アメリカ西海岸の日本語新聞「日刊サン」に掲載中の「ピアノの道」。38回目がちょうど8月6日に当たったこともあり、広島の原爆記念75周年目について書きました。
“History is written by the victors（歴史は勝者によって書かれる）”という言葉を思い出しました。最近、BLM（ブラックライブズマター）運動に関して友達と会話をしていた際です。「歴史というのは物語。単純さが必要。全ての視点を取り入れることは不可能。The Voiceless（声なき人々）が出てくるのは仕方ない」と言われ、その歴史の欠陥を補うのが文化では無いか、と反論したのです。文化や芸術や創造性の社会的役割というのは、その声なき人々にも声を与えることではないか、とその時思ったのです。
「75年は草木も生えぬ」と言われた広島の原爆投下から今日でその75年が経ちました。「はだしのゲン」の漫画や映画。「怒り地蔵」は国語の教科書に載っていました。私たちの世代の反戦教育は戦争の残酷さを、子供の視点から描いたものが多かったと、振り返って思います。作者は当時の子供や一般市民．．．いわゆる「声なき人々」です。
終戦後、原爆の人害の報道に制限がかかっていたことを、私は最近知りました。爆発の破壊力を示す建物の写真などは良いのですが、広島市民の被害を写真や報道で出版する事は困難だったようです。ジョン・ハーシーが6人の広島市民の原爆後の物語を特集した「ヒロシマ」は、タイムズマガジン社が検閲を恐れ、6回シリーズの企画を急遽一挙に出版したそうです。「はだしのゲン」もジョン・ハーシーの「ヒロシマ」も、歴史を簡潔化しようとする動きに、文化の力で抗ったのだなあ、と思います。そう言えばベートーヴェンの時代のウィーンも出版物の検閲が厳しかったようです。この時代に器楽曲が著しく発展した背景には、言葉の無い器楽曲は検閲の対象外だったこともある、というのも最近知った事実です。「The pen is mightier than the sword (ペンは剣よりも強し)」ですね。
体制の検閲が入ろうが入るまいが、私たちの脳は世界をできるだけ簡略化する事で理解したつもりになって安心しようとする傾向があります。でもその時に、私たちの感情の揺れ動きや現実の複雑さやニュアンスを感覚的に捉えるのが、美術や文化なのではないでしょうか？私は音楽は人間性の底力だ、と信じています。
（この記事の英訳はこちらでお読みいただけます。）
今日は、こちらの動画をYouTubeにあげました。
ニュースは、最近は選挙運動のこともあり、読めば読むほど幻滅するので、箇条書きも辞めにします。（もし、「このニュースの箇条書きが面白かった」「続けて欲しい」というコメントが聞こえて来たら再考慮します。お知らせください。）
代わりに、その日にあった嬉しかったこと・感謝することを箇条書きにします。
- 昨日、お昼寝をした上に、物凄く早寝したお蔭で、今朝は5時にすっきり目覚め。朝練ライブ配信の前に20分の瞑想と10分のストレッチとウォームアップをして、大変調子よく朝練ライブ配信ができました。
- 野の君が大奮闘してリサーチの結果、新ルーターを購入！これでライブ配信のネット接続が安定化するはず！野の君は本当に私と二人三脚で全面協力してくれる。ありがとう、野の君！
- ちょっとずつ作曲と即興を日課にしています。
- 丁度コロナの非常事態宣言の頃に取れるはずだった歯の矯正。ところが3月半ばから7月まで歯医者は営業停止になってしまった。やっと開いたと思ったら「矯正を取りはずしの際に必要な機械は唾の飛沫が激しいため、使用解禁がまだ」と前回言われ、意気消沈。でも解禁になった！2週間後に歯の矯正が取れる！（アポ二日前にコロナ検査が必要。）すごく嬉しい！
- お昼にパスタソースを作って、美味しくいただきました。
- 「音楽と癒し」の活動をもう何十年もやっている先輩にお話しを伺いました。とても勇気づけられました。
- ケネディーセンターが「Music and Mind」というライブ配信特集をしているのを見つけました。オペラ歌手のルネー・フレミングがホストをして色々な専門家にインタビューをするというシリーズです。一回目は前公衆衛生局長官ヴィヴェーク・マーシー。この人は「孤独感」が及ぼす健康への悪影響について書いた「Together」という本を最近出版したことでも注目を浴びています。原始人の時代、孤立化は死を意味しました。「孤独感」は生存本能の警報を体中に鳴らします。これが長続きするとストレスになり、健康に悪影響が及ぼされます。15本のたばこを毎日吸うより、肥満体であるよりも、孤独感の健康リスクは高いそうです。音楽や芸術にはこの孤独感を和らげる作用があります。とても勇気づけられました。明日ももっとこのシリーズを聞こう！
