美笑日記2.21:ルネッサンス・ウィークエンド

私にとっては3回目のルネッサンス・ウィークエンド(略してRW)に参加して来ました。

政治家・裁判官・社会運動家・NGO・NPO・学者・起業家・投資家・テック産業・金融・芸術家・メディア・出版・宇宙関係・大企業のCEO...専門や背景が異なる「リーダー」達がオフレコで交流する会です。連休を利用して開かれるRWは, 1981年の創立以来40年以上の歴史を誇ります。

余りの情報量とインスピレーションの密度と量。忘れてしまうのが怖い。RWはチャタム・ハウス・ルールを起用しています。討議の内容に関して言及しても良いけれど、誰がシェアしたか、また誰が議論に参加していたかを公開してはいけません。このルールの範囲内で、備忘録をここに公開します。

一日目:16日(木)18時~22時ごろまで

16時:受付が始まります。PCRテストの陰性が確認されたら必要書類を受け取ります。とんでもなく大きい首からかける名札と、今回のRWのプレゼンやパネル協議のお題目の内容とスケジュール、そして参加者名簿がまとめてある冊子です。全て物理的に印刷されていて、電子メールでは送られて来ません。冊子の内容の外部へのリークはルール違反になります。有名人などのプライヴァシー保護の為です。自分の出番の日時と、話す内容だけは事前にメールで知らされていますが、パネルの他のメンバーなどはこの冊子を受け取るまでは分かりません。

18時:夕食前のカクテルパーティー。私は2021年の9月の初回からまだ3回目だけれど、それでも仲良くなったメンバーが沢山。会場の音響と再会の歓声で、爆音がうねってる!

19時:夕食。ビュッフェスタイル。ヴィーガン・ベジタリアン・グルーテンフリーなど全てを考慮したメニュー。サラダはここから毎食二種類。私は8時からのパネルがあるので優先権で列の先頭。パネリストの特別席で他のパネルメンバーとご挨拶。経歴はタジタジでも、皆面白くって笑いが止まらない。

20時:真希子の出番!最初の夕食直後の、参加者全員の前で行われるパネルはルネッサンス・ウィークエンドの名物ミニプレゼン「Whoops!」。特にRW初回参加者を温かく迎える為の心づくし。(未知の専門家も有名人も、皆人間!)というメッセージを込めた失敗談の披露パネル。前回のRW2回では、このパネルで会場全体を捧腹絶倒の渦に巻き込むユーモアの達人を過去に何度も目撃して、私にそれが出来るかとっても心配。でも、司会者の「笑わせようと無理しなくて良いのよ」という優しい言葉に肩の力が抜ける。ピアノの道に進むきっかけとなった子供時代の思い出を披露しちょっと笑ってもらった後「『音楽は世界の共通語』という理想を鵜呑みにし、身一つで、振り返るとかなり危ない橋を数々渡ってきた。業界のセクハラや人種差別を目の当たりにしたり自分も被害に逢ったりし、子供時代から信じて来た理想を疑い辞めようかと悩んだけれど、今は脳神経科学の理解を経て音楽が我々の人間性を向上する力を信じている。西洋音楽は世界の共通語ではない。でも、音楽そのものはやっぱり世界の共通語だし、私は素晴らしい仲間を経て音楽家として人生を歩めることが幸せです」と結んだら、皆に暖かく拍手してもらえる。ホッとする~良かった。一番面白かった話しは非常に腹立つメールを受信し、発信者の罵詈雑言を並べ立てて奥さんに転送したつもりだったら実は発信者に返信していた、と言う告白。皆「あるある」で会場大爆笑!

22時:ここから飲み会を始めるツワモノも多いけれど、私と友人は睡眠優先。会場から近いRW友達の所に泊めてもらっている(感謝)。今回の200人のメンツの全般的観察や夕食後のパネルの感想などを、お茶を飲みながら話し合ってから、「おやすみなさい」で就寝は真夜中近く。

二日目:17日(金)朝8時~22時半まで

興奮のせいか朝6時の目覚め。友人宅から会場までは5マイル(=8キロ超)。朝が弱い友人を残して、ヒールを鞄に入れ、運動靴でワシワシ歩く。これから4日ずっと座りっぱなしだから丁度良い。朝食に間に合ってほっとする。コーヒーと糖分はこういう会では不可欠!

