カリフォルニアの多くの学区域で新学年度がオンライン授業で始まります。今日は、ご自宅でお子様の教育を指導する親御さんのお役に立てばと思い書いています。音楽のパワーについてこのコラムで色々お話ししてきました。音楽は子供さんには更にパワーを発揮します。理由は前頭前野と呼ばれるの部分。管理するのは「計画実行」「集中」「努力」「我慢」など自己制御と実行機能。前頭前野は25歳位まで未完のまま成長を続けます。この発達途中の前頭前野を、音楽教育や音による合図が補佐してくれるのです。
コロナウィルスのニュースで持ち切りですね。休校・イベント中止・株価暴落…そんな中、休校になったミラノの校長が生徒に宛てた手紙がSNSで話題になっています。17世紀にミラノを襲ったペストを描いたマンゾーニの普遍的小説「許嫁」をまず引用して、「集団パニックは、危険性が蔓延していると錯覚を起こし、周りの人間までをも敵対視させる脅威。冷静な平常心と向上心を忘れず、私たちの財産が社会と人間性であるということを念頭に合理的・文明的に物事を判断しましょう」と説いています。 疫病を始めとするさまざまな世界恐慌と音楽の関係は、最古の歴史まで遡ります。自然や病の原因も分からず、なす術もなかった時代、人々は様々な思いで音楽を奏で、声を合わせて歌い、踊ったことでしょう。古文書でその様子を垣間見ることができます。音楽は祈りとしても、恐怖心を忘れる慰みとしても、コミュニティーの結束を強め士気を高める手段としても使われました。そして、科学や医療の発展した今でも、未来や死については無知に甘んじるしかない私たちが、究極的に彼らとどう違うのか… “Music is a bigger weapon for stopping disorder than anything on earth. (音楽は混乱に対する地上最強の武器だ)“と言ったのは、沈むタイタニック号で最後の瞬間まで演奏を続けたという8人の音楽家のリーダー、ウォレス・ハートリーです。それとはまったくスケールの違う話しですが、停電が何日も続いた時、普段はばらばらの生活をしていた同居人たちが私の弾くピアノの周りに集まってきて、いつの間にかミニコンサートとなった思い出が蘇ります。暗闇の中、ろうそくの明かりで音楽を共に体験して微笑み合った思い出は、私が自分のこれからの音楽人生を考える上で重要なものです。 コロナのニュースが落ち着いても、恐慌はさまざまな形で世界を脅かすことでしょう。私たちの生存本能は常に何かに恐慌を見出すからです。そんな中で音楽家として私たち音楽家が、社会に提供できるものは何か、どのような形で一番効果的に貢献できるのか…試行錯誤が続きます。 この記事はアメリカ西海岸の日本語新聞「日刊サン」に隔週で連載中の「ピアノの道」No. 28として3月5日2020年に発表されました。
私は、Dr.ピアニストとして、音楽を社会的なツールとして提唱しています。音楽の正しい活用方法を広めることで、沢山の人に、より健康に幸せに人間として尊厳のある生活をして行く手助けができると確信しています。今回は認知症の予防、症状の改善、そして介護でどのように音楽を使えるか、少しご紹介させてください。実際にワークショップも行っています。
「音楽には社会資源としての大きなポテンシャルが在る!」これが、私の信念です。音楽をどう使えば、私たちの生活や社会をよりよくするために有効活用できるのか?私はこれからの音楽人生をこの課題の研究と考察をしたい。そして音楽の効用を演奏や講義や執筆活動を通じて、出来るだけ沢山の方にお届けできれば、と思っています。 その試みの一つとして始めた、「音楽の効用を職場で活用!」ワークショップ。( こちらでワークショップのプロトタイプの概要をお読みいただけます)。 この数か月で様々なクライエントにご提供させて頂き、参加された方々に大変喜んで頂けています。予想以上の反響に私も多いに勇気づけられ、この音楽ワークショップのポテンシャルを確信し、これからの意欲を燃やしています。さらに良いワークショップをお届けするべく、復習とこれからの更なるグレードアップ計画を公開するのが、今回のブログ内容です。 そもそもワークショップとは何なのでしょう。 伝統的な『授業』では、先生や専門家・権威と言った一人の人間が講義をし、残りの参加者はそれを静かに聞くと言った受動的な学び方が主流です。それに反してワークショップでは、参加者同士で意見交換したり、自分の体で体感したり、グループで共同に実験してみたりして、能動的に学びます。自分の体と言葉と五感を総動員することで、学習内容が体感や思い出に結びつき、より個人的な実感に基づいた学習になります。