しながらの演奏です。
歌手が歌って演技をしながらのリハーサルが始まりました。時に凄いアクションが舞台上で起こっている様です。見る事は不可能ですが、「ドンドン!!」とか、「ドサ!!」とか、凄い音がし、ピットがぐらぐらゆれ、モニターに映るドホナーニの指揮が2秒ほど危うくぶれます。私はどんなに頑張ってろくろっ首に成っても舞台を見る事が不可能な位置に配置されているのでやりませんが、他の奏者達は首を不自然な形に曲げ、舞台を見ています。彼らを見ているのが面白い。表情豊かに笑ったり、心配そうな顔になったりしながら見る子。口がポカンと開いている子。そして凝視はしているのだけれど、全く無表情な子。弾きながらでも見ちゃう子。弾いている間は絶対楽譜に集中している子。自分のパートは休み中でも、舞台に全く興味が無く、無意識に堂々と鼻に指が入っている子。
オペラの場合、楽器によっては~例えば打楽器とか、30分から一時間、何も弾かなかったりするのです。その間の時間の過ごし方も面白い。本を読んでいる子。寝ちゃう子。スルリと席をはずし、劇場の客席に入って舞台上の演技を楽しむ子。外で日向ぼっこをしている子。
性格って出るなあ、面白いなあ、と思います。
オケピットで演奏する人にあこがれたなあ!
今でもちょっとあこがれてる。
でもクモの巣のはってる暗くて舞台の見えない場所で演奏するのは何だかつらそうだね。
そんな時でも楽しみを見つけるmakichaんは素敵。
なにやら客席にいるより面白い人間模様がみられるのですね。私はDVDでカルメンを見たときに思いました、オペラは肉食系でなければ見通すだけの体力が持たないなぁ、とね。けどやっぱり夢です、オペラを見に行きたいものです。
>やぺたさん
正直、ピットは辛いです。しかも毎日最低3時間、最高6時間半のリハーサルが在るのです。普通のオケのリハや演奏より、余程大変なのは、やっぱりピットの環境のせいと、歌い手本位の音楽づくりのせいだと思います。今回初めてオペラの製作に携わってみて、改めてなぜオペラ・オケの奏者の給料が普通のオケ奏者の給料より良いのか、深く納得しました。
マキコ
>abbros.kawashimaさん
私は大声では言えませんが、実はオペラ大好きとは言えない口です。オペラの文化は面白いと思いますが、正直なぜアメリカ人の歌い手がアメリカで、アメリカの観客に向かってやるのにドイツ語の歌詞の正しい発音がそんなに(リハーサルを一々中断するほど)大切なのか、とか色々疑問点が在ります。しかし、このアリアドネは一見の価値あり!物語も面白いし、ゼルビネッタと言う役のソプラノはコロコロ声を転がして、飛んでも無い高音を歌います。人間の声じゃないみたい。その他私的必見オペラは、ガーシュインの「Porgy and Bess」とラヴェルの「子供と魔法」、それからプッチーニの「修道女アンジェリカ」など。ヴェルディの「椿姫」でも、そう言えば最近泣いてしまいました。
マキコ