美笑日記7.12:音楽家の環境運動

このブログエントリーは日刊サンに連載させて頂いて3年目になる私のコラム「ピアノの道」の7月16日発表の記事と一部重複しています。

Institute of Religion in the Age of Science(IRAS:科学の時代の宗教研究会)にご招待頂きました。冷戦中(1954年)、核戦争になった場合被害を最小限に食い止めるために地域を統率できるリーダーとして様々な宗教家と科学者が集まり、脅威の現実と守るべき人間性の相互理解を深めるために始まった学会。今年のテーマは環境問題。歴史ある学会からのご招待は光栄でした。「Tempo:音楽による環境運動」のメンバー代表として一週間離れ島で哲学者・法律家・宗教学者・自然科学者・経済学者・政治科学者などと交流し、演奏とプレゼンを行いました。

(ピアニストがそんな学会で専門家に何を言えるのか?)参加には勇気も必要でした。でも一週間の交流を経て、何度も「群盲象を評す」を思い出したのです。象と言う動物の存在を全く知らない六人の盲目者が手探りで自分の感触を描写します。「長くてゆらめく通気口。」「地面から生えた太くて重い柱。」「薄くてパタパタする巨大な団扇。」五世紀のインドまで記録が遡り、世界中で語り継がられるこの寓話。自己主張のぶつかり合いで終わるバージョンが主流です。でもこういう専門家の集まりでいろんな観点の橋渡しをする事が出来るのは、感性や聴く姿勢や表現力を教え込まれた私の様な音楽家なのでは?プレゼンでそう話し、更に音楽の効用の研究と教育・医療・地域活性化政策などに於ける応用成功例をご紹介し、多くの方に喜んでいただけました。

プレゼンの最後はスクリャービンの左手のための夜想曲、作品9-2を演奏しました。「練習しすぎの職業病。戦争で腕切断。様々な理由で右手がいう事を聞かなくなっても、それでもピアノを弾きたいピアニストが歴史上に数多くいて、左手のための曲はそれだけでピアノ曲の一つのジャンルになる程あります。これは人間の底力の象徴と言って良いのではないでしょうか。」そうお話ししてから弾きました。

研究会の理念を訳します。

  • 近代の知識の基に、効果的な人間福祉の原則と慣習の形成を促す創造・協力体制を応援する。
  • 科学が培う概念と宗教観に基づいた人間性に於ける希望と目標と指針の積極的でポジティブな関係性を形成する。
  • 文化背景や体験を超越し、世界的協力体制の土壌となる万国共通の人間の価値観を提示する。

戦後の日本に一般的な宗教に対する距離感や懐疑心は私にもあります。でも自分よりも大きなものに対する畏怖や敬意の精神や、儀式の一体感や統率力が環境運動には必須だと思うのです。朝の礼拝、禅僧との瞑想、夜のキャンドルライトサービスに参加し、同じ釜の飯を食べ、散歩や海辺のヨーガや談笑や時には涙も共にし、様々な専門家と共鳴し、今私は決意を新たにしています。

この記事の英訳はこちらでご覧いただけます。https://musicalmakiko.com/en/life-of-a-pianist/2980 

1 thought on “美笑日記7.12:音楽家の環境運動”

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