9時:プレゼン「創造力とは何か」ー昨晩のパネルでご一緒して(この人凄い!)と思った学者さん。凄いけれど、ほっこりするような本当に良い人でもある。他の部屋では様々な題目で同時に7つもプレゼンやパネルがあるけれど、この人のプレゼンの聴衆はかなり多い。人徳か、知名度か。「空からインスピレーションが降って来て今まで誰も考えつかなかったような創造物をパッと創る~私はそういう意味での創造力はあり得ないと思っている。」と前置きをした上で、数学や物理の見解から創造力とは結局既に発見の上に積み立てていく、ゆっくりとしたプロセスではないか、と言う風に議論を展開していく。聴衆からの発言が物凄く多く、それも面白い。パネルの前の会話でこの人がピアノ愛好家で「下手だけれど、ゴルトベルグの変奏曲を何十年も練習しています」という告白を経ていたこともあり、私が会場にいる事で音楽の話しが沢山出てきて、お得な気分。

10時:パネル討論「どうすれば民主主義を保守できるのか」―NPO・政策・国連・法律・環境運動・映画産業などの専門家がそれぞれの立場からの見解と考えを述べる。余り楽観的な意見は出てこない。すべき事・できる事というのは色々提示されるけれど、現状は物凄く問題が多い事には皆意見一致。権力が数か所(企業でも政治でもお金でも)に集中している事で起こる不平等と、選挙から選挙までの統治期間が短い為に起こるアメリカ政治の一貫性の無さ。これはRWの4日間を通じて様々な場所で出てきた矛盾。

11時:真希子の出番!ミニプレゼン「中々聞けないずっと知りたかったこと」ー 私が頂戴したお題目は「音楽による環境運動」。他の人たちは不動産の高騰と物件の枯渇問題、性・性嗜好差別の廃止の為の社会運動、精神疾患を患う人々の為の経済政策や革新的治療法、など。

12時:ミニ・プレゼン4つ「AIが導く我々の将来」「21世紀の戦争と兵器」「ロシア-ウクライナ戦における経済制裁」「重力波の計測」

13時:お昼。テーブルの席は早い者勝ち。どのテーブル、誰の横に座れば一番楽しいか、目移りしてしまう。

13時45分~:ミニ意見発表「思い切って進言させて頂ければ...」参加者全員がお昼を食べ終わった頃から20人以上の参加者が一人2分の時間制限の中、皆に自分の考えを次々述べます。一人一人について司会者が紹介をしてからなのだけれど、皆凄い人ばかり。本当に偉い。「機械学習にバイアスが出てくるのはインプットにバイアスがあるからだ、という事は皆イヤと言うほど思い知ったと思います。そこに学びを得て、自分の脳へのインプットをもっと意識的に多様化したらどうでしょう。」から始まって「政治観でも経済状態でも人種でも価値観でも、何でも良いのですが、自分と正反対の人との友情を培う事が結局この国の分断化を防ぐ一番の近道ではないでしょうか」や、「血縁(Biological ties)よりも自分で選ぶ縁(Logical ties)をもっと尊重にする自由を!」とか「リアリティーショーは違法にするべきだ!」と最初は大爆笑をかました後、理由を段々段々真面目にしていき、最後にリアリティーショーがトランプ政権に繋がったと結論付け、会場をシーンとさせた人まで。内容だけここで羅列しても説得力はないけれど、皆スピーチが上手い!着眼点が素晴らしい!2分でもインパクトが大きい!

15時半:プレゼン「1968年」マーティン・ルーサー・キングもロバート・ケネディーも暗殺され、市民権運動とベトナム戦争が同時進行し、大統領選があり...と盛沢山だった一年を振り返り、今のアメリカに反映して考察。1960年代流行った音楽に関する言及が凄く多いのが面白くて、たまたまプレゼン後廊下で一緒になったプレゼンターに「市民権運動の時は音楽が必須だったのに、Black Lives Matter運動の時は皆スローガンを叫ぶだけで歌はありませんでしたが、それをどう解釈しますか」といったら廊下で立ち止まってすごく話し込む結果となる。面白い。

16時半~19時:友人宅に一緒に帰ってちょっとだけ昼寝とメールと休憩。

19時~:パネル討論「NPOと慈善事業の創造力:インパクトを効率よく上げる為の工夫」(ここ、記憶が全く無い…!)

