明鏡日記8.17:マサチューセッツ州リンカーンとケンブリッジより

昨日16日の午前11時過ぎに家を出発し、マサチューセッツ州のリンカーンに到着したのが日付を超えた午前1時過ぎ。ドアーツードア14時間の旅。より高値の直行便ではなくオースティンでの乗り換えを選んだこともありますが、やはりアメリカは広いです。ロサンジェルス空港は、いつもにも増す混雑状態。手の消毒液のボトルはそこら中にあるけれど、全て空でした。

飛行機に乗ると、消毒用のワイプが包んだ小さなパッケージをくれます。便利。これで席の周りや画面のタッチスクリーンなどを消毒出来ます。機内ではずっと観たかった映画を観れて大満足。

Minari(2020)

アメリカで苦労しながらも頑張る韓国移民の一家を描いた「Minari」(2020)ー「外国語映画」のカテゴリーでゴールデングローブなどの賞を取りましたが、「ベストフィルム」カテゴリーではなく、「外国語映画」のカテゴリーの賞を取ったことで「アメリカ移民がアメリカン・ドリームを追いかける過程で家族の結束を試される...これ以上アメリカ的な映画は無いというほどアメリカその物の映画がなぜ「外国語映画」賞なのか」という事で批評が出た映画です。

The Human Factor(2021)

主にクリントン政権が奮闘した中近東の和平計画。その中でも特にイスラエルとパレスティナの交渉の場にいた和平交渉者たちが当時を振り返って語る後日談インタビューと当時のニュース画像などを基に製作されたドキュメンタリー。アメリカ側の交渉者たちが全てユダヤ系血筋だった、そして自分たちでさえも、それに問題意識を持っていた、という事。ラディンの暗殺を今でも涙なくしては語れない、という事。バイデン政権のアフガニスタンのアメリカ兵撤退宣言とタリバンの復権、そしてそれに伴う現在進行中の命がけのアフガニスタン脱出の阿鼻叫喚、そしてアフガニスタンで犠牲を払ったアメリカ兵たちや、NGO・国際機関の人達と家族たちの(自分たちの苦労や犠牲に意味はあったのか)という虚脱感…この映画はそういう事を理解したいと願う私にとっては本当にタイムリーな好機でした。

明日の朝のリハーサルの為に一晩泊めてくれる人が、こんな非常識な時間の到着にも関わらず快く空港まで迎えに来てくれました。ボストン郊外はリンカーンという町のお宅には真っ暗な真夜中に到着したので、周りの状況がよくわからず、翌朝起きてびっくり。

この豪邸で暮らすのはヴァイオリニストとチェリストの夫婦。夏の数週間と冬の一週間は生徒を寝泊りさせて音楽祭をするのだそうです。ここで、これから私達が講師・奏者として参加する音楽祭で演奏するラヴェルの三重奏を9時半から2時半までみっちりリハーサル。今にはスタインウェイのフルコンがあり、鍵盤に座ると湖が見えます!「この居間で良くコンサートをするのよ。今度演奏しに来てね。」…喜んで!

お昼は2分ほど運転して街中まで出向き、サンドウィッチをお店でピックアップしてそこから更に5分ほど運転してWaldenの湖畔で頂きました。Waldenで「ヘンリーデイヴィッド・ソロー」と出て来た人はさすがです!邦題では「ウォールデン・森の生活」。2年2か月ウォールデン湖のほとりで世捨て人な自給自足の生活を行い、その時の人間社会への考察などをまとめた本。私は大学生の時にそれを読んで感銘を受け、電車に乗って田舎のベンチで夜を過ごしたこともありました。(本当は無期限で放浪の旅をしてみるつもりでしたが、夜が非常に寒かったのと、ベンチが固くて眠れなかったので、翌朝尻尾を巻いてお家に帰りました。)

…と、ところが!

人里離れたウォールデンはヘンリーデイヴィッドソローが観光地化したのか...?と思いきや、必ずしもそうでも無いようです。「電車の駅も徒歩距離内にあるし、自称『世捨て人』中のソローは毎週一回エマーソンと会って町で外食していたのよ。ね、本のイメージとは随分違うでしょ!」そう教えてくれたのは、2:30に私をピックアップしに来てくれたデボラ。アマチュア・ヴァイオリニストで明日からの音楽祭には生徒として参加しますが、実は歴史の教授です。「Milk: Local and Global History」という彼女の著書は人間がなぜ他の動物の母乳を飲むようになったのかという歴史を追うのですが、本当に面白い!ぐいぐい読ませます。私の博士論文を多いに触発してくれ、その博士論文を基に書こうとしている今執筆中の本も原稿を読んでアドヴァイスしてくれたり、私の恩師です。おしゃべりしながら一緒にお料理をして夕飯を頂いたら、あっという間に就寝時になってしまいました。

…「ところであなた、コロナ検査はした?」

会話が途切れた時に聞かれた一言にドキ!...そう言えば物凄く長く、数も多い音楽祭からのメールの一つに「参加前72時間以内のコロナ検査陰性の証拠提出」というのが在ったような...

急いで薬局に走り、自分でできるコロナ検査キットを買ってやり方を追いながら頑張りました。

2 thoughts on “明鏡日記8.17:マサチューセッツ州リンカーンとケンブリッジより”

  1. お疲れ様です。

    中国が支援したタリバンのアフガニスタン政権。
    子供と女性の人権はなくなりました。
    民主国家は、夢のまた夢。

    小川久男

    1. アフガニスタンで負傷した退役軍人さんや、NGOなどのボランティアとしてアフガニスタンで活躍した過去を持つ友人たちの心痛が痛ましいです。
      真希子

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