コロナ日記78:なぜアメリカ人はマスクをしたがらないのか。

  • トランプ:「アメリカはWHOとの関係を打ち切る」発言。医療関係者に動揺。
  • ロサンジェルスでは来週の金曜日にも飲食店内での飲食や、床屋・美容院などの再開が可能。

一時期は声を出すと唾が飛んでいるようで、挨拶はおろか、通りすがる人と目礼をする事さえはばかられました。一か月半くらい前は顔を隠すようにすれ違っているような感じだったのです。でも最近はまた朝の挨拶が楽しいです。大声は出さないけれど、笑顔を交わして手を振る感じです。

今朝の散歩中の事です。通りを隔てた向こう側を歩いているおしゃれな叔母様に手をふったら、にこにことして何かを言われました。もごもごといかにも(唾を飛ばさないようにしてますよ~)という感じの口を動かさないしゃべり方で、距離もあったし一回目は聞こえませんでした。そしたら叔母様は2度、徐々に声を大きくして同じことをニコニコと繰り返してくれました。最終的に「マスクしないで息をするって気持ち良いわね」と聞き取れた時は、複雑な心境でした。一瞬迷って、そして笑顔で肯定的な身振りをしましたが…

実は私もマスクはしていなかったのです。でもそれはまだ6時半という早朝で余り人に会わないと思った事と、やはり心拍数を上げるために外出する時はマスクをしていると息苦しくなってしまうから、と自己正当化していました。でもだから、私に叔母様を責める権利はありません。でも基本的に私は、医療専門家が推薦するように外出の際には皆マスクをするべきだと思っているし、トランプ政権のトップが敢えてマスクを着用せずに公共の場に出ることはまずいと思っています。そして、その事もあって、マスクの着用の是非が何だか象徴的に自分の政治見解を表明するような形になっていることも。

アメリカ人がマスクに抵抗を示す文化的背景にはまず、習慣・伝統が無いということが在ります。また白人アメリカ人にとって自分の容姿というのは自分の優勢を示す大事な財産、という見方もできると思います。植民地主義や奴隷制の歴史がある欧米ですから。そして開拓者精神・フロンティアスピリット、というのもあると思います。物質や道具や富や他人に助けを借りず、自分の力で何とかしてみせる!という態度です。

アメリカ海軍は200年もの間、制服を着ている時は傘を所持してはいけない事になっていました。これは去年に規制解除となり、大きなニュースになりました。檀一夫の「リツ子その愛その死」という第二次世界大戦前から戦中戦後までを描いた私小説の一場面で、アメリカ帰りの日本人が「日本は負ける。なぜなら日本人は雨を恐れるからだ。アメリカ人は雨なんか恐れない。傘なんかささない!」と主張する場面があります。アメリカ人は大雑把で細かいことを気にせず猛進する...それがアメリカ人が周りに誇示したいアメリカのイメージだと私は思います。だからトランプやペンス副大統領はマスクを着用しないのでは...?

しかしもう一つ、マスク着用への抵抗にはもっと暗い現実もあります。黒人男性たちが、スカーフなどで作った自家製マスクをすると覆面強盗に間違わられて暴力を振るわれると恐れている、という事実です。

先週の月曜日、ミネアポリスでジョージ・フロイドいう46歳の黒人男性が警察の暴力で死亡しました。手錠をされた状態で無抵抗で「息ができない」と訴えるフロイド氏の首の上に、警察が8分以上膝を乗せていたのです。最後の数分間は、フロイド氏はすでに死亡していたと見られているようです。ミネアポリスの警察署の前では火曜日から抗議者たちがデモをし、木曜日にはニューヨーク、ルイヴィル、メンフィスなどでもこの件に関するデモが暴動化しています。ロサンジェルスでも水曜日に抗議する群衆が高速に入り込み、交通を約30分間遮断しました。

アメリカの多様性は、社会構造や問題を複雑化します。Covid-19の犠牲者が、黒人やラテン系に非常に多いことも問題になっています。そして経済悪化の影響も同じ社会層でより深刻になるであろうことは、想像に難くありません。

私に何ができるのか...試行錯誤を続けます。

今日のヴィデオはこちらです。この収録が行われた2005年、わたしはこの曲にのめり込んでいました。15年後に聞き返してみて、バッハのように重厚にこの曲を弾き進む年若い自分に、胸を打たれる思いです。前に進みたいのにいろいろ後ろに引っ張っていくものがある。重い空気が中々肺に入っていかないのに必死に全速力で走ろうとしているような、そんな苦しさを感じながら前進したい、成長したい、表現したい、ともがいていました。

1 thought on “コロナ日記78:なぜアメリカ人はマスクをしたがらないのか。”

  1. 小川 久男

    お疲れ様です。

    時評もあってアメリカのコロナ禍が分かりました。
    やがて終息しますが、人の一生と同じで予測はできるが
    それはいつ終息するの?と思いつつきょうの精一杯を生きるしか方法がありません。

    小川久男

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