2006年のプログラム

 NYの真希子です。先日カナダから帰ってまいりました。今年もよろしくお願いいたします。  「海外で活躍する若手演奏家を応援する会」の主催による毎年夏の日本でのコンサートも、ありがたいことに今年で6年目を迎えます。人生の半分以上海外の私ですが、やはりこうして故郷で演奏できる喜びはこの6年間修行の大きな励みになってまいりました。今年もこだわりのプログラムを聞いていただけるのを楽しみにしながら、準備しています。  今年のプログラムはロシアの作曲家中心です。 ロシアに最初の正式な音楽学校が設立されたのは、意外に遅く、1862年の事でした。いわゆる「西洋音楽」の影響を嫌い、ロシア民俗音楽を元にした独自の音楽を発展しようとする動きと、正統派西洋音楽として認め、受容される音楽を発展しようという正反対の動きのせめぎあいの中で、ロシア音楽はユニークな成長を遂げます。この成長に多大な影響を及ぼした5人のロシアの作曲家(チャイコフスキー、カバレフスキー、ラフマニノフ、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ)と、ストラヴィンスキーのソナタを触発したベートーヴェンが、今年のプログラムです。   これ等の名前、特に「春の祭典」を書いたストラヴィンスキーの名前から、一般のお客様は前衛的な現代曲をイメージされるかもしれませんが、長く厳しい冬を耐えるロシアの音楽と言うのは、情が厚く、歌心のあふれる音楽で、絶対楽しんでいただけると言う確信を持って、今回のプログラムを組みました。  プログラムを組む作業と言うのは、中々わくわくする物です。料理人がコース料理のメニューを決めるのと似ているのではないか、と思います。一貫したテーマは必要ですが、その中で五感へそれぞれ違った刺激を与え、最期にいい気持ちで、満足して帰っていただけるための作戦、というかスケジュール作成というか。。。今年のプログラムは我ながら中々良く出来ている、と自負しています。  美味しい物は人と分かち合いたい物です。是非、演奏会にいらして、私が見つけてきた珍味をお味見ください。

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コンサートツアーを終えて

 昨夜遅くツアーから帰ってきました。  3月8日にニューメキシコ州に飛んでオーケストラと合流し、そこからトコトコとバスでアリゾナ州、カリフォルニア州、またアリゾナ州、そしてコロラド州と回りました。アメリカは本当に広い!!こう広い所をこういう風に旅行していると、何だかタイムトラベルをしているようです。  カリフォルニアでは太陽がサンサンと輝いて、オレンジが木からこぼれおちる位たわわに実っていて沢山食べました。香り高くて、香りを飲み込んでいる様だった!素晴らしかった。天国みたいな初夏の陽気のカリフォルニアを発って、ニューメキシコでは桜が三分咲き位で、コロラド州はツララの固まりが真っ青でそこら中雪景色です。毎日毎日季節が変わって、こんなの初めてでした。  もう一つ実感したギャップは貧富の差です。通過点でバスの窓から見るだけですが、圧倒的に貧しい町というのもあります。きっとこういう所の写真を見せられたら、誰もそれがアメリカとは思わないでしょう。南アメリカとかアフリカとか中近東と思うと思います。それか又は「大草原の小さな家」位の時代だと思うかな。こんなにテクノロジーが浸透している時代のこの国で、掘っ立て小屋に住んで本当に「大草原の小さな家」みたいに洗濯物が干してある。そうやって色々な土地の色々な人と30分時空を共有して、共感を呼びかける私は、自分が音楽家で本当に嬉しくて幸せです。   聴衆との共有/共感とは別に、共演者との交流と言うのも本当に嬉しいものです。何時間も一緒にバスに揺られて、何回も演奏会の緊張を一緒に経験すると、喋る言葉が違っても、経験してきた歴史も、住む社会の状況も全く違っても、通じ合う所が見えてきます。ツアーの最後の方で、バスーン奏者が、その上に座るとおならの音(それも「ぷー」という様な可愛い音ではなく、音を聞いただけでお腹を押さえてトイレに駆け込みたくなるような「ベリベリブォー」という凄まじい音)がでるおもちゃを買ってきて、それで何回皆で大笑いしたか、数え切れません。コンサートのときやられなくて本当に良かった!  色々なオケのメンバーに「こういうツアーで肉体的にもきつい旅程で練習時間も非常に限られているとき、普通に考えれば演奏の質が落ちてもしょうがないのに、あなたはどんどん上手くなる。すごい。」と褒められました。そういうことは一番最後のコンサートの後に言ってくれれば良いのに、3回目くらいから言われ始めたから、私もがっかりされないように、次はどうすればもっと良く弾けるだろうと一生懸命バスの中で前の晩の録音を聞いて、楽譜を読んで、何だか随分張り切ってツアーを乗り切ってしまいました。最後の日は、一番背の高いヴィオラ奏者にお姫様だっこされて皆で写真を撮りました。   帰って来てさすがにぐったりして、これからまた色々忙しいのにどうやって調子を取り戻そう、と今朝はちょっと心配だったけど、この手紙を書いてたら嬉しくてまた元気になりました。この夏聞いて頂けるのが楽しみです。今 年も色々な人のお蔭で、色々体得しながら充実して過ごしています。