19時半~:夕食ビュッフェ(ローストビーフがとっても美味しかった。デザートは食べようと思ったら売り切れてた。)

20時~:「ミニレクチャー」参加者全員の前で8人が順番で6分ずつ自分の専門について披露する。イギリスの歴史の陰にいるある女性;宇宙飛行士のコメディー;正反対の意見の人と一緒に協力をする方法;メディア業界での反体制的見解の生き残りは可能か;など。

21時半~:真希子の出番!30分のピアノ独奏会。夜は遅かったけれど、参加者の過半数が私のピアノを聴きに来てくれました。私は本当はここで音楽の治癒効果の研究や、音楽による環境運動の宣伝をする事も出来たし、そうしようかともチラリと思いました。でも、皆一日ずっと沢山の意見を聞いて疲れているだろう、ホッとしてもらってそしてゆっくり寝てもらいたい、と思ってモンポ―やショパンやドビュッシーを弾き進みました。一緒に息をしてもらったり、静かに耳を澄ましてもらったり、できるだけ参加型の部分も心が休まるようなものを選びました。最後の曲で皆立ち上がって拍手喝采をしてくれました。「一生で一番素晴らしい音楽体験だった」と言って下さった方が数人いました。皆嬉しそうにしてくれて、私も嬉しかったです。

三日目:18日(土)8時半~15時半、そして自由行動

8時半: 朝食。沢山の人に昨晩の演奏を褒めてもらったり感謝してもらったりして嬉しい。サンフランシスコの古楽器オケの事務をやってその財政を何十倍にも立て直し、自身もホルン奏者の男性と話し込む。プロジェクトの可能性を提示される。ちょっと保留。今は頭がいっぱいなので。

9時:真希子の出番!パネル討論「グローバル・インテリジェンス:アメリカの責任と『西』が直面する危険性」NGOや超有名シンクタンクの研究者や外交官や軍関係者などに囲まれて、(なぜ私がこのパネルに...)とちょっとタジタジして臨みました。が、皆が実際的な戦略とか財政とか侵略とかの話しを専門的に話していたので、開き直って明治維新後の日本の目を見張るような文化外交を持ち出して、「250年近くも鎖国をしていた国とは思えない機敏さで世界万博に進出し、ジャポネズムを欧米に轟わたらせ、国際政治に躍り出た!文化の力を侮ってはいけない!音楽家も外交や交渉に起用して下さい!私はいつでも出動可能です!」と言ったら、結構効果がありました!やったね~。

10時:プレゼン「『幸せ』について」ココはあんまり詳しく書くと誰かバレてしまうので書かないけれど、目から鱗!

11時:パネル討論「ジャーナリズム・出版業界・メディアはこれからどうなるのか?」お先真っ暗...という感じ。( ̄∇ ̄;)

12時:プレゼン「90分で世界を変える方法」ドキュメンタリー映画の製作を通じてものすごい数の政策を変える事に成功した例。ここもあまり書くと誰かバレるので、あんまり書きませんが、涙と怒りと希望と誇りと物凄い感情が入り交じるプレゼンでした。

13時:ランチビュッフェ

13時45分:ミニ意見発表「これから何が起こるのか」(参加者全員の前で、選ばれた25人が一人2分の時間制限の中で物申す)AI とかチャットGPTとか国際的な経済格差問題とか医療改革とか移民問題とかの話しが出る中で、「舞台芸術家の訓練というのは他の色々な分野に応用が利く素晴らしいものです。これを起用しない術はありません!」と主張した政府関係(アマチュア舞台芸術家)が居て、内心拍手喝采!

15時半~:自由時間。パネルで白人男性に軽くあしらわれた、凄い経歴の有色人女性と、その目撃者たち。実は私も今回のRWではそういうダイナミックがあるなあ、と色々な場面で感じていた。集まってその女性の話しを聞き、問題意識に関する意見交換をする。その後二つの夕食会のはしご。軍の歴史的な女性蔑視や虐待と、改善法。平和政策にはなぜ戦争よりもお金が集まらないのか。アメリカの慢性的な住居不足と経済格差をいっぺんに解決する方法、など。話題は尽きない。海岸の日の入りが夢のように美しい。

四日目:19日(日)8時~22時半

8時~朝食:(この人凄い!)と思っていた人と朝食が一緒になる。私の演奏会に感謝をしてくれ、私はこの人の研究発表に感謝をし、そして哲学としての美学の起源に関する自分の見解とその人の研究との相違点を述べると物凄く乗って来てくれる。テーブルで座っていたら知覚の生態現象に関する研究をしている人が全く別の視点から話題に加わって来て、物凄く盛り上がる!朝食からこんなに濃い会話ができるなんて、ここは天国!?という感じ。

9時~パネル討論「(ここは題目を明かさないで置きます)」マンスプレイニングと言う言葉をご存知でしょうか?ManとExplainingをくっつけた造語で、男性が自分よりも専門家の女性に向かって上から目線で説明したり、女性が喋っているのを遮ったり、女性の発言を無視して自分の言いたいことだけを言い続けたりするような現象を言います。今まで2回のRWはそういう態度は見られなかったけれど、今回のRWではこういう態度を取る白人男性が何人かいて、私だけでなく皆段々その事を話題にし始めていました。その輩にこのパネルでも同じような現象が。女性たちはみんな素晴らしい経歴の専門家たちなのに、それを遮って兎に角自分の話しや見解を押し付けてくる。聴衆の中の男性陣も何とかこれを阻止しようと頑張っても、本人は気付いていないのかわざとなのか、中々収まらない。

