アルバイトが舞い込んできました。レッド・ツェッペリンの「ステアウェイ・ツー・ヘヴン」のピアノ独奏編曲を録音する、というもの。10年前だったら絶対断ってた。今はちょっと状況が違います。
「音楽療法」というのは長いこと、クラシックが一番効果が在ると思われていました。でも実はそうではない、ということが明らかになっています。一番効果が在る音楽は、聴き手が聴いて育った音楽。聴き手が好きな音楽。私は音楽の治癒効果を本当に謳うのなら、ここまでクラシック馬鹿で良いのか?例えば昨日ICU患者さんに音楽をライブ配信していた時、もし呼吸器を付けられて虫の息の患者さんが「マイケル・ジャクソンが聴きたい...」とかリクエストしたら、「モーツァルトなら弾けます。」と言うのか?
そんな時に舞い込んできたこの話し。(受けて立ってみようじゃないの!)と思いました。このStairway to Heavenという曲は、楽譜を見てみると私ですら聞いた事がある曲!ググってみるとなんと1971年に公開されてから何十年もの間、ロックのトップチャート30番台をキープしている。私は今、流行る音楽の傾向を知りたい。人は音楽の何に共感するのか。
脳神経科学的にいうと、音楽とノイズの違いは脳がパターンを認識できるか否か、だそうです。問題はパターンが単純すぎると(例えばジャックハマーの「ダダダダダダダダ」とか、救急車の「ピーポーピーポー」とか)またノイズに成り下がる。ある程度興味を引き続ける変化と、時々予想を裏切る意外性を持ちつつ、パターン認識も可能にする。このバランスが難しい。
クラシックはこのパターンが非常に複雑です。楽譜を予習・復習することが必要なくらい。チャレンジ精神が旺盛な人は好むでしょうが、音楽を娯楽と考えている人には面倒くさいと思います。ポップスはクラシックに比べるとパターンがずっと単純です。第一長さが違う。クラシックは30分を超す曲はざら。下手をすると1時間以上する曲もあります。ポップスは平均3分くらい。
このStairway to Heavenはポップスにしてみると割と長い。8分くらいあります。そしてギターのソロがすごく長い。さらに歌詞がなんか意味深で、良く分からない。例えば歌詞の主人公の「彼女」が誰なのか、ということに関して何世代もの人が熱情的に議論を繰り広げています。聖母マリアだ!という人も居れば、麻薬中毒の女だとか、物欲主義と資本主義の象徴だ、とかいろんなことを言う人が熱烈に意見主張しています。この曲の何が人をここまで夢中にさせるのか。
この曲です。
練習を始めました。自分はクラシック崇拝の固定観念ガチガチだなあ、と実感します。(なんと単純な和声進行なんだ!)(このメロディー何回繰り返せば気が済むんだ?)(なんだなんだ、声部が全然ごちゃごちゃになっちゃってるよ~。ああ、これは楽理的には間違えだよ~)とか、端から馬鹿にしているのです。
いやいや、違うでしょ。何世代にも渡ってこの曲は何億と言う人に何等かの意味を持っていた曲だ。なんでそうなるかを知るためにはまず固定観念を捨てて、耳を傾けなくては。
『本当に聴く』ということ。会話でも音楽でも、自分の期待とか、関連している自己体験とか、どう反応するか、とかそういう自分の頭の中に注目しながら聴くのではなく、『本当に聴く』というのがいかに難しいことか。
引き受けたからにはこの仕事、真剣勝負じゃ~!!!
今日在った嬉しいこと。
- 今朝、二人の友人と腹を割って話しができました。自分がこの世界にできる貢献は何なのか。どうやったら本領を発揮できるのか。私が今しようとしていることは中々価値を認めてもらえない事。それをどうやって振り向いてもらえるようにするのか。二人とも、本当に涙が出てくるくらい、真剣に私に向き合って一緒に考えてくれました。感謝!
- 野の君と食料買い出しに行きました。野の君とのドライブは楽しいです。今日は遠くの山が本当にくっきりと何層にもなって見える素晴らしい快晴でした。
- 日本食スーパーでマグロ尽くしのお寿司セットと、ハマチのお刺身を買って、豪華なお昼にしました。インスタントですがちょっと高級なシジミのお味噌汁と、なめこの赤だしも一緒にいただきました。絶品!
- お昼食べ過ぎて眠くなって、(食べ過ぎで一日を棒に振ったか...?)と後悔をし始めた時、気を取り直して瞑想とヨーガストレッチをやったら、その後バリバリ仕事が捗りました!やったね~。
お疲れ様です、
演奏家とは、窮屈なものですね。
聴きては、その日、その時の気分なままです。
なので、ジャンルに囚われることはありません。
しかし、流れている曲はとても聞きたいとは思えません。
アンプを使った再生音は好きになれません。
小川久男
率直なご意見をありがとうございます。
勿論、私はこの曲をピアノで弾くのですが。
真希子