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大雪のニューヨークで

 先週の日曜日12日は、NYで記録的な吹雪でした。見る見る積もる雪が、横殴りの風で吹き荒れて「ホワイト アウト」と言う前が見えなくなる現象が起こり、警報が発せられてみんななるたけ家にいるよう、特に運転は絶対の非常事態以外なるたけしないよう呼びかけられていました。路上駐車された車は雪に埋もれて皆似たような小山になってしまい、あのなかで自分の車を見つけるのは大変だったと思います。  そんなこんなで日曜日にオーケストラと再び合流して弾く予定だったペンシルバニア州の午後のコンサートはキャンセルになってしまいました。NYからレンタカーで(勿論ペーパードライバーの私がしかも演奏当日に高速道路を運転する事は在ってはならないので)、自認アッシー君にドライブしてもらって朝出発、昼頃到着で3時のコンサートを演奏の予定でしたが、考えてみたら、強行軍ですよね。ちゃんとお菓子を買って、ドライブ結構楽しみにしてたんですけど。  強行軍と言えば、この三日間もかなりの強行軍でした。14日(バレンタイン)はジュリアードで8pmからチェロの卒業リサイタルで、ブラームスのソナタ2番を演奏。翌朝15日、8時半に家を出て、バスでえっちらおっちらマサチューセツ州に2時半にたどり着き、そのまま会場直行、練習、6時からオケとサウンドチェック兼ドレスリハーサル、大急ぎでシャワー、着替え、化粧、8時本番。 演奏後の興奮と言うのは、中々なれないもので、私は演奏直後は上手く寝付けるまでだらだらテレビを見てしまうことが多いのですが、今回の場合翌日のこともあったので、マサチューセツ在住でコンサートに来てくれた友人に近くのバーに連れて行ってもらって、ウィスキーを飲んで、バタンキュー。 そして昨日16日、朝10時半に同じ運転手の同じバスに乗り込んで(デジャブー)NYにとんぼ返り。バスターミナルの近くで腹ごしらえをしてから、ジュリアードに直行し(5pm)必死で練習して、夜8時半からこれから在るいくつかのオーディションのプログラムの通し稽古を、先生と先生の友人達の前で披露しました。  頑張れば、出来る物です。