また共通の課題を受けて意見を交わし、力を合わせることで、参加者同士の交流と理解が深まります。 静かな聴衆に向かって、壇上から音楽を投げかける伝統のあるクラシック音楽の分野で教育を受けてきた私。その上、修士課程を勉強中から大学などの教育機関で、授業やレッスンを教えてきました。特に教え始めたころは、相手の興味の対象や、どの情報を必要としているのかも考慮する余裕も無く、(自分の持っている知識を全てシェアするのが義務)と、真面目に、一方的に、喋りまくっていたと思います。(意見を聞いても、皆シャイで手を挙げない)(参加型授業は先生の怠け)...生徒や非専門家に対する不信感や「教える」と言う行為への誤解は、実は私だけのものではなく、工業革命以降現在に至る教育現場に、歴史的にあるのではないでしょうか? ワークショップをデザイン中も、音楽家としての修行中に自分が体得して来たことをいかに効果的に皆さんの職場や日常に役立てることができるか、それを伝えることに集中していました。 しかし、このワークショップのファシリテーターとしての活動を始めて驚きました。 参加型にすればするほど私が提示するメッセージが波紋を広げ、参加者の中で生きて成長し続ける考えとなっていくのです。これは、ワークショップの最中の参加者の表情やボディーランゲージの変わり様、そして意見交換がどんどん活発になる様、笑い声の出る頻度の増加、さらにその笑い声がどんどん楽しそうになっていく感じなどで、痛いほど感じられます。 「聞く→聴く」「理解→体感→体験」と、能動性を段々強めていき、シャイな参加者でも違和感なく参加できるようにデザインしたこのワークショップですが、頂いた感想を見ると圧倒的に皆さんの印象に残っている部分は、一番能動的な「指揮でリーダーシップ考察!」の所です。最初のワークショップでこれに気づいて以来、どんどん能動的・体験型学習の要素を前倒しにしているのですが、参加者の方々は、臆すること無く、どんどん食らいついてきてくださっています。 頂いた感想からいくつか抜粋をご紹介します。(参加者の了承は頂いています。) 『 飲料事業の経営をしていると、五感の中の聴覚以外についてたくさん考えます。味、デザイン、香り、商品を持った感じなど。平田さんのワークショップを通じて、聴くという動作を、飲み物、そして人間が集まって活動する事業の中でどう設計していくのか、新しい視点をいただきました。受講した社員たちの眼差しも、平田さんのリーダーシップに触れて一層輝きを増し、またチームとしてお互い発信してぶつかりながらも協業し推進力を持って取り組む姿勢が見えました。是非定期的に実施していきたいと思います。』(株式会社チェリオコーポレーション専務取締役 ) 『指揮のワークショップは...音に対する感覚、リーダーシップに関する体感、実感ができて、頭の中だけの理解でなくて感覚を使うので良い。人前でやるので自信を持つ体感の練習になる。自分がしきる!と言う気構えの練習になる。感覚をオープンにする機会になった。こういうワークショップの短いバージョンもありますか?』(ございます!注:この時は5時間のワークショップをさせていただきました) 『指揮のワークショップから、指示(動作)が明確でないとみんなの心を一つにできない、ついてこれない事が分かりました。「音楽」と聞くと苦手意識が先行してしまい、これまでさけてきたけど、今回のワークショップをきっかけに自分の好きな音楽をみつけて探求していこうと思いました。』 『 音楽と脳、からだの関連を身をもって体験できた時間でした。自分が思っている以上に音楽とからだは連携していて、音学の素晴らしさを改めて感じました。』 このワークショップはそれぞれのグループのご要望にお応えして、常にニーズに合った形にしています。今までにファシリテートさせて頂いたワークショップのクライエントやトピックの例は以下です。 Webrain Think Tank LLC. 「音楽でリーダーシップ!」ワークショップ (参加者7人、2時間半)聴覚の再認識→声の抑揚への気づき→生態リズム//音楽のリズム→指揮でリーダーシップ考察 Terumo BCT, Inc. 本社 「『音楽は世界の共通語』を科学する」(参加者約45名、1時間)脳神経科学の側面から、なぜ私たちは音楽で一体感を得ることが出来るのかのデモンストレーションと、それをどのように職場で活用すればうまくコミュニケーションと連帯感を創り上げることが出来るのか、ワークショップ。 Terumo 「サウンドマーケティングと、サウンドロゴデザイン」(参加者8人、90分)なぜ音は感情に直結しているのか、どのような音がどのような感情を醸し出すのか、それを使って効果的にマーケティングするためにはどのような方法が在るのか。