ポーランドの春

 もう去年の4月になるが、ポーランドに行った。ショパンの曲想からポーランドはいつも小雪の降っている様な気のしていた私の印象は裏切られた。りんごの白い花咲く木々が点在、水の豊かな見渡す限りの田園風景。あのワルシャワの郊外は何故懐かしい気持ちがしたのだろう。  シューマンの協奏曲のゲネプロ(最終リハーサル)は、地域の小・中・高校生を招待して行われた。会場満席の子供達のそれでも遠慮したヒソヒソ声はブンブン蜂の唸り声のように演奏中も続いたが、それが無関心のせいではないことはステージを降りたとたん小学生にワッと囲まれて分かった。多分クラスでは道化役の10歳位の男の子がプログラムとペンの捧げもって皆に笑われながら近づいてくる。その子のプログラムにサインした後はもうどの手がどの子につながっているのか分からないような混雑の中で日本語で名前を書きまくった。私は自分の名前は好きだが、こういう時は「字画が多いなあ」とちょっと思う。  やっと最後の子供のサインをして、中庭に出て一息ついて朝食の残りのパンにかぶりついたら今度は高校生の男の子が数人歩いてきた。(恥ずかしい)(言葉が通じない)(何を言えば良いか分からない)等小学生の時は思いもしなかったことを次々思いながら、しかし逃げるわけにも行かない。突っ立っていたらば一人がかがんでたんぽぽの花を摘み、私に渡してそのまま皆で歩み去った。やっぱりショパンの国だ。

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