この記事は日刊サンに掲載中のコラム「ピアノの道」で7月30日に発表予定の記事を基にしています。
帰国中の日本からの発信です。
日本の緑は濃い!(水も緑も本当に豊かな国だなあ)と今更ながらに思います。時差ぼけの超早朝、街の目覚めの前の住宅街を散歩をしていると文字通り耳をつんざくような勢いでミンミンゼミが力いっぱい鳴き始めます。何だか心身が浄化されるような元気さです。
私を迎えに来てくれた父の車のラジオの文化放送。「おとなりさん」という番組の火曜日特別コーナーの「音鳴(おとなり)さん」に思わずクスリ。視聴者から送られて来た「何らかの音」をあてっこするという、お気楽な企画です。MCさんものんびりとした口調。
日本の「デデーポッポー」という鳩の鳴き声が懐かしく感じられるのはなんででしょう。LAにも鳩は一杯いるのに。皆鳴いてるはずなのに。
懐かしい音に包まれての日本での演奏です。汗を拭きながらお客様たちがご来場して下さいます。アメリカで培ってきた私の音を故郷で皆さんに受け止めて頂ける喜びで、音の粒が一つ一つ鍵盤から飛び跳ねて客席に吸い込まれていくような快感。
公開レッスンもします。狭い防音室で普段練習されているせいでしょうか。それとも謙譲の美徳でしょうか?音楽学生でも愛好家の方でも日本人は内に秘めた想いと実際に発せられる音楽にギャップがある場合があります。アメリカが長い私だからこそご提供できる突破口があると思っています。「鍵盤を貴方の心への鍵だと思ってください。鍵を一つ一つ開けて、ご自分の気持ちを開放するつもりでメロディーを会場に解き放ってみて下さい。」「鍵盤の前のご自分に心地よい演奏を目指すのではなく、最後尾席の後ろにある非常口に思いの丈をぶつける気持ちで弾いてみて下さい。」そんな事を言うと全く別人の様な演奏になる事が多いです。会場で聴講されるお客様からも「おおお!」と言う声と共に思わず拍手が出たりします。嬉しい瞬間です。
お疲れ様です。
8Kコンサートで、4年ぶりのライブに、魅せられました。
楽しいコンサートは、奏者の揺ぎ無い笑顔にありました。
強力な磁場のある演奏に引き込まれ、そして、感動しました。
小川久男