Gotham Writers Conference:第一日目=物書き成功者たちの経験談と助言
今日は司会者も含めると全部で8人の物書き成功者たちのお話しを聞きました。ジャンルも児童文学からディストピア(暗黒郷)SF、短編・小説、詩、戯曲、ノンフィクションとマチマチです。
今日一番際立ったピカイチはこの人!Jacob M. Appel(ジェイコブ・アペル)
この人についてのドキュメンタリーまで在ります。下は予告編(英語のみです)。
子供の頃から物書きになりたいと知っていて、5年生の時に最初の小説(80ページ)を書いた、と言っています。ところがこの人何と、歴史と文学と戯曲と医療と法律と生物倫理学...博士号や修士などの学位をハーヴァードやブラウンと言ったアメリカ最高の大学から11個も取得していて、弁護士でも医者でも精神科医でも教授(生物倫理)でもあるんです。物書きとしては今までに11冊の本と公演された戯曲も含め、215の出版物があります。私のグーグル検索によると、学術論文や専門家としての意見を新聞記事や雑誌の記事などにも山ほど寄稿していますが、本人の口調から察すると多分こういうのは215本の中に数えておらず、215の中に含まれるのは詩・小説・短編・戯曲です。更に凄いのは、彼が今までにエージェントや出版社に作品を送って不採用だったことは、彼の計算では約二万一千回だということです。彼は「出版というのは統計的に言って1つの採用に100の不採用があると思ってかかった方が良い。さらに出版社に提示する作品は多ければ多いほど、出版に漕ぎつける可能性が増える。兎に角量を書かなければいけない。」そしてドキュメンタリーの中では彼の部屋の壁には隙間なくびっしりと不採用通告の手紙がピロピロと貼ってあります。
(もしかしてこの人はそこまで文才はないんじゃないか)…と今一瞬思いましたか?いやいや、それがですね。この人凄い沢山賞をも獲得しているんです。短編でも詩でも小説でも。さらにさらに、「今回の物書き大会の参加者には、自分の本をPDFでプレゼントします!ご希望者はメールをください」と宣言してくれたので、早速メールを書いたところ何と出版済みの小説や短編集が9冊分すぐさま送られてきたんです!全部200ページ近い!ちょっと読んでみましたが…面白い!本当に面白い!引きこまれます。
この天才ジェイコブ・アペルの物書き10条
- Writing has to be one of your top 3 priorities(書くことが人生の最優先事項のトップ3の一つであること)
- Don’t die on one doctor(一人の医者の意見に命を賭けるなー助言は大事だが一人の助言に自信と自我を揺るがすな)
- Know the rules mostly to follow, but also to break them.(ルールを知り、大体の時は守り、時には確信を持って破れ)
- Increase the odds by numbers(質&量。質のために量を妥協するな。)
- The role of an artist is to ask questions, not answer them(芸術家の役割は質疑ー答えを提示する事ではない)
- Readers want to benefit from the author(自分の持っている何をどうすればより読者に価値をもたらすか常に考える)
- Hook needs trajectory(第一文は、読者を自分が描写する世界に引き込むだけでなく大きな発展性を秘めていなくてはいけない)
- Only PERFECT PRACTICE makes perfect(正しい練習法の量をこなして上達するが、間違った練習ならしない方がよい)
- Expertise cannot be directly revealed(専門知識は直接書くな。物語の中で滲み出す)
- Precision matters in writing(書き方の高精度は必須。)
このジェーコブ・アペルも含め全員が今日何度も繰り返し出てきたテーマがこれ。
一冊の本の成功をゴールにするな。良い物書きになれ。
良い物書きになるためには、人生経験と広い視野が必要だ。その為には貪欲に生きろ。全てに好奇心を持って取り組め。一冊の本で枯れ尽きるのは物書きではない。更に一冊目で成功しようなんておこがましい。一冊目はまだ練習の内!
わ、わたしは~、本を書いたら演奏会も講演もワークショップも機会が増えて~、それで音楽の治癒効果についてもっと色々な人に知ってもらうきっかけになって~、それで「めでたしめでたし」だと思っていたんです~。
でも確かにこの本を書きあげて出版・成功させることだけをゴールにしてしまうと、視野が狭くなるというのは分かる。結果的にこの本しか書かなかったとしても、この本を成功させるためには「私はこれから『物書き』だ~!!ガオ~(胸をキング・コングスタイルでドンドン叩く)」くらいのつもりでかかった方が本が良くなるかも。それにそう言えば私は子供の頃から物書きになりたかったんでした。それに実はもう何年も温めてきた小説や短編のアイディアがいっぱいある!