最後にサウンドロゴを試験的に作るワークショップ。 チェリオコーポレーション滋賀工場 「『第一部:音楽でより良いチーム、より良いチェリオ』『第二部:音のパワー&聴覚で市場開拓』『第三部:指揮でリーダーシップ体現』」(参加者:中堅以上22人、5時間)部下とのコミュニケーションの向上と、連帯感を醸し出す引率に注目しながら、音楽の効用について再考察。単純作業中の音楽での効率向上や、サウンドキューでのチーム認識など。 チェリオコーポレーション新人研修「音楽でより良いチーム、より良いチェリオ」(参加者15人、4時間)新入社員が、同期としての連帯感を高め、社員としての自覚を確立し、さらにこれからのキャリアに関する展望をより期待に満ちたものにするためのお手伝い。音楽や聴覚を考察しながら、「上がると言う現象」とは、そして「ストレス」とは何か、どう克服できるのか、など。
(The English translation of this review is here.) タイトルにもある「核心」に徹した、シンプルかつ重要な本。 メッセージ性が明瞭でぐいぐいと引っ張られるように読んでしまう。 創造力=エンパシー(相手を思いやる勇気と能力) STEAM人材=ヒューマニスト・人類主義者。 シリコンバレーのSTEAM人材をモデルに、 今後の日本社会に適した新しい人材像とその養育法を提示する一冊。 産業革命以来、各国が競い合ってきたのがSTEM: Science(科学), Technology(技術), Engineering(工学), Mathematics(数学)。 これらはすべて数量化できる分野。なので前進にも競争にも、拍車がかかる。 ここに新しくArts(芸術)を加えたのがSTEAM. ArtsをSTEMに加える実際的な理由はいろいろ文中に挙げられている。 「対象物の特性をつかみ取る」「意味を昇華させる」「3次元で考える」「体を使って知覚する」など、これまで芸術家が使ってきた技術的なスキルの多くが、STEM領域の学びに有用。 今まで関連性が低いとされてきた複数の領域をつないで、活動や学びを活性化 未完で在ることに対する包容性の高さ Artsがもたらす集中力、記憶力、学習能力、探求心、コミュニケーション能力などの向上。 そして実際にSTEAMを養成するための教育上の試みや具体的な例、さらにSTEAMを活かして活躍している前衛的なSTEAM人材もストーリー性豊かに本書では紹介されている。 STEAM教育現場では、生徒主体の体験ベースの学習:Project Based, Problem Base, Design Thinkingで生徒たちはそれぞれの発見を積み重ねて、個性と自信と知識を育んでいく。 そしてSTEAM人材は「デザイン思考」を駆使して、潜在的なニーズにうまく答えたイノベーターたち。 「デザイン思考」とは「なぜ作るのか(WHY)」「何を作るのか(WHAT)」「どう作るのか(HOW)」を模索するプロセス。それは実際的な製品だけではなく、体験・概念と言った抽象的なモノにも適応される、世にあるすべてを対象にした営み。 既存の枠組みにとらわれずに大胆に発想し、柔軟かつ濃厚なネットワークで 答えの無い問いでも追い続ける、探求に対しての真摯な姿勢を持って 複雑化する世界に対応していく能力を養成するのがSTEAM。 しかし、本書が一番強調しているのは、STEAMとは新しいヒューマニズムだ、と言うことだ。 STEAM人材とはAI時代に、人間性を大切にし、人間性を取り戻そうとする新しいヒューマニスト。 本書からの引用でこの書評を締めくくりたいと思う。 「人間を取り巻く環境が、かつてない大きな変革期を迎えている21世紀。科学技術は日々飛躍的な進歩を続けています。そのような時代に私たちが直面している真の課題は、より新しい商品を開発して競争に勝つことでも、より多くのテクノロジーで世界を満たすことでもありません。真の問題は、この世界を、すべての人間にとって優しい場所にできるかと言うことではないでしょうか。人類にとって本当に役に立つものを作りたい。人間とは何かを問い続けたい。専門性を研鑽し続けながら、それぞれの熱い想いを活動につなげる最先端のSTEAM人材たち。彼らこそ、次世代のポスト情報社会がどう進むべきかの道筋を示す、21世紀を牽引する人材なのです。」 おこがましいようだが、私が音楽でやろうとしていることが如実に記されている。 なんだか鬨の声を上げたくなる。 ヤング吉原麻里子・木島里江共著「世界を変えるSTEAM人材:シリコンバレー『デザイン思考』の核心」朝日新書出版。初版2019年1月30日。