やるべき事、と言うのは沢山ある。
片手練習、ゆっくり練習、弾かずに楽譜を勉強する、
ハーモニー・リズム・メロディーと要素を独立させ弾いて視点を新しくする、
声に出して歌ってみる練習、メロディーに台詞・曲に場面や物語を付けてみる練習、
他の人の録音を聴いてみる勉強法、などなど、などなど。
その中で自分が好んでやる練習とそうでないものがある。
一番後回しになってしまう、一番気が進まないのが、
今日私がやることに決めている、自分の録音を聴いてやる反省会である。
録音した自分の声に物凄く違和感を覚える方は多いだろう。
録音した自分の演奏、録画された自分の演奏姿と言うのは、まさにその違和感!
しかも反省点が多すぎて(穴があったら…)状態になる危険性をはらんでいる。
しかし、本当に効果的な勉強法である事も確かで、私は今日はそれをやる!
そういう事を一般公開してしまうのは、プロ意識に欠ける!
…と思われる方もいらっしゃるかも知れない。
でも私は、自分の成長の過程もシェアする事で、
そういう事に興味がおありになることのお役に少しでもたてば、
そしてクラシック音楽への興味を持つ方が一人でも増えれば本望です。
今日聴くのは5月7日にヒューストンでやった独奏会。
21日(千葉は稲毛のジャズSpot「Candy」さん)、22日(三鷹のギャラリー「静」さん)
そして25日にみなとみらいで弾かせていただく演目{『クラシック』って何⁉」。
「キラキラ星」変奏曲
1.テンポにばらつきがある。微妙に走るところがある。これは細かい音をはっきりと弾く事に集中して近視的になって全体像を見失うときにおこるんだと思う。常に歌心を忘れずに。
2.もっと12の変奏曲をまとめる構築をしっかり意識したい。短調の変奏曲をターニングポイントにするのか否か、最終変奏曲を始まった瞬間から「フィナーレ!」と言う雰囲気を持たせるためにはそこまでにどうやって持って来ていれば良いのか、変奏曲から変奏曲へ移行する時のタイミング、テンポの変化(あるいは一貫性)。そう言ったものを意思を意識でもってきちんと音楽的に決断しておく。
シューベルト「楽興の時」2番
1.フレーズの「問いかけ」と「応答」の関係がはっきりしなかったりする。フレーズと次のフレーズへのタイミングや音色の関係を、もっと全体的な方向性をはっきりと意識することで自然と明確にする。変ホ長調がヘ短調に移行する時もっと魔法のように不思議な感覚を。それで次に変ホ長調が嬰ヘ短調に変わる時の劇的さが更に強調されるはず。
2.長~く引っ張る和音の中にもちゃんとしっかりとした脈を持たせる。
シューベルト「楽興の時」3番。
音色の変化で際立たせるべき微妙な音楽的変化を表面的にタイミングでやろうとしている。基本的にこれは淡々と左手でもっと流れてかなければいけない。そして音色で表情を付ける。左手の「♪うんちゃ、うんちゃ♪」を表情豊かに淡々と弾く練習をメトロノームとして見よう。
ベートーヴェン「悲愴」一楽章。
ほぼ全てはタイミングで決まる!例えば「ここは粘るぞ」と決めたところで、最後の一瞬の粘りが足りない(すでに次のフレーズの事を頭で考えているのが原因)。それから勢いで弾いている時でも、どんなに速くても一音一音全てを意識しなくてはダメ(例えばオープニングの一番最後の半音階スケール)。連続音が続くところでは周りでどんなメロディーが歌い上げようが、どんな和声が意外な展開をしようが、連続音は時計の様に正確に刻むことに徹する。それで「非情」な感じが「悲愴」さを盛り立てる。
ベートーヴェン「悲愴」2楽章
誰がなぜ歌っているのか。それぞれのメロディーの性格をはっきりと決め、それに徹する。音域が違うさまざまなメロディーを全て弾き分ける。
ベートーヴェン「悲愴」3楽章。
もっとペダルをストイックに、隠し味のように使い、古典的に弾く。この楽章は控えめに弾いて「悲愴さ」をより盛り上げる。装飾音の最後の一音まで美しく転がす。
ベルグ「ピアノソナタ」
細かい音をもっとサラリとさりげなく弾く事で、全体像をもっとはっきりと出す。一々細かい事一つ一つに重要性を持たせ過ぎない。声部毎の練習とか、和音毎の練習とか、小節毎の練習とか、モティーフを一つ一つ意識して強調しながら弾く練習とか、分析しながら細かい練習でつめていく。