大掃除と近藤麻理恵とブラームス
(このブログエントリーは12月16日(土)の10時半からFMブルー湘南76.5MHzで放送されたクラシック音楽番組「スカッとすかピア」でお届けした際の原稿を元にしています。) 私は自分が本を現在執筆中である関係からも最近ベストセラーを集中的に読んでいます。年末は大掃除がありますね。それにちなんで選んだ今週の一冊は今世界でシリーズ700万部突破の大ベストセラー、近藤麻理恵の「人生がときめく片付けの魔法」と、音楽に於ける音の経済性・整理についてお話したいと思います。 近藤麻理恵については何となく知ってはいましたが、本を読んでびっくり!この人の片付け哲学は神道に基づいていたのですね~。自分の部屋の中にあるものにはすべて「自分の役に立ってあげたい、自分のときめかせたい」と言う思いがある。その物一つ一つを丁寧に直視して、本当にときめかせてくれるものだけを残し、あとは過去にときめかせてくれた思い出に感謝しながら解き放ってあげる。そうすることによって自分の優先順位を明確にし、過去に片を付け、自分の人生を自分が選択したものに囲まれて、自分らしく生きる。 この本を読んで思った作曲家はブラームスです。彼、若い時はやたらと音が多いし、曲が長いんですよね。ブラームスのソナタ3番、作品5はブラームスが20歳の時の作品ですが、5楽章から成り、演奏時間は40分くらい!キーシンの演奏でお聞きいただきましょう。音の密度にご注目ください。 このブラームスが年を取ってくるとどんどん、音が厳選されていくんです。それぞれの曲も短くなりますし、音も必要最低限に絞られた曲が増えてくる。私の一番好きなのはこれです。作品119の1、インテルメッツォ。ブラームスの最後のピアノ作品です。60歳のブラームスをお聞きください。 私は若くて情熱あふれるブラームスも好きですが、この昇華しきったようなブラームスがものすごく好きです。 近藤麻理恵の「人生がときめく片付けの魔法」を読んで思ったのは、彼女の哲学は部屋の中に在るものだけでなく、日々食べるものの選択、言葉の選択、友達、時間をどのように過ごすかの選択、すべてにつながると思いました。さらにこの思想がもっともっと広がれば環境汚染問題も解決するのでは、なんてことも夢想してしまいました。残念ながらブラームスは年を重ねて音を厳選するようになると同時に、食事に楽しみを見出して体はどんどん太ってしまうのですが… 最近ブラームスがすごく好きです。28年前、渡米してジュリアードでの勉強を始めたばかりの頃生まれて初めてブラームスを勉強して、譜読みを初めてびっくりしました。日本のあの歌にすごく似ているメロディーが出てきたからです。皆さん、何の歌かお分かりになりますでしょうか? オープニングのメロディーを聞いて「サクラ!」と思った方は私だけではなかったと思います。『音楽は世界の共通語』と改めて思います。こちらもブラームスの晩年、作品116-2「間奏曲」です。 英語ですが、こちらは私がYouTubeでこの曲の練習風景を公開している動画です。 今日は近藤麻理恵の「人生がときめく片付けの魔法」の私の感想を、ブラームスのピアノ作品と共にお聞きいただきました。