美声日記1.15:今できること
今できる一番大事なことは、自分の健康と安全を管理し、これから何年もかかる復興に協力し続ける気力を蓄えることかもしれない。だから一緒に歌いましょう。
新年明けましておめでとうございます。 おめでとうの漢字はいくつかあるようです。お芽出とうは芽が出る→努力の結果が形になる―これは分かりやすいですね。お目出とうは賽(さい)の良い目が出るということ、そしてお愛でとうは「愛でる」+「甚(いた)し」で、「とてもいとおしい」という意味なんだそうです。 私の今年の目標は「あるもの愛す」。「ないものねだり」の反対語は「あるもの探し」なんだそうです。可能性の範疇にないものをねだって嘆くより、範疇にあるものを主体性を持って探し求め実現化し、そして感謝して慈しむ、という意味の「あるもの愛す。」例えば世界平和は、個人が実現化できる範疇にはないので、願うことは他力本願のないものねだりになります。でも一方、自分の心中や人間関係の平和を積極的に探し求めて実現することは、連鎖反応によって結局、個人にも可能な世界平和への貢献になりえるのではないでしょうか。「もっともっと」と利益や寿命に数値ばかりを追い求める欲張り亡者よりも、あるものを慈しみ、どう活用するかに重点を置けるようになったのは年の功でしょうか。 かくいう私も「もっともっと」と音数や音量や演奏会や聴衆の数・大きさに囚われて、亡者になった過去を経ています。でも最近思うのです。ミスタッチというのは誇張や虚言と出所が同じなのではないか。見栄っ張りの勢い任せで指は転がり、舌は滑ります。本当に心を籠めて出す音や奏でる演奏には、ミスはあり得ない。そして心を籠めるためには時間と気持ちのゆとりが必要です。 …という訳で、「あるもの愛す」でお愛でとうございます。 皆さんは、どういう心持ちで新年をお迎えでしょうか。 昨年も大変お世話になりました。2025年もよろしくお願いいたします。
美声日記1.3:お愛でとうございます。 Read More »
「疲れや貧しさに喘ぎ、自由に焦がれて岸辺に群がり、安住を拒まれて嵐にもまれる哀れなさすらい人たちを私に送れ。私はランプを掲げて黄金の扉を示す。」『移民の国』アメリカ民主主義の理想です
美笑日記11.12:世界平均幸福度を上げよう。 Read More »
「喜びの時も悲しみの時も、富める時も貧しき時も、健やかの時も病める時も…」通常新郎新婦が結婚式の誓いに交わす言葉ですが、私は音楽家としてこの誓いにある様に聴き手に寄り添えるピアニストを目指しています。 不穏なご時世。(私に何ができるのだろうか)と弱気になることもあります。でも私は色々なところで様々な方々のために演奏して、世界の広さと多様性を体感しています。モンタナではその街初の演奏会を披露し、アラバマでは1000人の小学生に質問攻めにあいました。重度障碍者とそのご家族や、ホームレスの方々などにも演奏した一方、有名会社の創立者ご家族や映画業界の著名人などの豪邸で演奏させて頂いた事もあります。音楽はどんな人々の間にも橋渡しができると信じて活動しています。 音楽というのは食事と同じだと思うのです。どんなに正反対の固定観念を持っていても、どんなに生まれ育った状況や受けてきた教育が違っても、空腹時にご馳走のテーブルを一緒に囲めば笑顔になります。寒い日に暖かいシチューを振舞われれば優しい感謝が生まれます。 こんな寓話をご存知ですか?地獄に行くと細長いテーブルを挟んで人々が向かい合って座っています。それぞれの前においしそうなスープが湯気を立てていますが、みんな飢えて痩せこけています。スプーンが長すぎて自分の前のスープ皿にも自分の口にも入れられないのです。天国に行くと全く同じ状況ですが、みんな丸々と太ってニコニコしてます。違いはただ一つ。天国では長いスプーンでテーブル向かいの隣人にスープを食べさせてあげてたのです。 否が応でも我々は地球人として、運命共同体です。一人の痛みはみんなの痛み。あなたの喜びは私の喜び。自分の幸福度は周囲の幸福感に影響されるのは研究でも立証されています。最大数の人々が最大の効果を得るために、一人ひとりが今できることはなんでしょうか。 この記事は日刊サンに隔週で連載中のコラム「ピアノの道」♯140(11月3日付け)を基にしています。