第二次世界大戦中、日本軍の連勝が偽って報道されたことを我々は史実として知っています。でも当時生きていたらその偽情報 (Disinformation)を見抜けたでしょうか?日系人を「敵性外国人」と報道し、大統領令9066による日系人収容を正当化したのは偽情報だと思われますか?ちなみに日系人によるスパイ行為の証拠は最後までありませんでした。
フェイクニュースというとITやSNS時代特有の新しい現象と思いがちですが、情報操作はいつの時代にも多かれ少なかれあることなのだと思います。
USAID (米国際開発局)は、食料・教育・人道支援・医療などを提供する世界最大規模の援助を100か国以上に行っていましたが、新政権発足と共に大統領令により活動の急停止を命じられました。しばらくして「USAIDがメディアに資金提供をし言論操作をしている」「急進的な狂人によって資金が盗まれている」などの偽情報が、トランプやマスクの発信に助長され世界的に拡散しました。その後の事実確認でほぼ全てが証拠無しとして否定されています。(詳しくは日本ファクトチェックセンター(JFC) の記事をご覧ください。)
アメリカ政府の人員・規制・支出の縮小を目的としたDOGEは新政権発足から5週目にして650億ドルの支出削減を解雇・契約解消・授与金解約などで達成したと発表しています。しかしニューヨークタイムズは計算間違えや古いデータによる誤算などを指摘。NPRは誤算を差し引いて推定される支出削減は約20億ドルだとしています。
「Music doesn’t lie(音楽は嘘をつかない)」と言ったのはジミーヘンドリックスです。情報の発信・伝達・収集のほとんどが画面を通じて行われる今日、この言葉は特に染み入ります。目で読む情報は、耳でする意思疎通よりも、瞬時で効率が良いかもしれない。でも効率と人情が反比例するように思うのは、私が音楽家だからだけではないような気がします。
この記事は日刊サンに隔週で連載中のコラム「ピアノの道」♯148(3月2日付け)を基にしています。