コロナ日記120:「音楽に酔うな」vs。「感情から逃げるな」

  • 7月12日(日)フロリダ州の新感染者数が1万5千300人。州ごとの新感染者数でこれまでの記録を大きく上回る。
    • フロリダ州のディズニーワールドの再開はこの週末に決行された。
    • マイアミの病院は許容の91~92%。
  • 7月13日(月)ニューサムカリフォルニア州知事が規制の再厳重化を発表
    • ワイナリー、劇場、ジム、礼拝所、モール、ヘアサロン、など再開許可が下りていた事業の営業に再規制。
    • ロサンジェルスとサンディエゴの学区域は来学期は全てオンライン。
    • アメリカ50州の中でも規制の厳重さは最先端。
    • 挙げられた理由:
      • 最近7日間の平均新感染者数が毎日8千を超えている。
      • 入院患者、そしてICU患者が毎日増えている。
      • ワクチンや治療薬が出てくるまで、このウィルスは消えない。
  • 先週発表された「オンライン授業のみの生徒から留学ビザ剥奪」に対し、17の州とD.C.、そして大学機関が7月13日(月)にトランプ政権を訴訟。
  • 感染症専門家のファウチ博士はトランプ大統領にもう5週間も会っていない。
    • ニューヨークタイムズがシエナ大学に委嘱して行ったアンケートによるとコロナウィルスに関しては67%の国民がファウチ博士を信頼している。(コロナウィルスに関してトランプ大統領を信頼しているのは26%)
  • 7月13日(月)香港の新感染者数が52人:タクシー運転手、高齢者施設、飲食店スタッフなど。
    • 7月15日をもって、6時以降の店内飲食は禁止。公共交通機関はマスク着用。4人以上の集会は禁止。
  • メキシコがコロナ犠牲者3万5千人:イタリアを抜いて、アメリカ、ブラジル、イギリスに次いで国内コロナ犠牲者数4位

理性と感性は相いれないものなのか…

「まきちゃん、酔っばらっちゃあ、ダメよ」

私の4歳から13歳までの恩師で、13歳でジュリアードプレカレッジの入学試験に合格するまでたたき上げてくれたE.I.先生は子供の私に対しても真剣で、ストイックな音楽家でいらした。妥協を全くしない、このE.I.先生にご指導いただいたことが今の私に繋がっていると思っています。指の訓練などの基礎をしっかり作ってくださり、楽譜や様式に忠実であることに対して厳しく、一曲に何か月もかけて仕上げました。私は本の虫で、小さい時から夢想の世界でいつまでも遊んでいられました。もらった曲にもいつも物語を作り、感情を込めて弾くことが好きでした。その私のイメージには必須な音の強弱やテンポが楽譜に指定されてあるものと違うと「酔っちゃダメ」と言われるのです。私にはそれは「楽しんではいけない」と言われているような気がしました。

音楽というのは自己表現の手段ではないのか?その瞬間瞬間の感情以外の何をもって「自己」なのか?

私の幼い問いかけに、E.I.先生は「個性というのは出すものじゃない。意識的に殺して、殺して、それでも勝手に滲み出てしまうものが個性だ。」と教えてくれました。

「感情から逃げるな」と「酔っぱらうな」の折り合いはどうつければ良いのか。

私はどちらかと言うと頭でっかちの耳年増として、生意気な子供だったと思います。そんな私の周りに今度は「失恋をしろ」「尼寺に行け」「苦労をしろ」という大人が多数現れました。そうすればより良い音楽家になれるというのです。私は13歳で英語も分からず渡米をし、右も左も分からないまま月曜から金曜日までアメリカで英語の高校生活、そして土曜日は朝9時から夜6時までお昼休みもないスケジュールでジュリアードで大学レヴェルのクラス、と今から思えば尼寺なみの苦労はしていたと思うのですが…この人たちに言わせると、音楽家というのは死ぬほどつらい体験をしなくてはいけない、狂うほどの苦しみを味わわなくてはいけない、というのです。そして実際に自殺した作曲家や精神病院に入った音楽家の話を英雄の様にするのです。

28歳のヴァイオリン奏者の後輩が亡くなってしまいました。死因は公表されていませんが、非常に有望視されていた彼が今の状況で自分の将来を悲観したであろうことは、想像に難くありません。そんな時、2か月前に自死した友人に残された4人の息子たちの学費の寄付金を募るためにヴィデオを作成してくれ、と頼まれました。2か月前に自死した友人は退役軍人でした。アメリカでは現在毎日20人の退役軍人が自殺で亡くなっているそうです。芸術家の間でも、退役軍人の間でも、自殺が感染症になってはいないか?

頼まれたので作りましたが、下のヴィデオを作る事にすごくためらいがありました。自死を美化する事にならないかと思ったからです。ファンドレイズのサイトには下に載せたヴィデオの上に、故人の写真を色々沢山被せました。このヴィデオを作るのは辛かった。私と故人の友情、さらに個人の42年の人生をこんな3分の音楽ヴィデオと10枚の写真にまとめてしまって良いのか。

朝練ライブ配信は毎日どんどん楽しくなっています。マニアックなトピックですが、フォロワーも僅かですが定着してきて、毎日申し訳ないくらい楽しくやっています。明日はこちらです。

1 thought on “コロナ日記120:「音楽に酔うな」vs。「感情から逃げるな」”

  1. 小川 久男

    お疲れ様です。

    芸術家の想念は、理性と感性の鬩ぎあい。
    理性が勝れば感性が疲弊し、究極的に自死に至るとは。
    それでも、究極の調和を求めて芸術家は研鑽を積んでいるのですね。
    芸術家とは、きびしい生業ですね。

    小川 久男

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