いくつかの独奏会のお話しを頂き、張り切っています。何を弾いたら一番楽しんで頂けるのか...色々考えて以下の様な企画を提案します。この夏の7月下旬から8月の帰国の際にもこの演目をご披露したいと思っています。
平田真希子ピアノ・トーク2023年『奏でる鏡』
半日熟考の末、閃いたタイトル!...「っおお??」と興味をそそられませんか?
このタイトルの心は、いくつかの意味の層があります。
- 音楽は鏡、です。
- 音楽には作品の背景にあった風潮や環境・歴史・自然風景などを反映する力がある。
- 背景を昇華した音楽には、時空を超えた奏者や聴衆の投影を受け止める普遍性を持つ。
- 「教師の『鏡』」「バカの鏡」というように日本語の鏡には「理想」とか「代表」という意味が。
- ラヴェルの曲集「Miroirs(鏡)」を土台として構築している企画。
- フランス印象派の作曲家ラヴェルの曲集「鏡」は特に風景や自然現象やその音の描写が多い。結果この企画の曲もほとんどがそうなります。そういう意味での「鏡」でもあります。
どういう企画か。
「トルコ行進曲」や「子犬のワルツ」など誰にでも耳馴染の有名処と、通好みの難曲や、他ではめったに聞けない幻の傑作。これらの曲の相違点を解説して、どなたにも興味を持ってクラシック音楽をお楽しみ頂ける音楽会です。また、ミニ音楽イベントでも、親子コンサートでも、教訓を含めた学校・大学・生涯学習センターでの講義でも、演奏会場での二時間のバリバリ独奏会でも、臨機応変に対応できます。下に書き出してある曲の数々はレストランのメニューの様なものです。これらの曲を基に、それぞれの会場・聴衆・ピアノと音響などに最適のコース・プログラム・音楽冒険をご提供します。
土台となるラヴェルの曲集『Miroirs (鏡)』(1905)について(演奏時間約30分弱)
次の5曲からなる曲集「鏡」は、私が2001年に収録した最初のアルバムの目玉でもあり、私のピアノの道を一緒に歩んで来てくれた曲たちです。最近、音楽による環境運動に関わるようになり、その象徴性がより意味深になりました。自然の声を代弁しているように感じるのです。なお、下の題名は一般的に日本で使われている邦題とは違う物もありますが、原題を基にラヴェルの意図した題により近づけようと試みました。
- 1.「夜の蛾たち」(5分弱)
- この曲を弾くといつも「飛んで火に入る夏の虫」と思います。温暖化の警報が鳴り響く今、あんまり笑えません。(吉報:ピアノの音色が美しく指から音がこぼれてくるような、楽しい曲です。)
- 2.「悲しい小鳥たち」(3分弱)
- 「熱帯の森で道に迷ってしまった小鳥たち」というラヴェルの前書きは農薬が野鳥が大量虐殺していると警告を発した「沈黙の春(1962)」(レーチェル・カーソン著)を思い出します。(吉報:この本で農薬の規制の見直しが起こり、環境問題の意識が一般的に高まりました!)
- 3.「大海の小舟」(7分)
- ダイナミックにうねる波の間をメロディーが縫う様に見え隠れする曲です。
- 4.「道化の朝の歌」(6分)
- 目にもとまらぬ勢いの連打音や、3度・4度・そしてオクターブのグリッサンド(!)など、普通のピアノ曲では見られない超絶技巧から単旋律の歌いまわしまで、ピアニストの技巧と表現力の幅が問われる曲です。ラヴェル自身が編曲したオケバージョンも有名ですが、ピアノ独奏の道化でしかできない役作りがあります。「のだめカンタービレ」でのだめがコンクールで弾くシーンがあります。
- 5.「鐘の谷」(5分)
- 谷の合間を鐘の音とそのこだまが鳴り響く、音の遠近法。これは大人の曲!シブイ!!今この曲を復習しながら、若いマキコが何考えてこの曲ひいてたのか、想像もつきません。
この5曲を順不同で、色々な曲と組み合わせながら解説付きでお楽しみ頂きます。
- 「Noctuelles(夜の蛾たち)」
- グリーグの抒情小品集、作品43の1「Sommerfugl(蝶々)」(1887)
- 何故ラヴェルは蝶々ではなく蛾を題材に選んだのか。
- ショパン「子犬のワルツ」作品64-1(1847)
- 音で情景や動きを描写する作曲技巧。
- グリーグの抒情小品集、作品43の1「Sommerfugl(蝶々)」(1887)
- 「Oiseaux tristes(悲しい小鳥たち)」
- グリーグの抒情小品集、作品43の4「Oisillon(小鳥)」(1887)
- どう「悲しみ」を音楽にするか
- 連続音の非情とやるせなさ
- ベートーヴェン「月光」のソナタ
- 山田耕筰「黎明の観経」(1916)
- 連続音の非情とやるせなさ
- 下降音型:短2という音型の象徴性
- ショパン前奏曲作品28-2
- ベートーヴェン「エリーゼの為に」
- エリーゼの為にのオープニングはエリーゼの名前の綴り!?
- ラヴェル「ハイドンの名によるミニュエット」
- 「Une barque sur l’ocean(大海の小舟)」
- アルペジオの包括性と聴き手の解釈・投影・想像力
- ショパン作品25-1「エオリアン・ハープ」
- ショパン作品25-12「海」
- バッハ平均律集1巻前奏曲ハ短調
- ドビュッシー「月の光」(中間部の水面に反映する満月)
- アルペジオの包括性と聴き手の解釈・投影・想像力
- 「Alborada del Gracioso(道化の朝の歌)」
- リズムと拍の肉体性
- モーツァルト「トルコ行進曲」
- ガーシュウィン「前奏曲集」
- 「スペイン風」のエキゾチズム
- モンポ―前奏曲2番
- リズムと拍の肉体性
- 「La vallee des cloches(鐘の谷)」
- ラフマニノフ前奏曲作品3-2「モスクワの鐘」
- ドビュッシー「月の光」
- モンポ―「鐘と泉」
- ドビュッシー「月の光」(再現部で遠くに聞こえる教会の鐘)
- 2023年の日本の帰国中の企画。
- 7月16日(日)金沢八景「8Kサロン」ギャラリーアーで演奏と公開レッスンの半日イベント
- 8月6日(日)みなかみ町カルチャーセンター「つきよのホール」で独奏会。
この演目での演奏会にご興味がおありの方は、是非コメント欄にお申し出ください。
お疲れ様です。
これほど、詳細な曲目解説ができることは
演奏は、ほぼ完成していると思いました。
プロであれば当然なのですが、一文に音符がかさなって観えました。
7月16日(日)金沢八景「8Kサロン」ギャラリーアーで演奏と公開レッスンの半日イベント
楽しみに待ちます。
小川久男
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