コロナ日記73:ライブ配信の意義、再考察。

今年の夏の活動予定が、今週全て正式にキャンセルになりました。2001年から本当に沢山の方々の多大なご協力とご支援を得て、今年でついに20年目を迎えようとしていた毎年夏恒例の帰国演奏活動を楽しみにしていました。が、日本渡航者は現在空港から14日日間隔離生活を送れる場所まで公共交通機関を使用せずに直行し、そのまま14日間誰とも接触しない事が求められています。またロサンジェルスでは規制緩和が徐々に始まってはいますが、外出禁止令は7月まで延長されています。この状況では帰ってもどんな音楽活動が皆さまに提供できるかも分かりません。

ここ3年「音の広場」と称して私の公開レッスンとミニコンサートを企画・運営してくださってきたKさんが、下の様なキャンセルの告知を今日SNSに発表してくださり、私もやっと今年の夏の帰国はならないんだなあ、と実感いたしました。

音楽活動を続けたかったら、オンラインで発信するしか無い状況で、もう一度ライブ配信の意義を再考するべく、今度は自分を視聴者の立場においてみました。

昨日は友人が主催する沖縄の伝統芸術のライブ配信をちょっと見ました。アメリカ人なのに沖縄の大学院で教え、Covid-19に困難を強いられる沖縄の支援をしている友人に賛同したかったのと、踊り・三線・太鼓など色々な出し物を世界各地から中継する事の企画・運営・実行に関心が在ったからです。沖縄の様に複雑な歴史が在る国とその伝統芸術は、特にこういう世界規模のチャレンジの際、色々な困難を生き延びて今も人々に愛されている、生涯をその芸を極めることに捧げる人達がこんなに居る、ということに勇気づけられます。

今日はヨーヨーマがバッハの6つのチェロ組曲を一気にライブで演奏し、コロナウィルス犠牲者の追悼とする、という企画がありました。全部は無理だったのですが、世界各地の友人から「一緒に見よう」と誘われており、組曲の3番の終わりから4番の始めまでちょっと見ました。誘ってくれた友人の中は、やはりキャンセルになってしまった8月末の音楽愛好家のための室内楽音楽祭の受講生たちがいます。私はもう4年続けて講師として参加させて頂いています。受講生はリピーターが多く、毎年一回の再会は近況報告や音楽談義などで多いに盛り上がります。この音楽祭のキャンセルもやはり先週発表になりました。気落ちする皆が「一緒にヨーヨーマのバッハを見よう」と誘い合わせていたのです。ヨーヨーマという歴史を代表するチェリストが、無償で追悼のために演奏をする。それを世界中の人が、色々な想いでリアルタイムで体験する。...これが今の時代の一体感なのでしょうか。

霊長類学者の山極寿一教授によると、体重に対する脳の比重は、自分に直接関係ある社会の人数によって増えていくそうで、人間の場合その計算で行くと250人くらいなのだそうです。私は1000人以上の演奏会場になると、スポットライトが眼に入って客席が完全に見えなくなり、ブラックホールに向かって弾いてるような感じになります。興行として成り立たせるのは難しいのですが、理想的には聴衆の方々一人一人と目を合わせられる大きさの会場で演奏したい。これがぎりぎり250人じゃないか…という気がしています。

10日前にさせて頂いたライブ配信は、リアルタイムでは色々なSNS全て合わせて50人くらいの視聴数だったのですが、公開されている録画が今二万一千人を超えています。これは、特に数字に弱い私の想像力をはるかに超える数字です。でもオンライン配信で儲けようと思ったら兎に角、登録者数や視聴数を上げていかなければいけません。こういう不特定超大多数に向かって誠実に交信としての音楽を届けるためには、どうすれば良いのか...

ヨーヨーマは勿論世界的なチェリストなのですが、業界ではその人柄の素晴らしさについても褒め称えられています。私も何度か会場やお食事会を共にしましたが、本当に気さくで分け隔てなく皆に自分を包み隠さず開くような、明るさと正直さと無邪気さが感じられました。(私が交わしたのは挨拶程度ですが。)そして、今日のヨーヨーマのライブ配信は、犠牲者の追悼ということもあり、音楽的にも、彼の放つ雰囲気・表情・言葉から発せられる誠実さも本当に共感や同情や一体感を促すものでした。

試行錯誤が続きます。Savoring Musicは「8歳の娘と見ています」と言われてから段々、まだ年若い音楽愛好家のためになりつつある傾向があります。兎に角配信数を上げていきます。ご意見・ご提案・リクエスト・ご質問、何でも非常に参考になります。個人メッセージでもブログのコメントでも結構ですので、どうぞお声をお聞かせください。

最新エピソードの公開は12時間後に設定してありますが、ここで一足早く公開します。

2 thoughts on “コロナ日記73:ライブ配信の意義、再考察。”

  1. 小川 久男

    お疲れ様です。

    とてもいい文章でした。
    コロナ禍にもめげず、明日に向かう姿勢が素晴らしいです。
    多くの方々が共鳴しています。

    小川久男

    1. 小川さん

      ありがとうございます。
      小川さんが毎回コメントしてくださっていることにも元気づけられています。
      これからもよろしくお願いいたします。
      平田真希子

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