10時~インタビュー「天才のお話し」あんまり詳しく書けないのが残念ですが、誰でも知ってる世界的な賞の受賞者が二人、参加者全員の前でそれぞれの専門研究の数々や自分の生い立ち、未来の予測などについてお話しをしてくれました。

11時~真希子の出番!パネル討論「気候変動への対応とサステイナビリティ―」環境問題に対して科学・起業・報道・国際協力・社会運動・企業・政治の様々な立場から対応策を試みている人たちに混じって音楽による環境運動の話しをしました。「報道はウソの希望ばかりだ!」「あなたの言っている技術はエコという触れ込みだが製作過程での環境汚染が凄すぎる!」「もう時間が無いんだ!政府は何をやっているんだ!」とか発言者の声音が段々大きくなり、部屋中が感情的になってきたところで私の番。「なんだか皆さんのお話しを聞いて居ると、タイタニック号の音楽家の様な気持ちになって来ますが…」と笑いを取ったところで、「例え地球と言う船がタイタニック号の様に本当に沈没する運命だったとしても、皆さん考えてみて下さい。本当に大事なのは何なのか。タイタニック号で救命ボートの席を子供に譲った人達の倫理観や誇りを考えてみて下さい。音楽には『あなたの幸せは私の幸せ』と感じさせるパワーがあります。一人は皆の為に、皆は一人の為に。市民権運動やフランス革命で音楽が何を成し得たのか、そしてそのパワーを今の我々の危機に応用できたら何ができるのか、想像してみて下さい。言い争っているのが一番無駄だとは思いませんか?」自分でも(やった!)と手応えを感じました。後から何人かに「正直にいうと音楽と環境問題を結びつけるなんて馬鹿げていると思っていましたが、すっかり改心させられました」とか「あの時のあなたのタイタニック号の発言には雷に打たれたような気持ちがしました」と言っていただきました。自分で言うのも何ですが、あれは上手く行ったな~、と思います。たまたま時を得た、という感じです。

12時~プレゼン「社会平等について」凄かった。

13時~自由行動:ランチは教育家と医療関係者ととっても素敵なレストランで。その後マンスプレイニングに関してかなり感情的な即興的な会話がありました。糾弾する側とされる側が何とかお互い理解し歩み寄ろうと努力をし、でも中々難しい。普段だったら面倒くさいし、時間もないし、これからの人間関係に支障を来すかもしれないから、絶対にしない会話を皆腹をくくって敢えてしている感じ。私は主に目撃者として、見守っていましたが、気が付くと体が硬くなっていました。

18時半~ミニプレゼン「愛について」家族について、結婚について、祖先について、色々な人が個人的な話しを披露し、午後の緊張がほぐれてホッとしました。

19時半~夕食ビュッフェ。お昼もレストランでお腹いっぱい食べたのに、最後の夕食は中華で、それが嬉しくってお皿をてんこ盛りにしてルンルンで食べていたら、テーブル中が「マキコはなんてよく食べるんだ!」「食べたカロリーはどこに行くんだ!」「この量は凄いぞ!」と盛り上がってしまい、調子に乗って「私は食べ放題では大抵の男性を食べまかします!」とか、全然しなくても良い自慢をしてしまいました。

20時半~インタビュー形式「ちょっと気になっている事」参加者全員の前で、このお題目に選ばれた10人が発表。「若い人がスマホの画面ばかり見ているので、私は寂しい」と言う教育者など。ちょっと疲れていてここの記憶は曖昧です。

五日目:20日(日)祝日、最終日

8時~朝ごはん。帰る人が段々出てきてお別れのハグが沢山。

9時15分~ミニ発表「最後の一言」参加者全員の前で選ばれた20人が一人ずつ2分の発表をして行きます。歌を歌い出す人。今回のRWであった人たちから学んだことのリストを読み上げる人。皆中々奇抜なアイディアで挑んできます。

11時~正式な会は解散ですが、しばらくホテルのロビーでみんなで色々学びの復習や、新しく生まれた発想などの交換。そうしていると、沢山の人がお別れを言いに、ハグに来てくれます。おなごり惜しい。皆で凄い大冒険をした様な連帯感があります。

帰宅途中、運転しながら居眠りしそうになり、睡魔と戦いながらたどり着いてから昼寝!盛沢山でした!

 

2 thoughts on “美笑日記2.21:ルネッサンス・ウィークエンド”

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