これから~バッハ。
このあと、夜の7時半から一時間半、ヴァイオリニストの録音の伴奏の仕事を終えたら今学期は終了! 今日の午後、私可愛がってくれているオーボエの教授、アラン・ヴォーゲルに呼ばれた。 彼は、私がコルバーンに来てしばらく経ってから顔を見るたびに 「自分は1989年のクリスマス・パーティーでアンドレ・シフに勧められてから毎日、 平均率曲集の前奏曲とフーガを二曲弾くことを日課にしている。君もやってみなさい」と言われていた。 今日、そのことと、来学期から彼のオーボエ専科の生徒たちにバッハを教えることを頼まれた。 パブロ・カサルスも毎日平均律を弾いたそうである。 モーツァルトのピアノにはいつも平均律の楽譜があったそうだ。 ノーベル賞を受賞をした医者・牧師・オルガニスト・ピアニスト、アルバート・シュヴァイツァーは 「毎日バッハを弾くことにより私たちはedify(啓発、教化、薫陶)される」と言ったそうだ。 彼は1905年にバッハの伝記を書いているのだが、その中で 「。。。バッハは一つの終局である。彼からは何ものも発しない。一切が彼のみを目指して進んできたのである。この巨匠の真実の伝記を書くということは、とりもなおさず、やがて彼の中で完成し終焉するドイツ芸術の生存と展開を叙述し、この芸術の努力と過ちを理解することである。この天才は決して単独的精神ではなく、総体的精神であった。我々が畏敬の念をもってその偉大さの前に佇立する作品は、数世紀、数世代の手が加えられて完成したものである。。。」と書いている。 アラン・ヴォーゲルが平均律を弾き始めたのは「ハーモニーを理解したかったから」だそうだ。 オケの中で弾いている時、自分がミスを多くし過ぎる、と思い、 それはハーモニーをきちんと理解し、聞いてないからだ、と思い、 それでアンドレ・シフのアドヴァイスに従うことにしたそうだ。 そういう話を一時間くらい聞いて、彼がオーボエを弾くようにピアノでインヴェンションを弾くのを聞き、 私はすっかり触発されてしまった。 明日からNYだ。 私も明日から毎日平均律を弾き始めようと思う。