今日他に学んだことその①:ペンで紙に手書きをする作業の重要性。
今日、プレゼンの途中に何度か「それでは10分差し上げます。今言われたことについて、自分のリアクションを書いてください。」とか「この設定で15分自由に書いてください。」とか言われて、皆でズームの前でテストでもするように書く場面がありました。そうするとタイプではあり得ないくらい集中して、言葉が次から次へとあふれ出す感じで、『書く』と言う行為がより心身込める作業になり、凄くすっきりしました。昔は全部手書きだったな~。最近手書きなんて全然していなかったな~。
今日プレゼンをした物書きたちの一人は「自分は本の内容を頭の中で構想を何か月も練り、それがある程度固まったら今度は手書きでノートにそれぞれの登場人物や構成・構築や、兎に角色々4冊ほど書き溜め、それから本文をタイプし始めます。」と言っていた。私ももっと手書きする!
今日学んだことその②:エージェントの役割
物書きと出版社の間に立って交渉するのがエージェントです。エージェントの条件。
- 自分の本をよく理解し、入れ込んでいて、「売れる」という確信を持っていなければいけない。
- それに従って本の校正もできなければいけない。
- 契約書を読んだり、値段交渉など、法律の知識が無くてはいけない。
- 自分が書こうとしている分野の本の市場やネットワークに精通していなくてはいけない。
- エージェントは沢山のクライエントを抱えるが、物書きは一人のエージェント。でも「あなたが一番好きよ」と信じさせてくれるエージェントが良い。
- 理想的には一冊のエージェントではなく、何年も何冊も一緒に仕事できる相棒が良い。
今日学んだことその③:エージェントを探す事から始める時。
- 出版を左右する過程は何段階かある。
- まず「私はこういう物です。こういう内容の本を書いています。原稿を送ってもよろしいでしょうか?」というエージェント宛ての手紙の書き方と内容
- 「原稿を送ってくるように」と了承を得たら、原稿の内容。
- エージェントが「こう直した方が出版社に持ち込みやすい」などと校正の助言をしてくる。従える助言か?
- ここからはエージェントが出版社に原稿を持ちこむ。
- 出版社が「こういう風に手直しする気があるなら採用です」と言ってくる。妥協できるか?
- 出版社が「こういう風にPR宣伝して、こういう風に売り込みます」と言ってくる。その条件をのめるか?
- 値段交渉、契約書、云々。同意に至れるか?
- エージェントを探す段階でする事。
- 一緒に働きたいと思えるエージェントを30人くらい目星をつけ、第一希望・第二希望・第三希望と3等分にする。
- 最初の打診の手紙を第二希望エージェントに全部送る。
- ここで全く誰からも返事が来なかったら、手紙の書き方が悪い。手紙を書きなおす。
- ここで第二希望エージェントの不特定多数から良好な返事を取りつけられたら、この手紙を第一希望エージェントに送る。
今日嬉しかったこと。
今回のフェローシップの受賞者は開会式に校長先生に「3人の受賞者も参加してくれています。おめでとう!」と言われましたが、名前は出されませんでした。参加者同士の差別を避けるためだと納得していたのですが、今日の午後のブレークアウトセッションで、書き合いっこをしてお互い批評するしていた時に、たまたま審査員の一人が私の入ったグループの指導官だったのです。15分の手書き競争の後、順番が来て自分の作品を読んだら「あなたもしかして、舞台恐怖症の作品で優勝した人ですか?」と言われ、「凄い!あなたは凄い!最終選考で17人から3人に絞るのは、どの作品も素晴らしくてジャンルも違うし甲乙付け難くては本当に難しかったのだけれど、あなたの作品は審査員全員がとても良く覚えていて、一番最初に選ばれたのよ!」と皆の前で手放しで褒められてしまいました!そしたらブレークアウトセッションで一緒になったもう一人が「私は応募して落選したけれど、あなただったら納得できる。おめでとう!」と言ってくれました。
こういうことは公表するブログで書くのははしたないと思われてしまうかも知れない。でも、私は自己猜疑心とか、これからだって一杯一杯不採用を通告されて(私の言わんとする事に誰が何の価値を見出すのか...そもそも価値なんてあるのか...)と絶対何度も苦しむ。だから忘備録でここに書いておきます。私は今日、褒められて、物凄くうれしかった!