美笑日記7.16:母国での演奏

明後日、日本に向けて出発します。

先月渡米34年目を迎えた私は、日本に帰る時も本拠地のLAに戻る時も「帰国」と言っている自分を愉快に感じます。帰国中には横須賀市の金沢八景駅前にある「8Kギャラリー・アー」(7月23日18時半開演)と群馬県のみなかみ町カルチャーセンター(8月6日13時半開演)で演奏させて頂きます。

演目はこちら

「海外で活躍する演奏家を応援する会」の支援の基2001年に始まった私の日本での演奏活動は、20周年記念を目前にコロナ禍で中断となりました。私自身がアメリカに拠点を置く中、日本での演奏活動の企画・運営は家族や支援者の多大な協力が必要になります。関係者の高齢化が進む中、これまでの形態での演奏活動を持続することが無理である事は年々自明になっていました。そんな中でのパンデミック。日本政府の水際対策や飛行機業界の経営困難で帰国すらできなかった数年を経て(もう日本で演奏する事は無いかもしれない)と半ば諦めていました。それなのに今回、別件で帰国する時期に演奏のお話しを受けて嬉しくなってしまったのはなぜでしょう。

日本で演奏活動を始めた頃は、私は芸を極めるため、自己鍛錬のため、芸術家としての個性を確立するため、場数を踏むために、一回でも多く演奏の機会が欲しかった。勿論日本で演奏出来る事は嬉しかったのですが、お客さんがどういう人々で演奏会に何を求めているか、という事よりも自分の成長・鍛錬のために演奏していました。でも、約四半世紀を経て私は今、極端に言えば芸や伝統はどうでも良い、人のために弾きたい。私はこの場・この時を共にするあなたと私を慈しために演奏したい。だから母国で、世界の中で日本人という立場を同じくする同郷人のために演奏出来る機会は、かけがえの無い物に感じるのです。

一昨日の演奏会の抜粋動画をシェアさせてください。定期的に演奏させて頂いているご近所の高齢者施設での演奏です。引っ越して5年目になるLA近郊のこの町も、こうして交流を重ねるうちに段々私の故郷となって来ました。

1 thought on “美笑日記7.16:母国での演奏”

  1. お疲れ様です。

    久しぶりの日本公演、期待、大です。
    8Kアオキで、また聴かせていただきます。
    円熟のピアノを。

    小川久男

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