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ニューヨークのクリスマス No.2

 今年初めて、私は実はクリスマスの日は教会に行ってしまいました。今、シンシナティi州に博士号の勉強の為に行っている友達がニューヨークに来ていて、お互い忙しくて彼女が教会に行く時間しか合わなかったので、一緒に行く事になったのです。  マンハッタンのタイムズ・スクエア・チャーチと言う51丁目に在る有名なところで、元はミュージカルなどのショーをやるためだった劇場を内装をそのまま使っているのです。当日はクリスマスのせいもあって多分600人くらい入る会場がほぼ満席でした。  そして感心したのは、来ている人たちがとても多様な事です。老若男女入り混じり、家族連れ、幼児づれ、全く一人で来ている若い人や年寄り、物凄いお洒落な人、ぜんぜんお洒落じゃない人、そして黒人、白人、インド人、韓国人、(日本人は余り見当たらなかった)など。  皆とってもアクティブにお祈りをします。空を仰ぐ人、ロックコンサートの様に賛美歌の間中両手をあげてゆっくり右へ、左へと揺らす人。賛美歌がクライマックスになってくると、舞台(幕つき)に乗ってる聖歌隊の人も参列者もぴょンぴょンはねたりする!そしてみんな神様を自分に取り入れようとしているのか、上を仰ぎ見て頭の辺りで手をひらひらとおいで、おいでのような動作をするのだけれど、彼らの目は今何を見ているのか、と視線を追って見ると、舞台の上の天井画は劇場時代から触れられた形跡も無い、ビクトリア調で書かれた男女数人の裸体が絡み合っているシーン、、、、、とても面白い、、、  涙を流している人、踊りながら賛美歌を歌っている人、「ハレルヤ、ハレルヤ、Thank you, Jesus!」と大声で繰り返す人、などなど。賛美歌が単純なメロディーと歌詞で必ず3回は繰り返すのを「洗脳」と思ったり、お説教の矛盾を頭の中でいちいち静かに指摘したりしていた私も、最後の賛美歌ではもうどうしようも無く嬉しい気持ちになってしまって、周りの人を手当たり次第抱擁したりしていた。やはり相手は上手だ。  でも、大都会、時代の最先端をいくマンハッタンのど真ん中で、人がこんなに自分をさらけ出す事に意欲的になっている場所があったというのは新鮮な驚きで、私はそれをとても好ましく思う。今度は他の教会に行って見よう。

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ニューヨークのクリスマス No.1

 日本でのクリスマスはいかがお過ごしでしたか? NYのクリスマスもなかなかですよ。  昨日はジュリアードでお世話になってる教授夫妻のお宅へお邪魔してきました。  この奥様は私がああいう風になりたいなあと憧れている人で明るくて、情熱的で、エネルギッシュで、いつもスパッと思う事を言ってかっこいいのです。この頃一緒に仕事をさせていただく事が多いのですが、一度マンハッタンのずっと北にある大学の発表会の仕事でドライブして連れて行っていただいた時、お互い凄く食に興味があることが判明して(勿論私はただの食いしん坊で、あちらは筋金入りのグルメ料理人なのですが)今回クリスマス・ディナーにご招待いただくことになったのです。  まず、生ハムで干しイチジクを包んだのや、フォアグラのパテや、ドライトマトのパテ等のアペタイザー 次にフォアグラのドレッシングをあえた、アルーグラのサラダ メインが私の胴体くらいある羊の足をハーブにマリネして丸焼きしたもの、それと醤油とみりんと大量の大蒜のローストビーフ。 そのサイドディッシュには非常に美味しいローストアスパラガスと、パルミジャンチーズをかけて焼いた芽キャベツ!  どれも全て奥様のお手製なのです! そして出てくるワインは全てご主人である教授の講義つきスパニッシュワインの数数で、普段余りアルコールは頂けない私も沢山飲んでしまいました。どれだけ美味しかったか分かるでしょう。  そのパーティーでも音楽に極める人は舌も肥えていることが多い、という事が話題になりましたが、あれは本当に凄かった。そして非常に幸せだった。  日本でも大分ニュースになったようですが、マンハッタンの地下鉄とバスのストの間、私はほとんどニュージャージーにある高校時代のホームステー先に身を寄せて練習しながらやり過ごしましたが、二度ほどどうしても顔を出さなければいけない用事でニューヨークに参りました。  ペン・ステーションからジュリアード(66丁目)まで歩く訳ですが、まあ歩行者が普段より多いとは言え、パッと見には割りと普通な光景なのですが、話しかけてくる通行人が多い!皆非日常的ハプニングを楽しんで、うきうきと連帯感を感じているらしいのです。  私はピザ宅配のお兄さんと57丁目から64丁目まで、ストライキの権利の是非について語り合いました。あっぱれ、ニューヨーカー!  それにしても、中国から来た同業者の友達が何気なく「中国だったらストの責任者は死刑だよ。。。」と言ったのに、ショックを受けました。  何にせよ、クリスマスまでに無事終了してくれて、よかったです。  皆様、お体にお気をつけて日本の御年越し、そしてお正月を私の分まで満喫してください。 2006年もよろしくお願いいたします。

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