練習をしない利点

生まれて初めてかも知れない-私生活を音楽人生に優先させている。 私は衣食住を含む、生活のほぼすべてに今まで非常識なレヴェルまで無頓着で通してきた。 唯一、食に関しては健康面と美食面で興味が在って まあちょっといろいろ探究したりしたが、それも最近のことで、 ジュリアードでどう逆立ちしても高いとは言えない時給で伴奏スタッフをしていた時は 昼食はほぼ毎日学食で一杯1ドルだったスープだけだった。 「あのスープは残り物のごった煮だから飲まない方が良い」と噂されていたりしたが、 でも、スープにパンがついてくるのである! それに、カフェテリアのおばさんが私の顔を覚えてくれていて、 私が来ると鍋のそこからできるだけたくさん具を集めてよそってくれる。 『死にゃ~せん!』と、兎に角経費を削減することで音楽人生を乗り切ろうと頑張っていた。 音楽産業の需要と供給とかそう言った問題以前に、バイトを増やせば練習時間が減る。 私はただ単に練習したかったのである。 上達したかったのである。 だから自分の演奏の向上につながると思えば無料でも演奏したし、 明らかにバイト的な仕事は収入が良くても断ったりした。 そういう生活を一生続ける人色々な分野でいるんだ、と思う。 それはそれで、ある意味非常に単純明快で、そして楽しい。 しかし人生パートナーを得て、 共同生活を試みる上で色々生活の工夫と知恵を教授され その過程で練習しない日が出てくる。 「練習しない日」にやきもきしなくなるまで、慣れてしまうまで 「練習しない日」が増えてみて発見したこと。 私は練習し過ぎていた... 練習し過ぎることによって、音その物、そして音楽、そしてピアノを弾く肉体的感覚に麻痺していた。 今、ラジオでたまたま耳にする音楽にものすごく感動して その演奏をいつまでも頭の中で反芻したりする自分を発見する。 激変人生の対応の合間に10分、15分とする練習の効果が 今まで際限なく在った時間にかませていつまでもやっていた練習の100倍! そして音そのものにも非常に敏感になった。 音楽の良さを思いがけず極限的に再発見している。 そしてまた、音楽をやっていて良かった、これからも一生頑張りたい、と心から思う。

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